終編
第2章クライマックス
誰もが「好き」と言うが、それは本心なのだろうか?
軽く口に出して誰かに幸せを与えるのは、許されるのだろうか?
少なくとも、「僕」は軽い気持ちで言ったことはない
理解されなくとも、毎回全力投球だ
君はいつ気づくかな?
気づく前に居なくなるのかな?
気持ちが昂ぶって、行動が決められる
季節はもう。冬に近づいている・・・
渡された書物には挿絵の様な物と、英語とも古語とも違う何かが書かれていた
寝「何語なの?これ」
タマモの方に向けて本を開いてみせるが、タマモですら首を傾げている
「こうすれば読めますよ」そう言うと、ネコの額に指で何かを書く
今の今まで読めなかった内容がスッと頭に入ってくる
寝「魂を導く者、死者の手を取り先へと促す。行き先を示すは額の光玉、輝けば彼岸へくすめば黄泉へ」
ヤムが水流を飛ばすのをやめた。痙攣している
ス「続けてください」スラオシャはページを捲るよう促す
頭に音が木霊していた。音楽でも聞いているかのように音は続く
寝「導かれしモノよ、汝が証を我らに晒せ!汝が罪をここに示せ!」
友人にとり憑いていたヤムが剥がれていく
ズルッ 首と頭の境目辺りの窪みから、触手の様なモノが抜け落ちた
玉「何かに寄生しとらんと攻撃もできぬようじゃのぅ」
ヤムはだんだん萎んでいく 最終的に海で見かけるようなサイズに収まった
寝「お前、スラオシャだっけ?凄いな…」
ネコは本を閉じると、スラオシャに渡す
ス「今日は玉藻に頼まれたから来ただけですよ」
寝「へ?」
そう言い残すと、スラオシャは霞の様に消えて無くなった
玉「あれは忙しいからのぅ、戦いに駆り出せば仕事が追いつかなくなる
そうなれば均衡を保てなくなる」
タマモは天を仰ぎ見て、ため息混じりに言った
友人の元に駆け寄ると、首にキズはなくただ寝ている様だった
寝「ふぅ。よかった・・・」
玉「それにしても薄汚れてしまったな」
上着が土にまみれている
始めの攻撃を避けた時に付いてしまったようだ
手で払うが、思うように落ちない
寝「まぁいいか。タマモ、アレは何だったんだ?戦いってのはなんだ?」
ネコはタマモの顔を覗き込むようにして問いかける
玉「話すのは後じゃ、持ち主が戻ってくるじゃろうから渡してやるといい
『肌身離さず持っておくように』と言い添えての」
またネコを咥えて下に降りる。
あれだけの事があったというのに、店からも近隣の住宅からも人が出てきていない
数分後、店の前に一人の少年が現れた
バイトの夢橋君だった。俺の服装を見て驚いた様子だったが、
鍵を渡されるともっと驚いた顔をした。
ネコは「面白いものが見られた」と、ほくそ笑んでその場を後にした
真昼間の森の中に私は居た
淡緑色の湖の見える丘にベンチがある 私はソコに座っている
(またこの夢なの・・・?)
「ねぇ?」
後ろから声を掛けられた
(誰?)
振り返ると、男が立っていた
「霜月さん。だよね?僕は・・・」
テレビの砂嵐のような音がして、そこから先は聞き取れなかった
瞼が重くなってきた・・・
(誰なの?せめて特徴だけでも・・・!)
目の前が真っ暗になる前のほんの一瞬だが、
男の肩に狐が乗っているのが見えた
「・・・んー」
目を開けると、もう朝だった
目覚ましが鳴る30分前に起きられるとは・・・
私も成長したのかなぁ~とウルアは、朝からご満悦である
潤「夢に出てきた人は誰なんだろ・・・狐・・・」
うーん。と考えてみるが、思い当たる人物は居なかった
潤「もふもふしてそうだったなぁ~」
ウルアは洗面台に行こうとするが、部屋を出たところで立ち止まる
昨日のことを思い出したのだ
鏡に映った血まみれの自分・・・後始末が大変だった
寝巻きは洗濯機に放り込んで終わったが、髪や顔に付いた「液体」は
シャワーで流しても中々落ちなかった
3回もシャンプーを使ったのは、今でも勿体ないと後悔している
潤「それにしても昨日は色んなことあったなぁ~」
思い出してみても不思議な人達だった
今日も雑談喫茶は大盛況!
