お説教と優しさ
役目を果たした刀からは淡く青い輝きは消えていた。
私は一息つくと刀から血を拭き取り言った。
葵「ごめんね。血を吸わせてしまって。けど、陣も呪符も無い状態であれの相手は無理だったから。私に視えたという事は相当だよ。私は凶悪な奴しか視る事が出来ないから。」
そう、あれは凶悪な奴だった。まだ完全に力を蓄える前であったから祓えた。一撃で祓えたのも、正直運がよかったのだろう。もしくは、あの人達やあの子達が手をこっそり貸してくれたのか……。
つらつらと考えていると、傷が相当によろしくないと思ったのか陸奥守さんとこんのすけが焦って話しかけてきた。
陸「そがな事よか主!!傷はどうなっちゅう!?!?はよ見せてみい!」
こ「そうですよ。そんなことよりも傷の手当てをしなくては!!」
葵「大丈夫。もう血は止まってる。怪我の治りは早い方だから」
陸「ええい、そがいな事はええんじゃ。女子が傷ついとうのがいかんのじゃ!」
そう言って彼は自分が巻いているさらしを刀で切ると包帯代わりに私に巻く。江戸時代、坂本龍馬が手当を受けているところを見ていたのだろうか。手慣れていて綺麗に私が自分で斬りつけた所にさらしを巻いてくれた。
葵「……ありがとう」
普段は、よほどうっかりとしていて深く斬ってしまった時以外は包帯やさらしなどは巻かない。ティッシュやガーゼなどで血が止まるまでしっかりと押さえるくらいだ。しかも、巻くときは自分で全てをやっていた為、他人に巻いて貰うのは何だかとてもくすぐったかった。
陸「主は自分を大切にせい。わしと約束じゃ」
葵「えー。付喪神といえど神と約束はしたくないからやだ✩」
そう。神との約束は絶対の契約。たとえ口約束だったとしても破ればどうなるかはその契約相手の神次第なのだ。当然、私は陸奥守さんと約束をしない。術者として基本中の基本である。
陸「むう。主はその辺詳しい奴じゃったのう。なら、努力はしてくれよ?」
葵「分かった。努力はする。絶対とは言えないけど」
こ「では一段落もつき、葵様の手当も済んだ事ですし、気を取り直して本丸に参りましょう!!」
こうして、私はようやく自分が担当する本丸に行く事が出来た。
葵(しかし、おかしいな。幾ら人通りが比較的少なく、かつ霊的素養のある人が中々通らないといえどああなるまで誰も気が付かないなんて……。少し、警戒を強めておくか。その内、報告があの子達から来るだろうし)
そっと、心の中で警戒をしながら。