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S子の証言

不倫の話


待ったかい?


今日もあの人は、

約束の時間の10分遅れで、やって来た。


会うのは、決まって土曜の午前9時から12時まで。



月に2回か3回の密会を、楽しみにしている。



家族には、パートの早番と言って、家を出るの。



待ち合わせは、いつものファミレス。



私は、約束の時間よりも、少し早めに着くようにしているわ。



化粧室で、下着を替えて、お化粧を直して

あの人に会う支度をするの。



もう何度も逢ってるのに、

ドキドキする刺激を求めるのは、女の本性なのかしら…。



テーブルに戻り、一杯目のミルクティーを飲み終わる頃、


決まったように

あの人は、やって来る。


いつも、ほぼ10分遅れ。


そして いつものセリフ。


待ったかい?



軽い朝食をとり、


あたり障りの無い会話をして、

あの人の車に乗り込むの。



これから、秘密の時間を楽しむのに、

つまらない会話で、気まずい雰囲気を作らないようにしているわ。




あの人も、同じように気を利かせているのが解るのは、

私達、きっと似た者同士なのね…。




でも最近、なんかマンネリ化してるなぁって感じてるの…。



それでも、安心して会える相手だから

二年も、続いてるんでしょうね…。




既婚者同士、体の関係を二年続けたら、


相手の知りたく無い部分も見えて来るものね…。


逆に、


知りたい部分、

知られたく無い事は、

お互いにはぐらかしている…。



既婚者同士だから、

あまり突っ込んだ話は、しないようにしているわ‥。


恋人同士と呼ばれる関係ではないのは、

あの人も解っているはずだわ…。




何となく暗黙の了解になっている、

私達二人は、そんな関係ね…。




私達が、知りあったのは、出会い系サイトが、きっかけだったわ。




その頃の私は、

パート勤めの、ごく平凡な主婦だった…。



不満が無い訳じゃ無かったわ…。


一番嫌なのは、


自分勝手に、始めて

自分勝手に終わる旦那との夜の営みだけだった‥。


愛のかけらさえ、感じ無い夜の営みで、

私を、道具の様に扱う旦那には、辟易していた‥。



苦痛にさえ感じ始めていたわ‥。



それでも、経済面で旦那に頼るしか無かった私は、

旦那の要求には、出来るだけ応えていたわ…。




自分の中の、嫌な気持ちを心の奥に押し込んで、

家族の前では、無理に笑顔を作ってたの‥。




私の母が、そうだった様に

それが、主婦の務めだと思ってた‥。



私は、今の時代には、古い考えの女なんだろうな…。



家族が寝静まった後で、

只々、ぼんやり考える時間が、増えていったわ‥。



街で、仲睦まじく買い物している夫婦を見ると、

羨ましく思えてならなかった…。




そんな時、


とりあえず登録だけしてって、頼まれて


仲の良いママ友の一人から、サイトを紹介されたの。




私には、無関係な事と

登録して3カ月は、

すっかり忘れていたわ。



何時ものように、

自分勝手な旦那に、無理に求められて


イヤな時間をやり過ごした後、


やり切れない気持ちを、紛らわすように、


携帯を開いて、サイトにアクセスしてたの‥。




初めての経験で、

掲示板を、見ても何の事か解らなかった…。




何回かサイトを開くうちに、

何となく出会い系の概要が解って来て…。



それと同時に、サイトの楽しさも覚えていったの…。



パートから帰って来て、

娘が学校から帰って来るまでの一人の時間には、

サイトを開くのが、

日課になっていたわ‥。


自分から、書き込みをする勇気なんて無い私は、

中でも、好感が持てたあの人の書き込みに、メールを送ってみたの。



初めてで、怖かったけど、

どうせ返信なんて、来ないだろうな位の気持ちだったわ‥。




それまで旦那以外の男性とは、

殆どメールなんかした事無かったし…。



自分から、初めて知らない男性にメールするのは、

不安と期待が、半々に入り混じっていたのを覚えているわ。




メールしてから、3時間後に、あの人からの返信メールが届いたの。



緊張とか、下心とか

私に不安感を、全く感じさせないメールのやり取りは、

自然と何日か続いたわ。



遊び慣れて居るのか、

それとも、地なのか、


あの人とのメールは、

楽しいだけじゃ無く、

心強く私を、励ましてくれたり、

媚びる事無く、時には人としての私の至らないところを、

叱ってくれたり…。




落ち着いた大人な感じの素敵な上司、

そんな印象だったわ‥。



そんな彼に、惹かれて行く自分が、嬉しかったし、


初恋とまでは、いかなくても

それに似た気持ちになっていた事は、確かだったわ‥。



自分の実年齢よりも、

10歳位は、若くなった様な錯覚に陥ってたわ…。



世間的には、アウトな出会い系でも、

自分の気持ちが、弾んで行くのが楽しくて…。




私だけじゃ無い、

楽しい事は誰でも夢中になる、

自分自身で、そんな言い訳をして、罪悪感を誤魔化していたわ…。




家族にも、誰にも知られず

知らない異性との、メールを楽しむスリルは、

いつしか、罪悪感のかけらすら感じ無くなる程に、

私をサイトの中に引きずり込んでいたわ…。




何日かメールのやり取りをして、

あの人の写メと私の写メを交換したの。



想像以上に、ハンサムで、いやらしさは感じ無かったわ。


向こうも、私の事をタイプだって言ってくれたわ。


少し距離が近くなった気がして、

もしかしたら、いけない関係に…。

なんて事も、考え始めていたわ。




あの人から、会う誘いを持ち掛けられたのは、


メールのやり取りを始めてから、二週間くらいたった頃だと思ったわ‥。








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