第五話 始まり?
横にズラッと、正面幾らか離れたところに大きな神が座っていた。
「お前は神が見えるか?」
唐突に正面の神の一柱が俺に言った。
「はい」
と答えた。質問の意味がわからなかったし、事実見えているのだからそう答えるべきだろう。
すると、周りの神々はざわつき始めた。驚いてる様子だ。そんな様子を気にすることなく、一際大きな神が俺に言葉を発した。
「貴様の言葉に嘘はなく、その簡潔な答え。公立を心得ているのだろう。よって条件を一つ合格したと告げさせてもらおう。」
と、白い髭を揺らしながら…。
正直何故こんなに神の大きさが違うのかとか、その髭がそこまで揺れるのかとか気になることはあった。
けれど、話も進まないのであえて言葉には出さなかった。
「レイル。この者の名は火ノ神大希であるな?よし。
では早速私に付いてくるが良い、火ノ神。」
「すみません、あなたの名前を教えてもらえないでしょうか?」
まだ名前も知らない。男神だっていうのはわかるけど。
「…ふむ。私の名はヘクト。まあ、ここにいる神々の中では上位のほうだ。最初貴様に問いを投げた者はオルミノという神だ。」
再び無言になってしまった。やっぱり俺達が今移動してるところは光ってい、て……いや、なんだこれは。最初見た景色と同じ、ぐるぐるとした闇のようだ。いったいどこへ行くのか本当にわからない。
「着いたぞ。」
と、不意にヘクトが言った。
「ここは、『罪』、『愛』、『力』を示す場である。いわゆる試練のようなものだ。見事達成すれば貴様は神となる。なれなければ堕ちる。」
―――は?
どういうことだ?
「ちょ!?どういうことですか!?」
「そのままの意味だ。…あぁ、『堕ちる』とは、まあ霊のようなものだ。一言では説明しきれない。」
「ところでレイルはどこですか?さっきまで一緒にいたはずですが。」と、すかさず俺は質問する。
「レイルは領地に帰らせた。今回の役目は終えたからな。」
人間とは違って時間勤務じゃないのか…
羨ましい!!いや、バイトすらしたことないんだけどね?
「この扉を開けて、その中を進むだけなんでしょうか?」
この手のものは意外性から入るので、説明とかはないはず。ならば「進む」という表現であっているはずだ。
「理解が早いのは好きだ!ならば行け!貴様ならやってのけるだろう!」
…俺は頷きつつ扉を開けた。
そのとき、妙に扉に物理的な冷たさがあることに俺は気づいてしまった。