作家の覚え書き ~世界観~ (ネタバレ注意)
※五行思想を知っていると、基本となる世界の理は、理解しやすいと思います。
東洋の思想と西洋文化が融合したような異世界なので。
【五色の世界の理について】ネタバレ度、弱。
●青
司る物質は、風と植物。感情は、怒り。
赤と親和性が高く、黄色を押さえ込み、白には弱い。
青の代弁者が守護するのは、鱗を持つ者。
有名な移動魔法は、翼がなくても風を操り空を飛べる、飛行の魔法。
●赤
司る物質は、火。感情は、楽しみと喜び。
黄と親和性が高く、白を押さえ込み、黒には弱い。
有名な精神感応魔法は、興味のある対象に狂うほどの愛情を抱く、魅了魔法。
●黄
司る物質は、土。感情は、思いと慮り。併せて思慮。
白と親和性が高く、黒を押さえ込み、青には弱い。
有名な精神感応魔法は、術者の言いなりになる、思考制御の魔法。
●白
司る物質は、鉱石。すなわち金属や宝石。感情は悲しみと憂い。
黒と親和性が高く、青を押さえ込み、赤には弱い。
有名な種族は、白の代弁者の加護を受ける、白猫獣人。
●黒
司る物質は、水。感情は驚きと恐怖。
青と親和性が高く、赤を押さえ込み、黄には弱い。
有名な移動魔法は、水の中でも陸上のように呼吸のできる、おぼれない魔法。
【魔法医学界の関連用語】ネタバレ度、弱。
●魔法医師
国際的な組織、魔法協会の医師部門に登録している、治癒魔法を使える魔法使いのこと。
魔法医師になるには、初級、中級、上級の各試験に合格した上で、世界の理に認められることが、必須条件。
偽医者を名乗れば、世界の理によって罰を下される仕組み。
●鉱石病
白の世界の理が関係し、生物の体が、徐々に宝石や金属に変化していく病気。
発病して半年後には生命の維持が出来なくなり、死んでしまう不治の病だった。
小説の1話で、ついに特効薬が開発された。
●岩石病
黄色の世界の理が関係し、生物の体が、徐々に石や岩の塊に変化していく病気。
これ自体は治せるが、半数以上が併発する鉱石病のせいで亡くなってしまうことが多く、難病の一つに数えられる。
鉱石病の特効薬が開発されたため、ようやく完治する病に数えられるようになった。
●火傷病
原因不明の不治の病。一見すると、普通の火傷にしか見えず、薬や治癒魔法で治せる。
この病気の怖さは、同じ場所に何度も、火傷が勝手に繰り返し発生してしまうこと。
一日でも治療を怠れば悪化し、火傷が広がって最後は命を落としてしまう。
根治方法は無く、火傷を毎日治療するしか、延命方法はない。
●鉱石病の特効薬
第一世代と呼ばれる、最初の薬。宝石のダイヤモンドが主原料。
そのため、製造法が魔法協会から公開されても量産が難しく、世界的な薬の製造国は限られる。
小説当時の世界の薬の半分以上は、フォーサイス王国……と言うか、開発者の猫娘が作っており、世界の患者に行き渡っていなかった。
後に第二世代として、世界に広がる薬。主原料は、道端に生えている雑草と思われていたマグワート(オウシュウヨモギ)を、焼いた灰。
燃えてできた灰を、治癒魔法で飲み薬や塗り薬に変換するだけなので、製造が簡単。世界中を救う、画期的な治療薬となる。
小説当時は、猫娘が新薬として開発の途中。
【国について】ネタバレ度、中。西大陸の地理など。
●フォーサイス王国
西大陸のど真ん中にある、人間中心の草原の国。海は無いが、東のワード侯爵領地の向こうに広大な湖がある。
北はエルフ国、西は獣人王国、南はドワーフ連合国、東は湖を挟んで山岳の国、南東は神聖帝国と国境を接する。
東方で「レンギョウ」と呼ばれる、春の草原に咲く黄色い花、フォーサイシア・サスペンサが国名の由来であり、国の花。花言葉は「希望」。
1300年前に建国。500年前に一度滅亡、再建され、現在に至る。
●フォーサイス王族
現在の王族は全員、王国を再建した白猫獣人の王女「祈りの巫女姫」と、赤の聖獣(代弁者)の加護を得た人間「緋色の皇子」の子孫。
世界の理に認められた真なる名前は、それぞれの血筋の家名の後に、国名の「フォーサイス」が付く。
フォーサイス王族たちは、王国内で自己紹介をするときは、名前と家名しか名乗らないのが普通。王族が他家に嫁いだ場合、嫁いだ先の家名を名乗る。
(例:第一王子エドワード・アーサー・フォーサイスの場合、「エドワード・アーサー」と名乗る)
