ギルドへ
4/22 書き直し。
ガツン、と、長剣の一撃をアリスで受けるとその凄まじい衝撃で弾き飛ばされてしまう。私の軽い体重では簡単に吹き飛ばされてしまうが、そのお陰で距離は取れた。なんとか転ばずに体勢を立て直す。広場中央で戦っていたので広くて助かった。火球を何発か放ち、目隠しを掛けながら移動する。しかし距離があるのであまり効果が……出る。
こちらに気を取られたエンペラーにフィオが跳び蹴りを入れた。
私も一気に距離を詰めるが頭を振りつつも長剣を振り回し隙を作らない。火球を放ち目隠しを掛けて踏み込む。分かっていても乱戦ではそうそう躱す事はできない。
デカいので簡単に懐に潜り込める。一息に斬り上げた。深々と敵の肉体をアリスの白刃が斬り裂き、真っ赤な鮮血が飛び散る。
その血を浴びないように後ろに跳び下がり、残心。倒れたゴブリンエンペラー、フィオが頭を踏み潰した。
「おっしゃあ! もう居ないな、アリス!!」
「んー、おっけ、サーチで見える範囲には居ないよ」
「どれくらい見えるの?」
「一キロくらいかなぁ。じっくり集中すれば地平線までいける」
凄かった。とりあえず終わりらしい。手が麻痺してるのか痛みを感じずに痺れているし、いつ斬ったのか分からないけど血が身体中あちこちから出ている。髪もボサボサだ。元からか。
「治癒魔法掛けるね~」
「我は魔石を集めておこう」
「痛い」
「あれ、骨をやってるね」
麻痺が回復して逆に痛みが分かるようになった。腕は骨まで折れていたらしい。でもそれもアリスが治してくれた。やはり真正面から大きな魔物の攻撃を受けるのは不味いようだ。当たり前か。剣は砕けなくても私の骨は砕ける。身体強化魔法を鍛えないとね。魔力の循環量を増やして繊細に体の構造を意識しながら循環させると威力が上がるらしい。
「でもリンネはびっくりするくらい成長したわ」
「がんばった」
「やっぱり魔力が高いからセンスが良いのね」
魔力が高いと反射も速くなる。フィオに乗っていればどんどん魔力が高まるのでそこも強くなっていた。なので相手の動きが遅く見えるし、自分の無駄な動きにも気付ける。
何度か戦った程度でも強くなれるのはそういう理由だ。
暫くすると魔石を拾い終わったフィオが帰ってきた。何て言うか、雑用ばかりさせている気がする。邪竜なのに。
「これだけ有れば大儲けだな!」
「物価とか変わってなければね」
「ああー、二百年の時が憎い!」
「大丈夫、魔石は高い」
魔石が高いことを教えるとフィオは子供のようにパアッと笑顔になった。見た目は子供だ。
「見た目は子供、中身は大人、その名は邪竜フィオ!」
「何それ」
「良いから帰って美味いもの食うぞー!」
「食う食う」
「二百年経ってもネタが通じない!」
アリスのネタは分かりにくい。でも魔石を売れるような町まではまだ少し遠いはず。
「そうだった……」
あ、フィオ一気に落ち込んだ。
とりあえず今日は村の宿に泊まって、明日は良い物をたくさん食べよう。
落ち込むフィオを連れて村へと帰ると、フィオが助けた人たちの家族や仲間に感謝された。ゴブリンの集落は一応壊滅させたが残党がいる可能性はあると伝えておく。村長も感謝してくれて、少ないが、と言いつつまあまあの額の謝礼を貰えた。
それでフィオの機嫌が戻ったので皆でごちそうを食べた。今日は鱒と根菜の具沢山シチューだった。甘くて美味しいので鍋が空になるまで食べたらアリスに怒られたけど、宿の人はゴブリン退治してくれたから良いよ、と、笑ってくれた。
翌朝、ギルドを目指してまた歩く。そろそろ大きな町も近いし、流石にこの辺りで走る竜とか現れたら皆困るだろう。フィオの歩く速度が遅くて何回か止まりながらも、大きめの町に着いた。
やっぱり歩幅が違うから歩くと遅いのは仕方がない。走ると速いのだけど。時々走ってたが流石はドラゴンなのか疲れは見せなかった。
さて、ギルドへ行こう。
「ここで子供ばかりがギルドに何の用だ! って絡まれるパターン!」
「そんなお話有った」
「意外とラノベとか有るんだね……」
「我は今日は肉が食いたいぞ」
「うわ、スルー……」
何故かアリスが落ち込んだ。置いていくよと声を掛けてギルドへ。木造の三階建ての建物だ。大きいな。赤月村にはこんな家は無かった。
そう言えば村が潰れた事は報告しないと駄目なんだろうか? ギルドで聞いてみよう。
扉を開けて中に入ると体格の大きなゴツい虎の獣人や綺麗なエルフが一斉にこちらを見る。しかしすぐに興味を無くしたように顔を逸らして話し始めた。
「ゴブリンの集落が出来ていたって?」
「エンペラーまで出たらしい。潰したのは若い女の冒険者……」
そこまで言ってその人たちは私たちを見る。私たちは気にせずカウンターに向かった。受付は綺麗な眼鏡のお姉さんだ。
「冒険者登録、したい」
「はい。三人ともですか?」
フィオを見て困った顔をしている受付のお姉さん。年齢制限が有るようだ。実年齢は分からないよね。二万才くらいらしい。凄い。
「我は入る必要なさそうだな」
「そうする? どうせ依頼は一緒にやるし何があってもフィオなら問題ないし」
「分かった。アリスは?」
「私も良いや。リンネだけ入ったら素材とか売れるしね」
「ん、じゃあ私だけ入る。あと、これ」
「はいはい……ええと、この大量の魔石は……」
「幾つか報告がある」
私たちの村がグラニスグランドの機竜隊に潰されたこと、ゴブリンの村を潰したこと、残党が居るかも知れないことを話した。一応機竜隊を潰したことは内緒にしておく。
ゴブリン討伐は証拠の魔石も揃っていたので疑われなかったが、上から順にSからFまで有るというギルドランクでいきなり上から四つ目のCになった。
この魔石も功績になったらしい。功績を上げれば試験無しでギルドランクは上がるそうだ。その方が強い人に良い仕事を紹介できるかららしい。助かる。
後ろで見ていた冒険者さんたちはポカンとしていたが、ハッとしてから拍手して口々に褒めてくれた。照れる。
アリスが「まさかのテンプレ無視~ッ!」とか騒いでいた。時々ウザい。
とりあえず一章二十話は毎日更新しますね。
新作を何本か思い付いていて浮気したくなるんですけどね。
リンネは元々実戦経験は豊富です。剣での戦いは素人ですが慣れてきました。