求愛の2乗の1
この作品はボーイズラブを扱っております。苦手な方は閲覧にご注意ください。
キッカケとかそんなもんは、大体がひょっこりとした物で。俺の意思とは関係なく姿を現すんだ。
「くっ…ふあああ…」
週番の仕事である掃除を俺は嫌々こなす。欠伸をしながらその辺を適当に掃いていた。
「んー……なんで俺が葉っぱ掃きなんかしなきゃなんねえんだよ……」
「それがお前の仕事だからだ。はよやれ」
「死んだ魚みてえな目ェしてるお前にだけは命令されたくねえな……」
「じゃあはよやれ」
大体いつも通りの会話をして、また無言で掃除を続ける。会話をしていたアイツの名前は片山優。優しいとかいて「すぐる」だ。名前と違って全然優しくねえ。
俺は優が見ていない隙に、人気のない場所へと逃げた。なるべくローファーを鳴らさないようにして、急いで逃げた。逃げた先は、クーラーが効いてて涼しい場所、そして定番の『図書室』。最近じゃかっこよく『学校図書館』とかって呼ばれている場所。俺が中三の頃からそう言われていた。その前からも言われてるかもしれないけど。
「あちー」
制服のネクタイを緩めて一番涼しい場所に座る。放課後の図書室は少し混んでいて、俺は少し顔を顰めた。
人が集まっているのを見ると、嫌な気分になる。だから、遊園地とか外とかに行きたくないんだ。この学校にだって、本当は来たくない。人は多いし、授業だって面倒くさい。やたらと熱い俺のクラスの担任も鬱陶しい。どうしてこんなド田舎でわざわざ大勢の人に会わなきゃいけないんだ。そんな理不尽な理由で俺は学校が嫌いだ。
ため息を吐いて、俺は目を閉じた。涼しい風が夏の陽射しを浴びて火照った体に心地よい。俺は多分、そのまま眠ってしまった。
多分、と言ったのは、眠ってしまったことに自分が気付かなかったからだ。肩を叩かれて目を開けて、そこでようやく自分が眠っていたことに気づいた。
「あの……」
少し高めの声がした。高めとは言っても、女子じゃない。多分、男。男に起こされるとか最悪だ。俺は体を少し動かして、起きたことを示す。
「ん……?」
腹の辺りに何かが置いてある。それを手に取ると、俺の背後に立つ男が慌ててそれを取り上げた。
「あっ、あのす、すみません!図々しいことをしました!」
謎の宣言。俺は面倒ではあったが、それの正体と男に一言文句を言ってやろうと思って後ろを振り向いた。