●アーサー王家
祈りの巫女姫の息子、人間の第一王子が、初代女王の母から王位を継ぐ。王位は、アーサー王家を中心に継承されていく。
※北の公爵家の双子は、母方の祖母がアーサー王家の出身のため、一応、王位継承権を持つ。
●ベイリー男爵家
祈りの巫女姫の息子、白猫獣人の第二王子が、母方の祖父の跡を継ぎ、再興。アーサー王家が途絶えた場合の分家王族。
白猫獣人たちは、高度な治癒魔法と、特別な契約書を扱うことができる。あと、お昼寝大好き。
フォーサイス王族に、獣人のベイリー男爵家がいるおかげで、血の気の多い獣人王国とも、良好な関係を続けられている。
●獣人王国
草食動物から肉食動物まで、様々な獣人が住む、荒ぶる国。王族に求められるのは、戦術や兵法らしい。
フォーサイス王国と同盟を結んでおり、協力関係にある。同盟更新時、フォーサイス王族のベイリー男爵家と婚姻関係が結ばれることが多い。
最近ではダニエル魔法医師の母が、獣人王国の王女として、ベイリー男爵家に嫁いできた。
●エルフ国
全体的に閉鎖的なエルフたちは、地域ごとに独立秩序を保っており、実質的には国ではない。
フォーサイス王国や獣人王国、ドワーフ連合国が便宜的に国と呼んでいるだけ。
中心的なまとめ役は、フォーサイス王国や獣人王国に近い、大樹を崇める森の長老。
この長老の一族が、便宜的にエルフ国の王族として扱われる。エルフ娘のリリーは、大樹を崇める森の出身。
●ドワーフ連合国
東西南北の四つの国からなる、ドワーフたちの国。五百年前、魔物に乗っ取られた南の帝国の属国にされていた歴史がある。
解放してくれたフォーサイス王国に恩義を感じた、一部のドワーフが、フォーサイス王国に移り住んだ。
ゴールドスミス親方は、移住ドワーフの子孫。
●神聖帝国
北は広大な湖に接しており、湖を超えた先に山岳の国がある。北西はフォーサイス王国、西はドワーフ東国と国境を接する。
五百年前に、一代帝国を築いた南の帝国の慣れの果て。閉鎖的な国民が多く、過去の栄華を求める者も多い。
二十年前には、当時の皇帝の元、フォーサイス王国と戦争状態になった。
当時、皇子だった、アレクサンダー英傑皇帝が戦争を終わらせてからは、一応、フォーサイス王国と国交回復されている。
北の湖のほとりの公爵領が、カタリナ騎士団長夫人の故郷。
●山岳の国
西にある山脈のふもとまで、湖が迫った国。山岳を超えた東側に平坦な土地があり、細く陸地が伸びた先が、東大陸につながる。
西大陸の国でありながら、南北に延びる山脈や山脈のふもとの湖のせいで、西大陸の諸国とは国交がない。むしろ東大陸派。
二年前に、不治の病の特効薬が開発されたフォーサイス王国とは、かろうじて国交を結んだ。
【用語について】ネタバレ度、強。
●魔法陣
魔力を使って、魔法を発動させるための方法。
力ある言葉を唱え、世界の理の色に対応した光る輪を描き、なおかつ内部に幾何学模様を走らせて、魔法陣を成立させる必要がある。
成立した魔法陣は、すぐに砕け散り、光の粒子として世界の理の力を発揮する。
魔法陣を描くには、魔力が必要。また、力ある言葉は、最後まできちんと唱えないと魔法陣は成立しない。
詠唱が途中で途切れても、光る輪を維持できる魔力が残っていれば、詠唱を再開して魔法陣を成立できることもある。
一般人は、光る輪を一回放棄し、最初からやり直した方が魔力効率がいい。
魔法陣は、魔道具に刻み、持ち運ぶことも可能。魔法の効果は、魔道具の質や使用者の魔力等、条件によって左右されるらしい。
●聖獣、もしくは代弁者
五色の世界の理の意思を、それぞれ代弁する、五色の種族。体色にそって、「青の聖獣」や「白の代弁者」などと呼ばれる。
正しい世界の理と共に生きると言われ、「正しい生き方をする者の味方」であるとされる。
ねじ曲がり、狂った世界の理の流れの申し子である魔物とは、敵対する存在。
●魔物
生物や物質に、均等に流れるはずの五色の流れが狂い、一色だけになった存在。
正しき流れから離れた生物は一度死に、狂った命と強大な魔力を手に入れる。命無き物質は、あるはずのない命と動く身体を手に入れる。
そうして、一色だけの理に引きずられ動き出したものが、魔物と呼ばれた。
最も恐れるべきは、知識と魔力を兼ね備え、心を操る精神感応魔法使う、人の形をした魔物とされる。
