葵の力
私達は、こんのすけに案内されるまま政府の地下ゲートに降りていった。なんでも、そこは新人審神者専用ゲートらしく、一方通行なのだそうだ。しかしそこは新人審神者達の気分と同じくあかるいはずだった。なのになぜか薄暗く、不気味でいかにもといった感じであった。
葵「ねえ、こんのすけ。ここはいつもこんな感じなの?」
こ「と言われますと?」
葵「ここはいつも薄暗く、不気味でいかにもといった感じなの?」
こ「そう言われれば前はもっと明るかったような……?」
葵「やっぱりね。ねえ。付喪神である陸奥守さんはわかった?」
陸「んー。わしは霊刀や神刀と言われとうもんとちがうけんのう。分からん。主はなんぞ感じたんか?」
私は凶悪な奴であれば感じ取り視る事が出来る。そして私のその感覚はそれを悪しき者だと認識していた。ここでこのまま放置してはいけないと。それは人も刀剣男士も喰らいどんどんと成長する。
ここには顕現したての刀剣男士という極上の餌も行き交っている。急がなくてはいけなかった。
葵「ねえ、陸奥守さん。ちょーっとやばい奴いるから刀貸してくれない?」
陸「お、おう。そりゃまあええがの。刀でどないするんじゃ?」
葵「こうするの」
そう言って私はおもむろに自分の腕を浅く切りつける。陣も陣などを書くための墨なども呪符も用意している暇もないからだ。血はこの場ですぐに用意できる霊力をたっぷりと含んだ媒体だ。幾ら霊力が強くとも媒体なしでは霊力を纏わせにくい。そうして刀身に血を纏わせる。そうする事により、一時的に私の力が宿り霊刀とかす。
陸「あ、あ、主いいいぃぃぃぃぃい!?!?!?いきなり腕切りつけよって何しちゅうがか!?!?そげなことしちゅうなら刀を返せ!!」
こ「葵様!?!?血が、血が!!血がたくさん出てますよ!?!?」
葵「浅くしか切ってないし大丈夫。ちょっと黙ってみてて。必要な事だから」
私はそう陸奥守さんに告げ、刀を取り上げようと近寄ってくるのを阻止する。十分に血を纏わせられ一時的に霊刀と化した証に淡く青く輝き出す刀。
その状態で私は居合の構えを取り呪を唱える。
葵「『禍者よ、禍者よ。いざ立ち帰れ元の住処へ!その手は光を掴み安寧を得ん!!』」
唱え終わったところで、一気に斬る。視えているその黒く禍々しいモノは常人も聞える断末魔をあげ消えて行った。
陸「なんじゃあ、この不気味な声は!?」
こ「葵様が刀を振られたからでしょうか?」