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はじめに

 私は、鳥居大吾(とりい だいご)を心の底から愛しておりました。


[所詮はガキの恋愛] 多くの大人がそう思ったでしょう。事実、私はまだ世間知らずの高校生で、親の庇護のもとに生活している若輩者です。愛やら恋やら語るに至らない人間で在るとは自覚しています。でも、私は彼の葬儀の最中に、嗚咽を抑える事が出来ませんでした。棺の中で、永久の眠りについた彼を見た瞬間、膝から崩れ落ち、その場で人目も憚らず、泣き崩れてしまいました。何がそうさせたのかは分かりません。ただ、無性に悲しくなって、気が付いたら大粒の涙が頬を伝い、私の自制心を壊したのです。


彼との思い出? そうですね····好きだったところはあまり思い出せません。 嫌いだったところはすぐ思い出せるのに、可笑しいですよね。なにせ、私にですら本性を見せたがらない男でしたから。掴み所がないって言うか、一緒にいてもずっとヘラヘラしてて、適当な事ばっかり言ってましたね。



今位の時期になると、毎年ここから一番近い海に遊びに行くんですよ。何本か電車乗り継いで。実を言うと本当は、乗り気じゃ無かったんです。肌のケアとか大変なんで。それでも、彼の嬉しそうな顔を見るたびに、断れなくなっちゃうんですよ。あれ、マジで反則です。あと祭りとか公園で花火やったりもしました。


気遣いは出来る奴でしたね。私って根はスゴいネガティブなんですよ。落ち込み易いし、自暴自棄によくなりますし。そんな時には、よく夜中の繁華街に連れ出されました。で、麻雀覚えさせられたんですよ。意味分かりませんよね(笑)? 彼いわく、「俺が知ってるなかで、一番頭使う事」で「頭使えば、他の余計な事を考えなくてすむから」だそうです。そこからですかね、悩んでる事が、馬鹿馬鹿しく思えてきたのは。今は、かなり前向きに物事考えれますよ。


有り難みって、無くなって初めて気付くから皮肉だなと思います。彼を失った事で生じた心の深い穴は、なにをやっても埋まりませんでした。大きな消失感を抱えて、生きていくことは困難を極めます。死にたくなるまで自分を追い詰めて、毎夜一人で泣いていました。


立ち直れたと言うと嘘になります。まだ、どこかで彼を忘れられないんでしょう。それでも、私は彼のいないこの世界で、強く生きようと思ったんです。そのためにも、今は大学進学に向けて、勉学に勤しんでいます。


切っ掛けですか? はい、ありましたよ。高二に上がった春、私はある転校生と出会いました。あっ、[出会った]というと、少し表現が違いますかね。実は彼女とは、初見じゃなかったワケですし。それが私の嘘のような一年の幕開け、だったんですよ。


私は再会したんです。死んでしまった最愛のひとに。




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