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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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亡霊

懐かしい記憶を思い出してしまったものだ。

時々こうして、ふっといつの日かの過去の記憶を呼び覚ます。今となっては現実離れした、その暖かい風呂敷に包んだような”なにか”は、自分が過去に未練を残しているように感じさせて、とても煩わしい。それはまだ、平和な日々が続いているころだったということを、鮮明に思い出せるものであり、戦争が始まり、国の犬となった者に対しては必要ないものである。朝ごはんにご飯かパンかという論争など、常時賞味期限が切れた冷め切ったしまった乾パンとなってしまった今では、無駄な雑念でもなにものでもない。

軍隊に入隊して以来、嫌な記憶はすぐ忘れられるという昔から備わっていたその能力は、大変有効的であった。当然この戦争が突発的に始まって以来、その能力をもつ私は戦場というものは、もっとも適していた”仕事場”であることは間違いなかったであろうが、時々こうした生暖かい”なにか”は、私の行動を少し鈍らせ、ある意味、”嫌な記憶”として化けるのである。それは亡霊のなにかと同じなのではと考えることもある。


そんな後悔にも似た感情抱きながら、再び遠くの方で鳴るけたたましいサイレンの音が鳴り響くのを聞く。飯を食べる時に、箸などいつ以来持っていないであろうか。

あぁ、こんな気持ちになるから嫌なのだ。

ゆっくりとその重い腰を上げ、その”亡霊”とともにいつもの戦場へと赴くのである。手に持つものはもちろん箸ではない。


初めての短編です。

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