夫の夢は辛いです
ロボット物の世界観って難しい
「いらっしゃいませ~」
私は村中りお35歳、只今パートのお仕事中
先日、不思議な夢をみたけどあれ以来至って普通に過ごしています
今日は夫、大地が珍しく有給休暇をとったのでパートの仕事が終わったら一緒に買い物に行く予定です
「ただいまー」
あれ?家で待っているはずの夫から返事がない
家の中を探してみると、二階の書斎で眠っていた
今日は天気もいいし、確かにお昼寝には最適な日だ
私も少しだけ・・・・・
夫の横に座り、静かに瞳を閉じた
真っ白な世界
何処かで見たことがある
紫色の光
「夢の番人スナレティム」
『・・・・・覚えてたのですか?』
「あまりにインパクト強い夢だったものでねー」
普通、夢を見ても起きたら大半忘れているが、スナレティムの夢は何故か覚えている
『また、夢に囚われた人が現れました』
「もしかして、毎回私が行かなきゃ駄目なの?」
『こんな再々現れるのが珍しいんです、行ってくれますか?』
「・・・・・はぁ、手短にお願いします。」
『よろしくお願いします。』
ブワワァン
景色が歪み、そして・・・・・
ドシンッ!
「いって!!!」
落ちるのを忘れてたぁ!
お尻を摩りながら立ち上がると、ここは都会の廃墟だった
ドゴーン!!
パンパン!!
大きな爆音と地響き、遠くて聞こえる銃声
私はテレビでしか見たことがない、戦争の光景が目の前にあった
流石にこれは身の危険を感じる
言い知れぬ『死』への恐怖
とにかく、ここにいては危険だ
何処かに逃げないと
辺りをキョロキョロ見回していると
「おい!!そこに居ては危ない!!」
爆音や銃声が響く中、男の人の怒鳴り声が聞こえた
軍人のような格好をした人が駆け寄ってくる
頭にはヘルメットとスコープがついて顔はよく見えない
「こちら8番隊整備班、避難し遅れた市民を発見。共に回収ポイントに向かいます」
軍人さん、スコープに付いている無線で報告をした
「まだ、市民が残ってたとはな・・・・・もう大丈夫だ。さあ、行こう」
と、腕を掴まれ立たされた
「あ、ありがとう」
「走れるか?俺に付いてきてね」
走るの?おばさんすぐに息上がっちゃいますよ・・・・・
私はとりあえず避難させて貰える様なので、頷き付いて行った
少し走った所に軍事用のヘリがいつでも飛び立てる状態で待機していた
私達は急いで乗込み、その場を離れる
その時、上空から見た街の光景に言葉を失った
ビルよりもモンスターと巨大人型?ロボットの戦い
マジですか・・・・・?
ヘリは戦闘現場をどんどん離れていく
「はぁ、危なかったなー」
私を助けてくれた軍人さんが話し掛けながらヘルメットを脱いだ
「すみませ・・・・・!!」
ヘルメットを脱いだ軍人さんの顔をみて、驚き固まった
その見慣れた顔は私の夫、大地だ
決してイケメンではないが、くっきり二重でぷっくりした唇、日本人離れした整った顔をしている
そして、少し若返っている
「?」
どうかしたのか?っといった表情を浮かべる
「村中隊長!至急基地に戻るようにと指令が」
ヘリを運転していた軍人さんが話しかける
「わかった、悪いが避難所に寄る時間がない。一緒に基地に来てもらえるかな。後で送ってあげるから」
と、ニッと笑った
これは夫大地の夢なのか・・・・・
基地に着くと、大地は私の事を部下に託し、何処かに走って行った
「りおちゃん、また後で!」
今まで、ちゃん付で呼ばれた事が無かったので凄く恥ずかしいです
私は部下さんにゲストルームに案内された
その途中でガラスがあったので自分の姿をみるとかなり若返っている。
黒髪のショートヘアの少女が写った
なんだかなー女なだけ良しとするかな
建物内は自由に行動してもいいそうです
ゲストルームでしばらく大人しくしていたが、暇になったので少し建物の中をうろうろする事にした
鉄筋コンクリートで出来た要塞の様な作り
長い廊下と個分けされた部屋
その先に大きなガラスごしにさっきみたモノとは違う巨大ロボットが立っていた
数人が整備をしている
あぁ、なるほど。大地が好きそうな夢だな
ロボットの足元、制御システムのような機械の前でパイロットの様な人と司令官風の人と話をしている大地を見つけた
実に真剣に意気揚々と話している
私の視線に気がついた
優しく微笑み手をあげる
私も照れながら手を振り返えした
いかんいかん、早いところ夢に囚われている人を見つけよう
その場を離れまた、別の所をうろうろした
「そう簡単に見つからないかー」
私は半分諦めモードでゲストルームに戻ろうと廊下を歩いていると目の前の部屋がガチャリと開いた
中からブラウン色のセミロングの女の子が現れた
黒いオーラをまとって・・・・・