(五百年前、フォーサイス王国を滅ぼしたのは、帝国を乗っ取った人の形をした二人の魔物)
●宝珠
魔物の核の場合は、狂った流れに抵抗しようとした、正しき理の流れの塊。最後の希望のかけら。
魔法使いが作る場合は、魔力で世界の理に干渉して、虹色の流れの中から、一色を抽出したもの。
現在では、ドワーフの技術により、さまざまな魔道具の原料にされている。
●特異点、もしくは世界の理の愛し子
世界の理が代弁者の意思を離れ、わざと理を曲げた存在。突出した一色とわずかな四色と言う、非常に魔物に近い理の流れを有している。
生物の場合、突出した一色の理の影響を強く受け、強大な魔力を持って生まれることが多い。
また、人によっては、先天的な病を持っている。病を治すためには、代弁者の特別な加護が必要とされる。
特異点の生物が発生するのは稀らしく、二百年近く生きた鍛冶屋が、一度も見たことがなかったくらい。
魔力暴走を起こすと、魔物に変貌する可能性が高く、西大陸では、古くから忌み嫌われる存在。
三百年前、フォーサイス王族から誕生した「黄の魔王」は、黄の特異点だったと言われる。
だが、五百年前、フォーサイス王国を救った「青の英雄」も、青の特異点として知られる。
青の英雄に剣を授けた東方の鍛冶師は、「世界の理の愛し子」と呼んだらしい。
●原初の魔法陣
円の中に、五芒星が描かれた魔法陣のこと。代弁者が使う魔法陣と言われる。
代弁者が特別な加護を授けた場合、額にこの魔法陣が現れるとされる。
特異点が魔力暴走を起こさず、命を長らえることのできる、唯一の方法らしい。
五百年前、フォーサイス王国を救った「青の英雄」は、青の聖獣から、この魔法陣を授けられた。
しかし、三百年前にフォーサイス王国を恐怖で満たした「黄の魔王」は、この魔法陣を持っていない。
現在、国家転覆を企てる傾国の美女は、赤の特異点と言われ、黄色のこの魔法陣を持つ。
しかし、国を救おうとしている白の特異点である猫娘は、この魔法陣を持っていない。
●聖剣
ワード侯爵家に伝わる、青の英雄の愛刀のこと。青の代弁者が加護を授けたため、正しき青の世界の理と密接な関係を持つらしい。
また、正しき青の世界の理により、剣自身が使い手を選ぶと言われている。
三百年前の黄色の魔王は一度聖剣を手にしたが、聖剣は拒み魔王の手から抜け出した。
そして、ワード侯爵家の一人息子に剣の柄を向け、魔王を討つように語り掛けたといわれる。
●代弁者の契約書
白猫族が白の代弁者から授かっている、特別な力。絶対に破られない契約と言われる。
契約書の形をしており、真名による署名がされ、世界の理に内容が認めれば、新たな世界の秩序を作ることができる。
そのため、白猫族は「代弁者の代理人」や「法の番人」の異名を持つ。
●真名
世界の理に認められた、真なる名前。代弁者の契約書に、偽名を使って署名しようとも、必ず真名が記される。
●真名の意味
西大陸における「真名の意味」と言うのは、名前に込められた意味で、名前の由来となった古き言葉のこと。花の名前を持つ場合、真名の意味は、花言葉を指す。
ただし、習慣としては廃れており、古き言葉も不明になっていることも多い。現在は、各国の王族に近い血筋が名乗るくらいである。
(例:先代王妃フォーサイシアの場合、フォーサイシア・サスペンサの花言葉、「希望」が真名の意味になる)
●真名を教える
また、西大陸では、心の置けない友人に、改めて真名を教える習慣がある。「心から信頼している親友」と言う意味合いになる。
(24話で東方生まれの鍛冶屋が猫娘に、東方の真名(本名の漢字の意味)を教えたのは、西の習慣に従ったため。猫娘は気づいていなかったが)
●真名を捧げる
見習い剣士が、騎士見習いとして認められる「忠誠の儀」で行われる行為。
真名を捧げるのは、「騎士として、主君に誠心誠意仕えます」という意味になる。
逆に、主君が騎士に真名の意味を教えるのは、「部下として心から信頼する」という意味。
(1話で剣士が猫娘に行った行為が、これに当たる。猫娘の場合、幼過ぎて遊びの一環と思ったらしい)
●作家の独り言
1~26話で登場した専門用語らしきものを、抜き出してみたわ。
世界の理の基本、五色の理って、知ってるようで知らなかったわね。
そのうち、気が向けば、用語を追加するわ。




