作家の覚え書き ~登場人物~(序盤ネタバレ注意)
――――この世界は、理に沿って動いている。赤、青、黄、白、黒。五つの世界の理。
そよぐ風も、道に転がる石ころも、すべて、世界の理の流れの中。五色が均等に流れる、虹色の流れの中。
だが、特異点は違う。
特異点とは、世界の理が、理の代弁者たる聖獣の意思を離れ、わざと理を曲げた存在。一色の恩恵を強く受けるモノ。
すなわち、人知を超えて生まれてきた、世界の理の愛し子。
魔王にも、英雄にも、なれる存在である――――
(フォーサイス王国 『青の英雄物語』 冒頭より引用)
●作家の走り書き
これは西大陸の真ん中にある、黄色いフォーサイシア・サスペンサが花咲く、草原の国。
東ではレンギョウと呼ばれ、「希望」の花言葉を持つ花を、国の名前に掲げる国。
フォーサイス王国(Kingdom of Forsyth)で起こった物語よ。
作者である、あたしの視点から見た、登場人物の特徴ね。
【主要登場人物】
●猫娘、上級魔法医師の子猫(押しも押されぬ主人公!)
クリス Chris 秋の終わり生まれの12才、もうすぐ13才
(クリスティーン・ベイリー・フォーサイス Christine Bailey Forsyth)
「にゃ? 甘いお菓子の匂いです♪ 私は、お腹がすきました!」
主人公の子猫ちゃんは、銀髪銀目の白猫獣人。口達者で、気まぐれな子猫よ。お昼寝が大好きなのよね。
お菓子も大好きなんだけど、ダイエットするんだって、普段は我慢してるの。だから小柄で10才くらいにしか見えないのよ、きっと。
食べ始めると、どこに入るのかと思うぐらい、たくさん食べるわ。まだ成長期の子猫なんだから、遠慮せずに食べたらいいのよ。
1話を読んだらすぐに分かるんだけど、実は子猫ちゃんはフォーサイス王族のお姫様。
でもね、王家の特徴である金色や緋色の髪や瞳を一つも持っていない、異質なお姫様なの。
王家の色を持たないから、「魔法医師と裁判官を担う西の王族、ベイリー男爵家の養女」という建前で、実の家族と暮らしているのよね。
●剣士、騎士見習いの近衛兵(一応ヒーローだと思うわ)
ユーイン Ewen 冬生まれの17才、年明けに18才
(ユーイン・ワード Ewen Ward)
「えっと、食べる? ノアと一緒に、リンゴパイ作ったんだ。俺たちの自信作なわけ」
騎士見習いのユーイン君は、料理上手な東の侯爵、ワード家の三男坊よ。芯の強い常識人であり、料理男子。
1話で、まだ騎士見習いなのに、主人公である子猫ちゃんの近衛兵になったの。至高の宝石と新しい薬を生み出せる、天才魔法医師の王女を守るのが、ユーイン君の使命よ。
ユーイン君は黒い髪と黒い瞳を持った人間。本人は、お母さんに似た黒髪や黒い瞳を、あまり気に入っていないのだけど。
ワード侯爵家の血筋の中で、一人だけご先祖さまの特徴「青い髪と瞳」を一つも受け継がなかったからみたい。
髪と瞳の色の話題は、ユーイン君にとって禁句ね。
※ユーイン君は短編「英雄の子孫と白い子猫姫」の主役でもあるわ。この小説の1話の裏話ね。あたしと出会う、二年~半年前の話よ。
●傾国の美女、深紅の少女(子猫ちゃんが敵視してるの)
カレン Calen 夏生まれの17才
(カレンデュラ・オフィシナリス Calendula Officinalis)
「あら、ユーイン、アタシのために作ってくれたの? ありがとう、愛してるわよ♪」
カレンちゃんは、深紅の巻き毛と瞳、爪を持つ、美少女。南の公爵、オフィシナリス家の養女、双子妹よ。
勝ち気で活発な性格。常に自分が一番って、思ってるのかしら?
魅了魔法をはじめとする、精神感応魔法を駆使して、将来の王妃の座を狙っているわ。
賢姫のリズちゃんと、第一王子のエド君をめぐって対立してるのよね。
初登場の12話で、ちょっとだけ顔見せ。14話と21話の最後で、ちょっとだけ会話の場面があるわ。
本格的な登場は、26話までお預けになっちゃったんだけど。
……色々と行動してることは書いていたのに、なんでこうなったのかしら?