私は驚いて足を止め、女の子をジッと見つめた
そして、何か話し掛けなきゃと思い
「あ、あの!少しだけお話させて下さい!」
彼女を呼び止めた
「なにか?」
凄く不審な顔をしているが、話を聞いて貰えるようだ
私は色々面倒なので、単刀直入に聞くことにした
「私は夢の番人の使いです。貴方は夢に囚われています。何か困った事がありませんか??」
普通、こんな事初対面の相手にいきなり言われたら、こいつ頭おかしいんじゃない?ってなると思うけど、私はココ(大地の夢)が居心地が悪くって少し焦っていた
「・・・・・夢・・・・・」
彼女の瞳が虚ろになる
「夢ならどうして覚めないのかしら?私はどうしたらいいの?ーっ」
その可愛いらしい瞳から涙が溢れた
私は驚きあたふたしながら慰めた
彼女はサラ・テキュラン20歳
どうやらあのロボットのパイロット候補らしい
あのロボットのパイロットは誰でも出来るってものではないらしく、潜在的能力が必要らしい
他にも候補が2人いるらしく争っているのだ
ただ、それが囚われている理由ではないらしく
「司令官と母が恋仲なの・・・・・でも、私も司令官の事が・・・・・」
・・・・・ほ、ほう・・・・・
「私、諦めようとしてるのにパイロット候補を続けるかぎり司令官と関わる事になって」
ですよね・・・・・
「もう、辞めたいの・・・・・自由になりたい」
俯き泣いているサラ
今まで誰にも相談出来なかったらしい
とても苦しかったんだろうな
司令官・・・・・さっき大地と話をしていた人か
問題解決としては、司令官とサラのお母さんを別れさせるか、サラがパイロットを辞めるかだろうな
どうしたらいいのか悩んでいると
「サラ!ここにいたのね」
軍服を着た清楚だが、何処か強く魅力のある女性が現れた
「お母さん・・・・・」
サラのお母さんは私をちらっと見て、すぐサラに視線を戻した
「第3倉庫で待機命令が出てるわ。急いで行って」
「わかったわ・・・・・」
サラが立ち上がり私を見て
「リオちゃん、話を聞いてくれてありがとう。」
うっすらと笑顔をみせてお母さんと去って行った
私はその後ろ姿を見送り、ゲストルームに戻った
その日、大地が私の所に来ることは無かった
夢の中なので、私達は夫婦ではない
当たり前だけど、なんだかモヤモヤする
朝、早めに目が覚めたので散歩をしながらサラをどう救うか考える事にした
建物の外は危険なので、中を散歩する
遠くの部屋の扉が開き、女性と男性が出てくる
軽く口づけを交わし女性は去っていく
朝からお熱い事で・・・・・遠目で眺めていると
男性が振り返る
夫、大地だった
ピキ・・・・・
あーのーやーろーうー
嫉妬と怒りで顔が真っ赤になり、固く握った拳が震えた
お、落ちつけ・・・・・これは夢の中
夢だから・・・・・と自分に言い聞かせ
大地は部屋の中に戻ろうとしたが、私を見つけて
ニコニコしながら近づいて来る
「おはよう!朝早いねー」
「・・・・・」
頭では分かっているが、どうしても睨んでしまう
「あ・・・・・えーと?リオちゃん何処かに具合悪いの?」
「別に・・・・・」
そうだ、私は夢に囚われたサラを救うのが使命!コイツと仲良くする必要はない!
私はプィっとそっぽ向いて立ち去ろうとした
ふん!!好きにすればいい!!
不意に額に大きな手が被さる
「熱は・・・・・ないかな?」
大地が私の額で熱を計る
かぁぁぁぁ顔が熱い
「さ、触らないで!!」
バシッと手を跳ね除け走って逃げた
あまり前を見ないて走っていた私は曲がり角で人とぶつかった
ボフン!
「ご、ごめんなさい!」
顔をみると司令官と言われる人がいた
鋭い眼差しにダンディな雰囲気
大人の魅力たっぷりだ
「走ると危ない」
私の肩をぽんっと叩いて去るうとした時
ドゴーン!!!!
急に地面が揺れて、建物が揺れた
建物の電気がバチバチとなる
ビーーーー!ビーーーー!
警告音が鳴り響く
「現れたか!ここにいては危険だ、来い」
司令官は私の手を掴み何処かへ向かった
そこは司令官なのか既に数人の軍人が待機していた、私は司令官室隣の部屋の入れらてた
状況は切迫している様子だ
昨日の巨大モンスターがまた現れたのだ
昨日戦っていたロボットは別部隊の物で昨日の戦闘で使い物にならないらしい
ココはロボット整備のメインドック基地らしく、襲ってきたのだと
モンスターの癖になかなか賢い・・・・・
「R-5は起動可能か?」
「はい。パイロットは誰を?」
「・・・・・サラでいこう」
それから、激しい戦闘が行われた
ロボットとモンスターの激戦の末
勝利したのだ
正直、私は怖かった・・・・・
実際前線で戦っている人達はもっと怖いのてはないだろうか?
