25.異世界のパーティー
ノルムさんはジッと私を見つめると、首を傾げて言った。
「チサは、そのドレスが全く似合わないな?」
・・・。はい、私もそう思います。
これ、貴方が贈ってくれたドレス、なんですけれどね?
そう、これから王子様とシャルロッテさんの婚約パーティーに行くのに、私はドレスアップしたのだが・・・どのドレスも壊滅的に似合わず、クレアでさえ『ああ・・・。』という顔になっていた。
その中でも割とましなものを選んだつもりだが・・・やっぱりダメか。・・・私はもう、諦めてヘラリと笑った。
当たり前だ。
私は薄くて貧相な体つきだし、顔も地味で、イエローベースの肌をしている。その私に、デコルテががっつり開いて大ぶりの飾りが付いたデザインの、ビビッドカラーのドレスが似合う訳が無い。
「シャルロッテが着てて良かったものを真似て頼んだのだが、チサは何が違うのだろうな?」
真剣に聞かれても、グラマラスな金髪美女に似合うドレスが何故、私にも似合うと思ったのか、こっちが聞きたいくらいです・・・。
「あの。似合わないけど・・・これでも他のドレスよりマシなんです。」
「・・・そうか。」
ちなみにノルムさんはバッチリ決まってて、かなり格好良い。まるで2.5次元とかいう舞台の俳優さんみたい。あまり詳しくないけど、あるよねイケメンばっかり出てくるミュージカル・・・あんな感じ。
・・・中身はノルムさんだけど。
少し外していたクレアが急いで戻ってくると、柔らかな色味のストールを持っている。
「チサ様、これを・・・。」
クレアが持ってきてくれたストールを羽織ると、開いた胸元も肩にかけて付いているデカデカとした花飾りも、肌が汚く見えるビビッドピンクの色味も上手に中和し、なんだか上手く馴染んで見せてくれた。
「クレア・・・ありがとう・・・。・・・すごく素敵なストール。これなら、このドレスも、なんとかマシに見えそうです。」
「・・・安物なのですが・・・チサ様にお似合いになるかと思って、私が買っておいたものなのです・・・。しおりのお礼にと・・・。差し上げます。」
・・・!!!
「あ、ありがとう!クレア。・・・た、大切にします!」
私は、私に似合うかなって考えながら、ストールを選んでくれたクレアの気持ちがすごく嬉しかった。
笑顔でそう言うと、クレアも微笑む。
「パーティー、楽しんで来て下さい。」
「はい!」
微妙な顔つきのノルムさんと共に、私はパーティー会場へと向かった。
◇◇◇
会場の入り口にはサイモンさんが待ち受けていた。
私は、ノルムさんの婚約も、サイモンさんとの婚約も無くなったが、シャルロッテさんが、その話を面白がってサイモンさんを招待したのだ。
「チサちゃん!・・・ノルム先輩!」
サイモンさんが、親しみやすい笑顔で声をかけてくれる。
「サイモンさん!」
思わず駆け寄る。・・・パーティーの為に、キッチリした正装姿のサイモンさんは、とても素敵に見えてドキドキしてしまう。・・・だって・・・彼氏、ですし。
「チサちゃん、そのストール素敵だね。チサちゃんにとっても似合ってるよ。」
「ありがとうございます!・・・クレアがプレゼントしてくれました。」
サイモンさんが手を差し伸べる。
エスコートしてくれるんだ。・・・嬉しくてその手を取ろうとすると、冷たい手が私の手を引き戻す。
「チサ。お前をエスコートするのは私だ。サイモンはただの知り合いだ。」
「・・・僕とチサちゃんは恋人です。」
「だから、私もチサの恋人になる事に決めたと言ったよな?」
・・・。
恋人って、なると決めてなれるものなのだろうか???
お互いに好意があって、同意の元になるものではないかな?
「・・・ノルムさん、私・・・サイモンさんとお付き合いしてるんで・・・その・・・。」
「チサ。気にするな。私はサイモンなど眼中に無いからな。・・・では会場に行こう。」
ノルムさんは私を半ば引き摺るようにして、会場へ入って行った。
◇◇◇
「チサ!来てくれたのね!?・・・こちらがサイモン様?・・・はじめまして、シャルロッテ・エルミートよ。・・・って、私の婚約パーティーですもの、私の名前くらいご存知よね?・・・お会いできて光栄だわ。」
「はじめまして、シャルロッテ様。お招きいただきありがとうございます。・・・サイモン・アダマールです。ご婚約おめでとうございます。」
シャルロッテさんを見かけてご挨拶すると、シャルロッテさんにサイモンさんを紹介しろとしつこく言われたのだ。
「へえ・・・サイモン様って、もっと美青年なのかと思ったけど、そうでも無いのね?・・・ノルムの方がハンサムだわ。」
・・・。なんて失礼な。
シャルロッテさんは幼馴染のノルムさん推しだと宣言してたけど、あんまりじゃないだろうか。・・・だけど、そんなシャルロッテさんの失礼な発言にも、サイモンさんは笑いながら「僕、あんまり容姿に自信ありませんから。・・・ノルム先輩は格好良いですからね。」とにこやかに返す。
そういうところ・・・ほんと、素敵だよね・・・サイモンさんって・・・。
「サイモン、卑下する事はない。お前の顔は見られない程酷くもない。平凡極まりないソバカス顔、それだけだ。」
黙って聞いていノルムさんが、フォロー???した。
う、うーん・・・???
てかね、サイモンさんはカッコイイと思う!・・・柔らかな茶色の髪も目も・・・すごく優しげだし、ソバカスだって似合ってる・・・いや、そこが良いのに!!!
ちょっとカチンときた私は、話を逸らすようにシャルロッテさんに聞いた。
「あ!えっと、シャルロッテさん、ウィリアム殿下とダイキさんは?・・・せっかくだから、ご挨拶したいのですけど。」
「それが・・・なんだかね、先程、急な知らせが来て、2人は下がってるのよ。・・・そういえば・・・遅いわね?」
シャルロッテさんは顔を顰めた。
「・・・何かあったのでしょうか?」
サイモンさんが心配そうにそう言うと、シャルロッテさんは首を傾げる。
「そうですわね・・・こう遅いと、少し嫌な予感がしますわ。」
シャルロッテさんは、2人が下がったと言うドアを見つめた。
・・・程なくして、その予感は的中する事になる。