最初の頃は、子猫ちゃんと接点がなかったからかもね。
【脇役の登場人物】
●白猫青年、裁判官の息子
アンディ Andy 秋生まれの16才、もうすぐ17才
(アンドリュー・ベイリー・フォーサイス Andrew Bailey Forsyth)
「おやおや、さすがですね。リンゴパイの輝きが違いますよ。私にも、分けてください」
アンディ君は、子猫ちゃんの実のお兄さん。金髪と緋色の瞳の白猫獣人。穏やかで、妹思いの王子様よ。
妹の子猫ちゃんと同じく、アンディ君も口達者。話術で人を丸めこむ、影の実力者ね。
フォーサイスの王位継承順位は3位のお母さんに次いで、4位よ。将来の夢は、お父さんの跡を継いで、立派な裁判官になることですって。
でもね、アーサー王家の王子たちに何かあれば、将来、王位を継ぐ覚悟は決めているみたいよ。
初登場は4話。あたしと初めて出会ったのも、このときなのよね。
●第一王子、明るく活発な王子
エド Ed 初夏生まれの17才
(エドワード・アーサー・フォーサイス Edward Arthur Forsyth)
「さすが、ユーイン! もちろん、そのパイは僕……いや、王家にも献上するだろう?」
エド君は、金髪碧眼、絵にかいたような容姿の王子様その1。勉強よりも剣術好きな、アウトドア派ね。
国民には、明るくて聡明な性格で、浸透しているわ。あたしから見ると、機転の利くお調子者かしら。
王位継承順位は1位。順調にいけば、将来の国王様になる予定。お調子者の王様にならないか心配よ。
だから、傾国の美女に目を付けられて、魅了魔法の虜になっちゃったんだわ。
初登場は12話。あたしと初めて会話したのは、14話ね。思えば、この14話があたしの人生の転機だったわ。
●第二王子、静かなる王子
フィル Phil 春生まれの16才
(フィリップ・アーサー・フォーサイス Philipe Arthur Forsyth)
「……兄上。素直に欲しいって言うべき。兄上の分、僕が食べるよ?」
フィル君も金髪碧眼の人間、絵にかいたような容姿の王子様その2。お兄さんのエド君と違って、空気を読もうとする勉強家よ。
国民には、静かなる王子で通ってるけど、あたしに言わせると寡黙で奥手なだけね。もう少しガンガン行くべきよ。
王位継承順位は2位。将来は、母方の祖母の実家、「南のオフィシナリス公爵家」を継ぐ予定だけど。
南の公爵家の人たちが、不治の病で、当主以外全員亡くなっちゃったのが原因なのよね。
初登場は12話。気心の知れた従妹である子猫ちゃんとは、長く会話してたわね。
●公爵子息、社交家の色男
マット Mat 夏生まれの16才
(マシュー・エステ・フォーサイス Mathew Este Forsyth)
「わー、美味しそうじゃん! もちろん、ボクのもあるよね?」
マット君は、緋色の髪と金の瞳の人間。北の公爵、エステ家の双子弟。女性を口説くのが趣味と豪語する、軽い口調の王子様。
何も知らない国民は社交家って思ってるけど、エド君と並ぶトラブルメーカーよ。
なんかね、「しっかりしたお嫁さんを見つけないと、エステ公爵家を継げないから」って、色々な女の子に声をかけているわ。
王位継承順位は10位。将来はお父さんの後を継いで、宰相になる予定。
エド君の良き相棒ね。フィル君とは同い年の親友であり、最も身近なライバルよ。
初登場は12話。13話で、奈落の底に突き落とされるような現実を、知ることになるのよね。
●公爵令嬢、悪役令嬢の賢姫
リズ Liz 夏生まれの16才
(エリザベス・エステ・フォーサイス Elizabeth Este Forsyth)
「本当に美味しそうですこと♪ わたくし、お茶の準備をしますわね」
リズちゃんは、マット君と同じ、緋色の髪と金の瞳の人間。北の公爵、エステ家の双子姉。凛とした雰囲気をまとうお姫様。
王位継承順位は9位。第一王子のエド君と婚約中で、将来の王妃様になる予定。
お調子者の婚約者とトラブルメーカーの弟を支えるため、すっごく努力したらしいわ。そのおかげで、賢姫と呼ばれるほどの才女になるのよね。
現在、婚約者のエド君をめぐって、傾国の美女カレンちゃんと対立中よ。
初登場は2話の冒頭。本格的な登場は16話。あたしと初めて会ったときね。
●引きこもり令嬢、薬草栽培師
マリー Mary 夏生まれの17才
(ローズマリー・オフィシナリス Rosemary Officinalis)
「あー、なんか甘い匂いがする。ワタシにもちょうだい……じゃななかった、美味しそうな匂いですわね、ワタシにも頂けるかしら?」
マリーちゃんも、深紅の巻き毛と瞳が特徴よ。カレンちゃんの双子のお姉さんだから、美少女。南の公爵家の養女、双子姉。
性格は、めんどくさがりで引きこもり体質。……残念美人って言うやつかしら。
名前の初登場は21話。本格的な登場は26話よ。カレンちゃんと同じ顔の双子なのに、考え方ってこんなに違うのね。
※マリーちゃんは短編「公爵令嬢(仮)の人生は、斜め上を行く」の主役でもあるわ。この小説とリンクしてる、ネタバレ話ね。
●鍛冶屋、青い瞳の魔道具技師
ノア Noah 春生まれの193才(人間換算19才)
(ノア・ゴールドスミス Noah Goldsmith)
東方の本名「青帝 諾亞」チンディ・ヌォヤァ
「うん? あんたも食べたいのか? いいぞ、僕の分をやる。隠し味は、メイプルシロップだ。面白いだろ」
ノア君は、青い髪と瞳の青年。面倒見がいい、職人肌の兄貴分よ。手先が器用で、ユーイン君の料理仲間ね。
国宝職人ゴールドスミス親方のもとで鍛冶修業し、独立とゴールドスミス姓を名乗ることを許された、鍛冶師兼魔道具技師よ。
東大陸の東の端、海の国の出身。東方の人だから、西の言葉が下手なのかしら?
