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雨に溺れた共犯者

最終話です。 男と女の立場から書きました。



あの人に抱かれる時が、女の自分を取り戻す時間だったわ…。



身体を重ね合う事が、何時しか悦びに変わって行ったの…。


自分が、これほどに変わっていくとは、思ってもみなかったわ…。



変わっていく自分が、

まるで別人のように思えたの…。



私を変えたあの人に、逢う時間が、待ち遠しくて仕方なかった。



そんな二人だけの時間を追いかけて、

気付いた時には、あの人の事を、愛していたわ…。



でも最近、部屋を出て、あの人に送ってもらう時に、感じるの…。



本当は、追いかけているのは、私じゃ無くて あの人じゃないかって…。


以前なら絶対に言わなかった事を、話してくるの…。



今の関係よりも、

先に進もうとするあの人の気持ちと、


このままの関係で、止まっていたい私の気持ちが、離れ出してる気がするの…。



あの人を、愛している事は、確かだけど

私は、自分の家庭は壊したくないの…。



私が原因で、あの人の家庭も壊したくないわ…。


そう思うと、これから先の付き合いが、

どうなって行くのか、不安になってきて…。



私の中の不安感は、日毎に大きくなっていったわ…。



あの人と、重なっている時は、

私の身体だけが、不安を忘れてしまう…。



離れてしまえば、より大きなものになって、心に戻って来るの…。



私の身体と心のバランスは、崩れ始めていたわ…。



先の見えない関係が、怖くなっていたわ…。



愛していると思っていた気持ちさえ、薄い紙の様に思えてきたの…。



だけど、愛されてる事の嬉しさも、どこかに残っていて…。



不安定な気持ちの全てを、あの人に告げる勇気も無かったわ…。



どうしたらいいのか、

解らなくなっていたわ…。



あの人に願うのは、壊れそうな私に気付いて欲しかった…。



出会った頃のあの人に、戻って欲しかった…。



楽しいはずの秘密の時間が、重い時間へと、変化していったわ…。



そんな私に、あの人は言ったわ…。


いいえ、言ってくれたのかもしれない…。



??????????



逢う度に、今までとは明らかに違う彼女に、どうして良いか、


どうしたら出会った頃の、彼女に戻ってくれるのか、


オレには解らなかった…。



もっと彼女を、愛すべきなのか、

何を、してあげるべきなのか、



自分自身を見失ったオレに、解るはずも無かった…。



ただ一つだけ感じる事は、目の前に居る一人の女が、


これ以上オレとの関係を続けたら、壊れて行く…。


それだけだった…。



一度は、我を忘れるほど愛した女を、オレが壊している、


これ以上彼女を苦しめたくは無い、


はっきりと自分で、そう感じた時、




オレは、彼女に言った…。



これきりに、しよう…。



彼女の潤んだ瞳から、涙の雫が、頬を伝って落ちた…。



彼女は、微かな吐息を漏らして小さく頷いた。



その吐息が、安堵からなのか、


二人の関係を、名残惜しむ気持ちからなのか、



オレには、いまだにわからない…。


いや、


もう、わかる必要も無い…。



今、願うのは、彼女にとって、



オレは、ただの回転扉であって欲しい。



通り抜けただけの、

一つの回転扉であって欲しい。



それだけだ…。



オレにとってのサイトの出会いも、


通り抜けた、ただの回転扉だったのかもしれない…。




今日も、雨が降っている…。



彼女と出会った時も別れの時も、雨が降っていた…。



窓硝子を伝う雫をみると、

彼女の涙を思い出す。



別れ際に彼女が言った言葉が、脳裏をよぎる…。


オレには、その言葉が、彼女の最後の優しさに思えてならない…。



私たち、


同じの時間の中で溺れた


共犯者ね…。




....完.....









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