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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

THE・WORLDフィクションSHOW!!!

作者: 痩せ散らかす

……

……

……


「さぁ、始まりました。今宵も世間、世界に文句のある男女が多数集まって頂いてます。今回もどの様なスペクタクルを見せてくれるのか!期待が止みません」


……


ここは、どこだ?


「お茶の間の皆様も、彼らの(・・・)意見にどうぞシンキンキングタイム」


何を言っている。

何が起こっている。


こいつは誰だ。俺の周囲にいる奴らは何だ?


「ここで、進行をご説明しましょう。勝者は単純明快。一番文句を、心の底からの文句を言ったものが勝者となります」


文句だと?

俺は世間に文句なんてあったか?

駄目だ、思い出せない。


そもそも俺は、誰だ?


……


「では、本題に参りましょう!」


おい待て、何なんだ本当に。

中継されているということなのか。何処かのテレビの収録で。


なら、何故。全身を拘束されているんだ?!


「第一問。……王族、貴族。皇族が世の中から一斉に抹消されたら、世の中はどうなると思いますか?」


……


隣にいた奴が反応した。勢いよく唸っている。

今気が付いた。同じ状況の人間が複数いる。皆揃って轡がされている。俺も。


隣の奴が唸っていると、歳は50位だろうか。

眼鏡にスーツを着こなした七三分け昭和風男性司会者が掌を隣の奴に向けた。


「おお~、とっても発言したそうな女性がいますねぇ。では、思いの丈をどうぞぶちまけて下さい!!さぁ、回答者!!しおりさん!!」


司会者が高らかに声を発すると、隣の奴、指名された女の轡が反応し、轡の中央がパッと開く。

何らかの信号で開閉するギミックということか。


指名された女は、久しぶりの口呼吸に数度息切れし、司会者を強く睨む。


「ここはどこよ!!さっさと解放しなさい!!」


鬼の様な形相で司会者に怒号を浴びせた。

司会者はそんな女を見て微笑む。俺は、その微笑みの顔の皺に悪意が蠢いているような気がした。


司会者は人差し指を女に向け、親指を立てた。

銃の形を作った。


「ばんっ!!」


その瞬間、爆発音が響き渡る。

俺の顔に、身体中に、血飛沫と肉片が付着した。


女の轡が爆発した。

まじで、一体何がどうなってるんだ。


鼓動が早くなる。夢なら覚めてくれ。


「さぁ、次の回答者は!そこの坊やとおっさんだー!」


司会者が俺とは別の方向を掌で指し示す。


「かぁぁちゃーん!!」

「みさえぇぇぇ!!!!うおぉぉぉお!」


家族だったのか。一家でこんなところに。何て不幸な。


司会者が両手で銃の形を作り、腰に構えた。やめてくれ。やめてくれよ。怖ぇよ。何なんだよ。


「バンバンバンバッーン!!」


ノリノリで勢いよく腕を前後に動かした。

西部劇のガンマンの様なアクションだ。


二人の頭が弾けとんだ。

くそったれ。


「んっー!んっー!」


誰かが声を発しようとしている。

誰だ。次は誰なんだ。

司会者は嬉々として声の主を見つめる。


「元気が宜しい方がおりますね。まだ一問目にして不正解が3人。私に文句を言ってどうなるというのでしょうか。いやいや、こうなる訳ですねぇ。お茶の間の皆様も簡単な問題に答えられない挑戦者の面々にイライラしているんじゃないでしょうか。不正解者にはもう、面は無いのですけれどねぇ」


司会者が笑えないジョークを述べると、闇の中から笑いが起きた。

光の当たってない俺達が固定されているフロアの上から。


女の家族を見たときに視界に入っていたが、俺の頭は情報を処理仕切れていなかった。


俺と同じ状況の人間が沢山いる。


「さぁ、どうぞ!」


司会者はクイズを進める。果たしてクイズなのか。文句を言えってなんだ。

見知らぬ男が解答を始める。


「なにもっー!変わらないっ!!誰もっ!この状況を助けてくれるわけでもないしっ!恩恵を受けた覚えすらない!!むしろっー!税金で食わせてやってんだ!1人1人がー!小銭程度を納税するだけで、とっても良い暮らしが可能!!それはぁぁー!血に縛られているとは言わない!!!そんな贅沢をしてぇ!戦争の責任を、古来からの血の精算をしているとは到底!!思えまぜんっんっんんん」


男は泣き叫んでいた。

涙が溢れ出ている。生死が掛かっている以上に、自分の矜持も折った発言だったのだろう。


複数の照明が男に当たる。


司会者はゆっくりと、銃を象った右の手を男に向ける。


対して男は司会者を睨む。涙は止んでいない。

動かない体の彼は、もう覚悟を決めている様だ。

これだけ文句を言ってしまえば、覚悟も決まるものだろう。

さぁ、どうなる。


「……」


「……」


「……」


……


……


……


「……ぃ、せーかい!せぇ、かっーい!!」


沸き起こる拍手。

男は呆気に取られているが、どうやら彼は正解したようだ。

次第に安堵のため息をつく。

こんな命を掛けたクイズがまだ続くのか。

しかも文句を言えと。正解に値する。

正解したらどうなるんだ。これが本当にテレビ中継されているのだとしたら、視聴者はそれこそ上流階級の人間だ。こんな、最上級の人間を否定するような解答は、正解であって、正解じゃない。


どうすれば。


……


……


……


「いっせーかーい!!異世界へ要ってらっしゃい!!」


なっ!?


司会者は手を銃の形からサムズアップに変え、正解したと想った男にウィンクをした。


未だ照明は男に当たっている。


なんだ?


空間が、歪んでいる?


当の男も困惑し、辺りを見回して必死に助けを求めている。


「さぁ、お茶の間の皆様お待ちかね。今回の異世界行き第一号は小田原慎悟さんでした。彼の異世界での活躍にこうご期待!彼の行動は随時、お馴染みの特設サイト(なろう)にて文章でお知らせ致します。更新をお楽しみに。注意点もいつもと同じ。1話完結の場合も御座います」


何を言っているんだ?

最初から、最初から意味が分からない。


異世界?

ここが異世界だろう。元の、元の世界に返してくれ。


「続いて第二問でござい……」


ああ、元のせかいが、せかいが分からない。そうか、ここも……俺も……

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