「~だろう」の発音は、「~だろ」としか聞こえないし、ときどき意味不明なことを言うし。
本名の「ヌォヤァ」が、西のあたしたちには「ノア」って、聞こえるのよね。
初登場は2話。脇役の中では、アタシと並んで早いわね。
※ノア君は短編「僕も愛しい人と婚約を」の主役。東に住んでいた頃の物語ですって。
●エルフ、作家を夢見る新人冒険者
リリー Lily 初冬生まれの157才(人間換算15才)
(リリー・ファウラー Lily Fowler)
「あら、あたしの故郷とは、ちょっと違う味ね? ねえ、今度、作り方を教えてちょうだい」
最後は、この小説の作者である、あたしの自己紹介ね。あたしは、金の瞳と金髪ポニーテールが特徴のエルフ娘。
しっかり者だと思うんだけど、ノア君に言わせると、「マイペースで、お気楽気質」ですって……どういう意味よ!
あたしは冒険者として、北のエルフの国から、中央にあるフォーサイス王国にやってきたの。
フォーサイス王国の王都で住み始めて、二週間たった頃に、この小説の事件に巻き込まれたのよね。
初登場は2話。ユーイン君やノア君と同時期に登場したのよ。
【五百年前の人々】
※小説内にたまに出てくる、昔の人々。そろそろ、箇条書きでも良さそうね。
●祈りの巫女姫
滅亡したフォーサイス王国で、唯一生き残った王女。治癒魔法が得意な、銀の髪と瞳の白猫獣人。
王国再建の祖で初代女王となり、王位はアーサー王家に、治癒魔法はベイリー男爵家に受け継がれていく。
●緋色の皇子
赤の聖獣(代弁者)の加護を得た、南の帝国の元皇太子。フォーサイス王国再建後は、祈りの巫女姫と結婚。
緋色の髪や瞳、赤色魔法の素質は、フォーサイス王族の血筋に受け継がれていく。
●青の英雄
青の聖獣(代弁者)の加護を得た、フォーサイス王国辺境育ちの冒険者。東方の鍛冶師の作った剣で、南の帝国の魔物たちと戦った。
フォーサイス王国再建後は、聖騎士と呼ばれる。青い髪と瞳と愛剣は、ワード侯爵家に受け継がれていく。
●赤い魔女
魅了魔法で皇帝妃となり、南の帝国を乗っ取った人物。快楽を求める、人の形をした魔物。
●黒い軍人
フォーサイス王国を滅ぼした南の帝国、最高位の将軍。恐怖を与えることを至上とする、人の形をした魔物。
【その他の人々】
※ここから先は名前を覚えなくても、あまり問題ないと思うわ。子猫ちゃんの家族や親戚関係の紹介だから。
●アーサー王家(王宮の王族)
※五百年前に活躍した、祖国再建の祖である白猫獣人の王女「祈りの巫女姫」と、赤の聖獣の加護を持つ人間「緋色の皇子」の子孫。
基本的に、建国時のフォーサイス王家の証である金の髪か瞳を、代々受け継いでいる。まれに、「緋色の皇子」の緋色が出る場合もある。
・シャルル国王、イザベル王妃
第一、第二王子の両親。シャルル国王は、神聖帝国との戦争時代の武勲を称えられ、『戦王』のあだ名を持つ武闘派。
イザベル王妃は、東の侯爵家出身。戦争時代は『風の戦乙女』と呼ばれた女騎士。
・チャールズ先代国王、フォーサイシア先代王妃
第一、第二王子の父方の祖父母。白猫兄妹の母方の祖父母。
シャルル国王は、戦争前に神聖帝国の属国になりかけていたフォーサイス王国を立て直した、賢王。
フォーサイシア先代王妃。小説の事件の起こる二年前に鉱石病を患っていたが、孫の猫娘の開発した特効薬で命を救われた。
●ベイリー男爵家(西の王族、または白猫族)
※祈りの巫女姫の治癒魔法を受け継ぐ、フォーサイス王族。同時に、西隣の獣人王国の王位継承権を持つ、獣人王族でもある。
