旅
4/22 書き直し。
さて、村の皆にお別れを言って旅を始めることになった。世界を見て回れるのは嬉しいことだ。
私が真の火の女神候補とかはあんまりにも突飛すぎて意味が良く分からない。いきなり神になれるわけでもないらしいし。試練とか有るんだろうか?
面倒臭いな。
助かった村人たちはこの村を捨てるために準備してから王都に向かうらしい。赤月丘の謎ももう解けたしね。
私も旅の準備に魔物を狩り、燻製を作ったりした。アリスが料理上手で助かった。まあこの量では足りないと思うから途中で買うか狩らなければならないだろうけれど。
大食いなのは旅だと不利だよねえ。
ただ、アリスは亜空間収納と言うスキルを持っていたので荷物は幾らでも持てた。
「じゃあ竜形態になるわね」
「よろしく」
「さて、行くかの?」
国境までは竜で走り、そこからはアリスは剣になって私が振るうことになった。アリスの物資を漁り白い革製のドレスアーマーを着て、今の私のスタイルは魔法剣士だ。髪もボサボサなので剣士っぽいかも。
「半分眠ってるみたいな目で強そうじゃないな」
「足も長いしスタイルも悪くないけど可愛い感じだね」
ちなみにアリスには敬語をやめさせた。主従と言うのがあまり好きに思えなかったからだ。村の皆も奴隷にされるところだったわけだし、そういうのは嫌いだ。フィオは最初から敬語じゃない。
「女王国は奴隷は居なかったけど、今はどうかしらね」
「レズ女神が居れば変わってないだろう」
「分かんないわよ。女の子奴隷が欲しいとか言い出して法律変えてるかも」
「うわあ……」
「うぷ、気分悪くなってきた」
「エチケット袋おおぉ!!」
中で吐いたら臭そうなので停めてもらった。早く慣れないとね。
途中で緑色の肌をした子供くらいの身長の鷲鼻尖り耳の魔物、ゴブリンが群れていたのでフィオに魔法を使って全部焼かせた。私の魔力が回復し、更に高まっている事で魔法の制約が三割くらいまで解除された。後はフィオとのリンク率を高めるか私が更に強くなるしかない。
「まあ学園に入って鍛えたら良いでしょう」
「冒険者学園か騎士学園か? 機竜コースは有るのか?」
「さあ? 二百年ぶりだから有るのかもね」
「楽しそう」
そこでも新しい何かに出会えるのだろうか。色んな所を見て回りたいし、美味しい物もたくさん食べられたら良いな。
「リンネが店に入ったら潰れそうだな」
「う、量を減らす」
「その分魔物の肉とか大量に狩って熟成して食べればいいじゃない」
それは良いかも。野菜の魔物も狩って食べたいな。ピーマンの魔物が甘くてしゃくしゃくした歯触りでとても美味しいんだよね。トマトとか大根も狩らないと。魔境では魔物には困らなかったし私もかなり戦った。
「ん、村が近いわよ」
「分かった。降りよう」
「あー、我だけ走って疲れたわ」
「文句言わない。ロリのまま歩いたら時間掛かるじゃないの」
「ハイハイ」
「赤ちゃん?」
「そこまで小さくないわっ!」
フィオをからかいつつアリス聖剣モードを背中に吊るす。鞘も出せるらしい。抜く時は鞘が消せるので楽だ。ちなみにアリスは両刃の長剣だ。
「おっと、ゴブリン」
「うじゃうじゃいるな。まあ昔からだが」
ロリモードのフィオも言うほど弱くはない。やはり元々のポテンシャルが違うのだろう。黒髪ツインテールを翻し、ゴブリンの頭を殴って砕く。凄い。
私も真っ白なドレスアーマーを翻し白銀色の長剣、聖剣を振り、火球も放ちどんどんゴブリンを捌いていく。慣れた相手だ。
「中々に良い戦いぶりだな」
「センスが良いわね」
「照れる」
私は魔境で魔物と戦っていたので戦闘経験はかなりあるが、聖剣の切れ味が凄まじいのもあると思う。ゴブリンの骨くらいは下手な振り方をしてもバッサリ斬れる。
アリスによると刃筋を立てることを意識し、引き斬るとか、倒したと思っても残心して敵が起き上がらない事を見届けないと倒したと思った相手が起き上がり奇襲されたりするらしい。経験はある。魔力により気配感知しつつ戦う。
「終わり」
「お疲れ様だ」
「さて、村に入りますか」
ゴブリンを軽く平らげて村へと入る。赤月丘よりはしっかりとした木造の建物が多いが小さい村なので宿を取ったらご飯を食べて寝るだけだ。
ここは近くの池で獲れる淡水魚料理が美味しいらしい。
皆で鯰の唐揚げをつついた。ニンニクと胡椒が効いていて美味しかった。
ひたすら食べていると近くの人の話し声が聞こえてきた。
「近頃ゴブリンが多くないか?」
「拐われた娘もいるらしいし全滅した冒険者パーティーも有るらしい」
「そこまでか。ヤバくないか?」
「早めにこの村は抜けるべきだろうな」
商人風の人たちの話し声だ。あれだけ狩ったのにまだまだ居そうだ。ボスクラスのゴブリンを見ていないのでちょっと狩ってきた方が良いだろうか?
ゴブリンは倒すと魔石の欠片が胸の上辺りに現れる。これは魔物全般に共通する事で、体内を巡っていた魔力が湧出して魔石として固まるのだそうだ。
強い魔物ほど大きく、何かの機械を使うとどの魔物の魔石か分かるらしい。魔力紋と言うのが人にも魔物にも有るそうで、冒険者登録などはその魔力紋を使うらしい。
「ゴブリンを狩っておく?」
「そうだな。増えると厄介だし」
「女騎士やエルフがくっ殺せ、とか言ってたら可哀想だしね」
「くっころ? ってなに?」
「リンネは知らなくて良いんだよ~」
「くっ、殺せ」
「フィオはいつでも殺すけど?」
「勘弁しろ!」
子供扱いされた。まあ子供だけど。
女性が被害に遭ってるらしいので私たちもだが、村から移動してくる子達も危ない。倒しておいた方が良いということだろう。
「汚物は消毒だ~」
「ん、焼き尽くす」
「竜形態で行っても良いかもな」
「出来るだけ剣の腕を磨きたい」
「決まりだね」
こうして私たちは人間のままでゴブリン狩りをする事になった。
何故かアリスがくっ、殺せ、とか言いながら謎の演技の練習をしていた。意味は分からないが殺させはしない。……勇者だし剣になってもらうから一人だけなら生き残れそうだけどね。
「無駄な練習をしてしまった……」
「我もした方が良いのか?」
「駄目よ、絵面がヤバすぎる!」
やはり意味は分からない。
次は人間とゴブリンの戦いです。機竜は強すぎるので人間の戦うシーンは多いです。