サラは・・・・・大地は無事たろうか・・・・・
建物は一部破損
死者数人負傷者多数
帰ってきたロボットはボロボロだった
大地の姿を見つけホッとした
整備班隊長の大地を中心に整備が行われる
パイロットのサラの姿もあった
フラフラでひとりで歩けない程で
誰かに付き添われて肩を借りて歩いている
そんなサラに司令官が歩み寄る
ガバッっと抱きしめた
あまりに急な展開で周りは静寂に包まれる
「無事で良かった・・・・・」
「司令官・・・・・」
司令官の表情を見てある疑惑を持った
もしかして・・・・・
私はサラのお母さんを探しまわった
「サラのお母さん!」
どうやらサラのお母さんは軍の医療班の仕事をしているらしい
「なに?今、忙しいんだけど・・・・・」
「ひとつだけ、教えて下さい。」
私はサラのお母さんに近づき、小声で
「もしかして、司令官はサラの父親ですか?」
「!!」
サラのお母さんは驚き動揺した
「なんで、その事を知っているの?」
やっぱり・・・・・
手短にサラの気持ちを説明書すると
サラのお母さんは悲しい表情を浮かべ
「そうだったの・・・・・私は今ここを離れる訳にはいかないの・・・・・伝言お願いしてもいい?」
私は頷いた・・・・・子供の事が大切でも、自分の仕事をまっとうしようとする彼女の姿は強く美しく、力になってあげたいと思った
私はサラの所に向かった
サラは休憩室にいた
隣には司令官が座っている
危険な任務をやり遂げた部下を労っているというよりは可愛い我が子の身体を心配している父親だった
もう少し、そっとしておこうか・・・・・悩んでいると
「私達3人の中でサラが一番R-5とシンクロ率が良いのよ」
ブロンド色の髪をポニーテールにしたスラッと背が高い女性が話し掛けてきた
この人・・・・・
朝、大地の部屋から出てきた子だ!!
「だから、危険な任務はサラが優先される訳・・・・・」
女性は私を見下ろす
「・・・・・」
一方的な嫉妬だが、私はこの人と話したくない
「ローズ!ここにいたのか。おや?リオちゃん?」
げっ!大地だ
最悪なタイミングで現れたやがって・・・・・けっ!
はい、私性格悪くなってます
「あ、お兄ちゃん。」
・・・・・はい?
今なんていった?
お兄ちゃん??夢の中で妹萌えかい!?
現実の大地は兄しかいない
なんだ・・・・・ムカツキ損をした
私は少し肩の力が抜けた
大地兄妹の会話を余所にサラが気になった
伝言を伝えなければ・・・・・
ゆっくりとサラと司令官の所に向かった
司令官は私に気が付いてこちらを見ている
「サラと話があります」
司令官が立ち去ろうとすると私は司令官も一緒にと止めた
遠くで大地兄妹が何事かと見守っている
「サラ。お母さんからの伝言があるの」
「お母さんから?」
こんな大事な事を私の口から告げてもいいのか、悩んだけれど自分の口で言えない彼女なりの優しさがあるのではないだろうか・・・・・
「『愛するサラ、司令官グレイズは貴方の父親です。私が好きになった人を貴方も愛するって事は奇跡ね。貴方は私の自慢の娘よ』」
・・・・・
サラは一瞬驚き混乱した表情を浮かべたが、司令官の優しい眼差しに気が付き涙を流した
「こ、この感情は恋では無かったの・・・・・?私は司令官を・・・・・」
愛していたのだ
父親として深く深く・・・・・
そっと司令官がサラを抱きしめた
サラから黒いオーラが消えていく
パターンで言うと私はすぐにでも夢から連れ戻される
その前にひとつだけ、やり残した事があった
急いで大地の所に駆け寄りグイッと襟を掴む
大地は何が起こるのか検討もつかず混乱している
強引に顔を引き寄せ・・・・・キスをした
世界がぐにゃりと歪む
最後に遠くで妹のローズからロリコン!!と叫ばれている大地が見えた
真っ白な世界に戻ってきた
あー疲れた・・・・・
今回は精神的ダメージ半端ないです
紫色の光が現れる
『今回もありがとうございました』
「入れる夢って選べないのかな?夫の夢、マジでキツイですよ・・・・・」
『夢に囚われる人がどの夢で囚われるかはわかりません。ただ・・・・・』
ただ?
ここで私は目が覚めてしまった
隣にはまだスヤスヤ寝ている夫
思いっきり、鼻を摘んでやりましたよ!!
おわり
戦闘ものは難しい