・ダニエル筆頭宮廷魔法医師、アグネス王女
白猫兄妹の父方の祖父母。北の公爵家の双子にとって、母方の祖父母。
ダニエル魔法医師は、フォーサイスと獣人王国の王位継承権を持つ、白猫王子。
アグネス王女は人間、チャールズ先代国王の妹。
・イーブ裁判官、ジャンヌ王女
白猫兄妹の両親。イーブ裁判官も、二つの国の王位継承権を持つ、白猫王子。
ジャンヌ王女はシャルル国王の双子妹。若いころ、アンリ宰相見習いとの政略結婚を拒み、イーブ裁判官との愛を貫くため、王宮の塔から身を投げた行動派。
●ワード侯爵家(東の侯爵)
※五百年前に活躍した聖騎士「青の英雄」の直系の子孫。代々、青い髪と瞳を受け継ぐが、剣士ユーインのみ例外。
・マイケル先代騎士団長
剣士の父方の祖父。神聖帝国との戦争時、総大将を務めた老騎士。
妻は南の公爵家当主の姉で、イザベル王妃が幼いころに鉱石病で亡くなった。
・ミシェル騎士団長、カタリナ騎士団長夫人
剣士の両親。ミシェル騎士団長はイザベル王妃の10才年上の兄。
カタリナ夫人は、神聖帝国の北の公爵出身。
・ジェームズ(長男)、ドライグ(次男・故人)
剣士の兄たち。長男は、将来の騎士団長と注目されている。
次男は、6年前に魔物の襲撃で亡くなったらしい。
●エステ公爵家(北の公爵)
※五百年前、巫女姫に同行していて生き残った貴族の子孫。フォーサイス建国時から仕える、古い文官の家系。
・アンリ宰相、セーラ公爵夫人
北の公爵家の双子の両親。セーラ夫人は白猫獣人の王女で、イーブ裁判官の妹。
・ヘンリー前宰相、大奥
北の公爵家の双子にとって、父方の祖父母。
●オフィシナリス公爵家(南の公爵)
※五百年前、巫女姫に同行していて生き残った貴族の子孫。フォーサイス建国時から仕える、古い騎士の家系。
・アンティオ先代副騎士団長
深紅の双子を養女にした、老騎士。亡くなった妻、マーガレット白猫夫人は、ダニエル魔法医師の妹。
●ゴールドスミス工房(金細工の鍛冶工房)
※王宮御用達の鍛冶工房。魔法による武具を作れる、腕利きのドワーフ職人が居る。ワード侯爵家は、お得意様。
・ゴールドスミス親方
300年生きる、ヘンコツのドワーフ。国宝職人の金細工鍛冶師。東方生まれの鍛冶師、ノアのお師匠様。
・ジル
50才になる、ゴールドスミス親方の一人息子。父方のひいばあさんの血筋が出たため、エルフに生まれる。
●作家エルフの独り言
いらっしゃい、ユーイン君。今日も、王宮に提出する原稿を取りに来てくれたのね。
ようやく脇役まで出そろったから、登場人物を見直してた所よ。
1から26話で、約13万5千文字。
王家の物語って、対して出番がないのに、ちょい役の親戚の人たちが多くて、書くのが大変だわ。
でも、近衛兵の騎士って、雑用も仕事に入るのね。
それとも、ユーイン君は王宮の王子たちの従兄弟だから、命令されたの?
「エドが王太子の仕事をしないから、リリーの原稿を見るのを条件にして、公務をやらせてる」ですって?
……王族の親戚って、本当に大変なのね。同情するわ。
「それから、主要登場人物のはずなのに、ユーイン君やカレンちゃんの出番が少ない」ですって?
ほら、子猫ちゃんが主役だから、当然でしょう。そのうち、ユーイン君のかっこいい場面も書いてあげるわよ。
あ、エド君に伝えて頂戴。
「きちんと王子の仕事しないと、恥ずかしい場面を小説に書いて、数百年後の後世まで残すわよ! エルフの作者を怒らせないことね」って。
これで、ユーイン君の仕事が減ると良いんだけど。




