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パラドクスは終わらない  作者: 霧蒼はると(ヤマハ)
序章 予知
3/8

第二話 気まぐれ

 俺は本が好きだ。特に異世界系の本やファンタジー系の本が好きだ。

 本当に実在しそうで、ずっと確かめたかった。神が死んだ人を異世界に導く話とかは特に好きだ。

 そして一柱とて同じ神がいないということに気づいたんだ。そして、神の神秘性、慈愛に惹かれた。だが、もっとも惹かれたのは、神の気まぐれな部分だ。

 神は好きに生活している。俺は人との関係が壊れることを恐れて、自由に生きることができないでいる。


 ―――人として自由に生きられないのなら、いっそ違うものになって生きたい、神になりたいと、そう思った―――


 そうだ、神になりたいのだ。

 きっかけはさっき言った、夢のことと今言った、本だ。

 ライトノベルって言うんだけど、あれは青少年に夢を与えてくれているんだなって改めて実感する。

  実際異世界召喚なんてあるわけないとかほざいてる馬鹿もいたが否定しきれるものではないよな。


 なんてことを考えていたら、突然頭部にものすごい重力を感じた。

 これは深く考えすぎてとうとう俺も壊れたか!?って、考えてる場合じゃないな…





 ――何時間、何日経ったのだろうか――

 俺は目が覚めた。どうやら気を失っていたようだ。なんてのはよく聞くセリフだな…。軽いジョークも回るのなら、脳に損傷はないのだろう。

 だが、自分の体が存在している場所に全く見覚えがない。

 その場所は何もなかった。

 見えず、聞こえず、物言わぬ部屋とはまさにこのこと。


 漆黒というにはあまりにもグロい闇。じっと見ていると気が変になりそうだ。

 正直これが夢なら醒めたい。


 しかし、自分は唯一そこに存在していて、自分に触れることができるとわかってしまった。つまり夢じゃないんですね…。


 とりあえず、確かめたくなった。この部屋について調べなくては。

 まずは空気の振動が起こるかどうか。



「俺は……火之神大希…」

 よし言えた。




「でも走れないのかー!!」

 誰もいないからこそ恥ずかしげもなく大声で声を出してみた。ちょっと調子に乗ってしまった。


 けど結局誰もいなかった。


 段々と目が慣れてきた。夜の闇に目が慣れるのとは違う。光が全くないのだから。人間的能力として目が進化したと言うべきだろう。少し不自然だけどな。


 空間は歪んだ円がたくさん並んだ感じだな。暗くて、絵の具をたくさん混ぜているようだ。そしてぐねぐねとぐるぐると回っている。

 よく見れば、そこには隙間があった。この空間よりもさらに深い闇を彩った隙間だ。つまりここは部屋だ。この隙間に触れれば二度と元の世界には戻れないような気がする。


 ―――別にいいか。未練もない。死んでもいい。―――



 そして俺は、そこに手を差し入れた。

 温かくもなく、冷たくもなく、ぬるりとした感触だ。

 物理法則はどうなっているのか。

 ―――俺の体を縮めたり伸ばしたりしながら渦を巻くように、隙間は俺を吸い込んだ―――







 気がついたら本物の闇の空間にいた。先程のような円もなく、本当に何も見えずにいた。

 しかし、そんな闇にはすぐに光が差し込んできた。



「迎えに来たよ」

 不意に声がした。

 気づけばそこに人がいた。いや、人というにはあまりにも眩しい。まるでそれ自体が輝いているように。


 眩しすぎて髪の色も表情もわからない。服装も輪郭がわからない。本当に眩しい。


 そして俺は震えている。何故だろうか。



「た、ただいま?」

 一応言ってみた。

 するとそいつは自分にまとわりついていた光を散らして、空間を一気に照らした。一瞬だった。

 一面に広がる闇の空間だとわかった。


 そして対象はにこやかに俺に微笑んでいた。



「おかえり」

 と言った。ああ、最初に言った言葉は幻聴ではなかったのか。あまりに神々しいので忘れていたよ。

 そして、顔立ちからしておそらく女性だということが判明した。




 ――――そして対象は、いや彼女は俺に話しかけてきた――――
















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