でも少しは客足が遠のいてくれた方が、こっちとしては嬉しかったりww
「ウルアー3番の出来たー」
厨房から店長の声がする
潤「はーい!」
出来たての料理を、冷めないうちに且つ零さないよう慎重に運ぶ
潤「お待たせいたしましたー!ハヤシライスとエビグラタンになります。
ご注文は以上でよろしかったでしょうか?はい。それではごゆっくりどうぞ♪」
営業スマイルもお手の物、今日もいい笑顔を作れている。と自分では思う
樽「ウルア、8テーの水と2テーのコーヒーのオカワリ聞いてきて」
タルが両腕に食器を乗せたまま叫び気味に言う
潤「はいはーい」
(8番と2番、8番と2番・・・)
忘れないように呟きながら各テーブルに向かう
作業を終えてホールに戻ると、タルが5番テーブルでお客様と話し込んでいる
(ハヤテに言いつけちゃおうかな)
そんなことを考えていると、当の本人から
「ウルアー!ちょっと来てくれ~」とタルからお呼びがかかる
潤「あ、はーい!」
5番テーブルに行くと、ウチの制服を着た男女が居た
樽「この子ですけど」
潤「はい?」
状況が掴めないまま、ポンッと前に出された
「猫耳メイド服じゃないじゃん!!!」
女性の方に突っ込まれた
潤「え?・・・あぁ!アレはチラシ用に撮っただけなのでw」
心底がっかりしたようで、女性は頭を抱えている
「仕事中にゴメンネ。俺達は2年の夢橋と嶋邨って言うんだ、よろしく」
男性が自己紹介をしてくれた。私もしなきゃ
潤「あ、ワタシは・・・」
言いかけたところで、タル君が遮る
樽「本題に入ってください。僕等、これでも仕事中なので」
女性が、はぁーと深いため息をついた
海「・・・まぁいいか。ねぇ?ウルちゃん!」
叶「ウルちゃん?」
潤「へ?」
海「好きな人いる!?むしろ、今付き合ってる人居る!?好きな食べ物は!?理想のデートコースは!?」
矢継ぎ早に質問が飛んでくる
潤「ふぇ!?え、えぇっとぉ~」
たじろいでる私をよそに、嶋邨さんは身を乗り出している
樽「ちょっとアンタ!さっきと聴いてることがっ・・・!」
叶「はぁ。やっぱこうなるのか・・・」
今度は夢橋さんが頭を抱えている
樽「こうなるのか~じゃないでしょ!どうにかしてくださいよアレを!」
嶋邨さんはもう目の前まで来ていた 予想以上に素早い動きだ
海「あぁ~アタシはカイト!「カイちゃん」か「カイ先輩」か「カイ姉」でいいから!」
スッと後ろに回り込まれ、カイトさんの息が耳にかかる
海「要らないモン憑けてるね~、今回は初めましてサービスで無料でとったげる♪」
潤「え?」
カイトさんが皆に聞こえないような声で、「食ってよし」と言うと
窓の空いていない店内に突風が吹き付ける
樽「うおっ!なんだ」
叶「風つよっ!」
樽「ツッコミどころソコじゃないでしょ!」
叶「エアコンの風・・・」
樽「違うっつってんでしょ!?バカなんですか?アナタ!」
いつの間にかカイトがウルアから離れた位置に立っていた
海「ふーん・・・ランダかぁ、バロンが見逃さないわけだね♪
もうこれで変な夢は見ないと思うよ?まぁ、何かあったら気軽に言ってね~」
そう言うとカイトはサッサと喫茶を後にした
叶「ったくアイツは・・・って、俺が払うのか!?」
なんてことがあったけど、変な夢を見なくなったのはあれのおかげなのかな?
でも、相変わらず男の人は出てきたし。。。
狐と一緒にいたってことは、北海道出身??
「・・・月!霜月!」
潤「え!?」
「呆けた顔してどうしたんだ?授業終わるぞ?」
どうやら考え事をしている間に授業が終わったらしい
潤「あ・・・スミマセン」
「謝らなくてもいいから、お前の隣を起こせ。授業が終われん」
どうやらトッキーも寝ていたようだ
揺さぶってみるが・・・起きない
潤「トッキー!号令!」
「お!?きりーつ、れーい、ありがとうございましたー、おやすみー」
「はいはいオヤスミ。鴇祥ー黒板消しとけよー?」
トッキーは突っ伏したまま手を振っている
そんなトッキーを見て、ヤレヤレといった感じで先生は教室を後にする
彼女は、『鴇祥 悠』クラス1の怠け者であり、ムードメーカー
授業中は殆ど寝てるし、起きてる時はずっと喋ってる
それでもテストの時は、平均ソコソコを取れるのだから大したモノだ
悠「うー眠いよー。ウルアーアタシを保健室まで連れてってー」
潤「自分で行きなさい!」
悠「エー、ウルア冷たーい」
ハルカは立ち上がると、ウルアの席の横にしゃがんだ
悠「ねぇ、ウルアって好きな人居る~?」
またこの質問か。。。何でそんなに聞かれるのか不思議でしょうがない
潤「え?・・・トッキーはどうなの?」
よし!上手くはぐらかせた
悠「アタシ?ふふふ…アタシはね、恋をしたァッツァ!」
勢いよく立ち上がり、勢いよくまたしゃがむ
立ち上がる際に膝を机の角にぶつけたのだ
潤「えぇ!?だ、大丈夫!?」
膝を抱えて唸っている、近くに居た男子生徒は飲んでいた麦茶を吹き出した
悠「だー痛ッいけど、だ、大丈夫!」
涙目で訴えられても説得力の欠片もない
潤「それで~?誰なの!?私の知ってる人!?」
トッキーに好きな人が出来たとは、とても驚きだ
それなりに人気のあるトッキーは、入学当初は告白ラッシュが凄かった
下駄箱にはラブレターと脅迫状がごっちゃになり、
教室には先輩が集っていた
ウチの店長も一度見に来たが、トッキーを一目見て
「興味が失せた」と言い、すぐ帰っていった
タイプじゃなかったってことなのかなぁ?
トッキーはと言うと、「男子生徒には申し訳ないんだけど、アタシ男に興味無いから♪」
そう言い放ち 教室を…いや、校内を凍りつかせた
本人曰く、面倒だから言ってやった。後悔はしていない。とのこと
悠「えーっとね。知ってるのかな?分かんないや、名前も分かんないんだけどー」
ガラっ
教室のドアが開いた
樽「ウルアー居るかー?」
アーーーーーーーーーーーーッ!!!
トッキーの叫び声が校内に響いた
吹き出した麦茶を掃除して、ミルクティーを飲んでいた男子生徒が吹き出した
「ゲホッゴホッ…鴇祥!てめ…ゴホッいい加減にしやがれ!」
ゲームセンターTBN:プリクラコーナー
女の子で賑わうプリクラコーナーだが
古い機種は人気が低い物も少なくない
落書きのできないその機種の前に、小学生くらいの女の子が一人
ソコに、少女が駆けてくる
「渡してきたよー」
「遅いじゃない、何か言ってた?」
「何もー」
「そう。じゃあ、接触はされてない訳ね…」
小学生は腕を組み、唸った
「ねぇねぇ!」
高校生くらいの女の子が服を引っ張る
「なに?」
「撮りましょうよ!プ リ ク ラ☆」
「…いいわ。撮りましょう、ただし!一回だけよ?」
「はぁーい♪」
DS猫丸:事務所
叶「あのー」
カナトは、意を決して聞いてみることにした
寝「ん?」
叶「いつも肩に乗ってるその狐は、一体なんなんですか?」
寝「あぁ、コイツ?こいつはねぇ…」
同DS猫丸:店内
颯「オ!?バイト募集してんじゃん!」
樽「何言ってんの?お前店長だろうが」
颯「いや~俺居なくても回るじゃん?多分」
樽「見切り発車はやめてくれます?w」
二人は精肉コーナーに居た「タイムセール実施中」と大きく表示されている
樽「なぁ?鍋に入れるのって何肉?」
半額のシールが貼ってある牛肉を手に、話し出す
颯「鶏とか豚でいいんじゃないの?」
タルが持った物を戻し、モモ肉をカゴに入れる
樽「牛肉…食いたくね?」
再び牛肉{霜降り}を手に取り、真顔でハヤテに言う
颯「肉だけの鍋になるぞ?」
樽「…やめよう。ウルアに殺される」
そっと肉を戻し、材料の書かれたメモを取り出す
颯「命は大事だネ☆」
明日から、11月になる
序章は終わった。戦いが始まるだろう…
市街:入り組んだ路地
羽根の生えた生物と、息を切らした高校生が言い合っている
彰「いいからサッサと倒せよ!」
屈みこんで、包丁を砥いでいるニスロク達を指差す
モ「てめぇな。。。口の聞き方に気をつけろよ!」
虹色の綺麗な羽から、甘い香りを出し色と模様を変化させながらモスマンも言う
彰「羽根の生えた変態が偉そうに言ってんじゃねぇよ!」
モ「あぁ!?これで戦うんだよ!これがなきゃテメェは死ぬんだぞ!?」
モスマンが羽をはばたかせると、宙に舞った鱗粉がニスロク達を包み込み
やがて、消えて無くなった
彰「スゲェ…」
アキラは呆然としていた。
モスマンがアキラの方を向いた
モ「お前も消してやろうか?」
羽をはばたかせアキラを引っつかむと、勢いよく空に飛び出した
彰「うおっ!何だ!?どうした!?」
モ「よく見ろアホンダラ!追ってが来てんだろうが!」
さっきまでアキラ達がいた場所に、見たこともない生物が集っていた
アキラはゾッとした。何にゾッとしたのかは分からないが、
横に視線を感じる…意を決してそっちを向いた
「コンニチワ~☆早速だけど君のクレスト貰うね♪」
龍の吐いた氷が、モスマンとアキラを襲う
次回からは、時間の概念が入ります。
もう少し、わかりやすくなる事と思いますが
もしかしたら引っ掻き回すだけで、終わるかもしれませんw
第3章に入る前に、人物プロフィールを投稿する予定です