上編
空は群青色、崖から見えるのは紅色の大地。 その大地には剣の様な物が突き刺さっている
漫画や小説にありそうな、そんな風景だ。 戦場、、、というか戦士の墓場の様な
(またこのユメ?)
崖下の方では、龍?と犬?が牽制しあっていた
(ここはどこなんだろう・・・)
ヒュッ 何かが顔の横を通り抜けていった 頬が切れて血が出ている
「私の陰にお下がりを!!」
(えっ)
頭を押さえつけられ、強制的に屈まされた
キィィィィィィン
耳鳴りがする!頭が・・・割れそうに痛む
(・・・あ゛!!) その場に倒れ込んでしまう
「上だ!ケツァルカトル!!」 そばに居た戦士風の男が叫ぶ
(なんでこの人は平気なんだろう・・・)
羽根の生えた蛇が天に向かって昇っていく
上空で何かと戦っている様だ
グオオォォォォォォォン!! ドスの効いた低音の鳴き声が木霊する
ドデカいカラスの様な生物が落ちてきた
(ここはどこなんだろう) いつの間にか耳鳴りは治まっていた
おそらく、あのカラスが何かしていたのだろう
周りを見回しハッとした
漫画・アニメ・ゲーム・小説で、
一度は見たこと聞いたこと想像したことがあるだろう怪物達がソコにいた
名前が分からないのが大多数ではあるが、
おおよその見当がつくのが少数いる。
二頭を持つ巨大な犬が歩み寄ってきた
「**よ、この場は我らに任せて頂きたい。貴方が居なくなっては、我らに自由は齎されません」
先ほどの戦士風の男が割り込んだ
「オルトロスよ。お前の言いたい事は分かるが、どうしようと言うのだ?
仲間は半数が囚われ、我々を襲ってくる。逃がせる場所などあろうものか」
(どういう事なんだろう?) 全く自体を把握できていない
話し合う間にも、幾多の断末魔・金属同士がぶつかる音が聞こえてくる
正直こんなところに居たくはない
「連れてきたぞぉ」 しゃがれた老婆の声がした
怪物達は道を開ける ソコには老婆と少年が立っていた
少年は見かけの割に落ち着いた様子で、「面倒だな。サッサと要件を言え」
そう言うと懐中時計を取り出した
「要件は1つだぁ、この**を*****の手ぇの届かない場所にぃ送ってくれぇ」
老婆はこっちを指し示し言った
「ふん。我らの希望になるとは思えないがな」
「・・・一族の『紋章』を賭けてもいい」
戦士風の男が、少年に何かを見せている
「ハッ!ジークフリート。貴様も地に堕ちたものだな。・・・まぁいい、やってやろう」
少年は少し笑って見せたが、また直ぐに無表情になる
「どうせなら別の世界に飛ばしてやろう。どうせそこでも戦いが起こるからな」
少年は懐中時計を開くと、こちらに向かって何かを唱え始めた
「時と空間のバランスを崩し、魂を導く者・・・」
(何処へ行けというの?)
「こちらの記憶はなくなるだろうが、我に会えば記憶は戻る」
瞼が重くなっていく・・・自分の身体が分解されるように消えてゆく
「クロノス!危ナイ!」
ズブッ
少年の心臓に剣が突き立てられた
ジークフリートはクロノスの後ろに剣を振るう
キィン! 「ハハハ!いい反応だな」
「くっ!オーカスか!」
「時の番人を使って**を飛ばそう等と!考えが甘いわッ!!」
オーカスは二本目の左手を生やすと、陣を敷いた
「しまった!」
周りの怪物達も動けないようだ
ジークフリートはオーカスの尾で吹き飛ばされる
「カハハ!これで**は、もうダメだな!」
オーカスの右腕が巨大な針に変化した
「希望は潰えるモノだ」
ヒュンッ ズブッ
(!?) 消えかかっていた身体に針が突き刺さる
身体から力が抜けていくのが分かる
「ひゃハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
オーカスは勝ち誇り、高笑いした
彼の足元にいたクロノスが煙の様に消える
(え!?)
「他の者には見えん。我と貴殿だけで時を超える」
(でも・・・力が抜けて・・・)
「傷が深い・・・長旅は無理のようだな・・・近場の世界へ飛ぶぞ!」
クロノスが身体に触れた途端、視界が真っ暗になった。
「む?何だ、逃げるのか?構わないがな、追いかけるまでだ!!」
「時の番人たる『クロノス』が命ずる!移転の陣よ、我らをここではない場所へ!遠くに!」
「私もついて行ってやろう!ひゃハハハハハハハハ!!!」
クロノス達が消えた直ぐ後、オーカスが移転の陣を敷く
「移転の陣よ!私を゛・・・」
言い終わる前に首が転げ落ちる オーカスの身体は枯れ草の様に朽ちていった
動けなかった怪物達が動き始める
首を切り落とした剣を、オルトロスが持ち主の元に運ぶ
「大したものだなお前は」
剣を投げたのは、ジークフリートだった
センドアルミナー八木:疾風学院高等部3階
夢橋 叶渡は携帯を片手に項垂れていた
昨日は散々だった・・・
結局バイトには遅刻してしまった
社員さんにはさんざん怒られ、パートさんに慰められ、酔っぱらいのお客に怒られ、
家に帰る途中でアーティファクト(以後AF)が無い事に気が付き、
店まで取りに戻ると社員さんが店の外にいて
寝「忘れ物はコレかな?」
AFを持っていて、服が少し汚れていた
「ソレ、肌身離さず持ってないと奪われちゃうよ~?」
と言い残して、社員さんは帰っていった
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『夢橋 叶渡』
疾風学院2年Sクラス 先日ディスカウントストア猫丸でのアルバイト契約が決まった
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叶「あの人は何してたんだろうなぁ」
服は汚れていたし、第一あの人は俺が帰る2時間前に退勤したはずだ
忘れ物を取りに来た・・・ってわけでもなさそうだしな
叶「謎は深まるばかりだなぁー」
思わず声に出してしまった
「カナくん?何呟いてんの?www」
叶「ん?あぁなんだ。嶋邨か」
「なんだってのは何さww」
コイツは『嶋邨 海都』俺の隣の席にいる
名前からして男だが、一応女だ。
男勝りにも程があるのがたまにキズ
髪はショートカットに下はスラックス派。かと思うだろ?
髪はロングのストレート、下はスカートしか履かない
予想を裏切るのが大好きな奴なんだ。仕方ない。
海「カイで良いって言ってんじゃんww」
俺の背中をバンバン叩く・・・いや、結構痛いんだよ?
海「あーそれはそうとカナくんさぁ」
何かを思い出したように言う こういう時は何かを頼まれることが多い
叶「セールス・勧誘はお断りしています」
嶋邨に向かって、両腕で×を作ってみせた
海「えぇ!?何ソレ!酷くない!?話だけでも聞いてよ!ってか聞けよゴラァ!!」
思いっきり机を叩く、クラスメイトもビビっている
叶「お前、それ絶対手痛めるって・・・」
俺はというと、コイツと知り合ってから約半年経つので
もう慣れてしまっている。慣れとは実に恐ろしい
半年前まではDQNとは縁がなかったのに
嶋邨と話すようになってから色々面倒なことに・・・
っと、それは今は関係ないな
海「まぁまぁ、聞きなよ旦那♪」
叶「なんだい姉さん?」
海「『雑談喫茶』あるじゃん?」
叶「あぁ、部営の喫茶店だろ?あれがどうかしたのか?」
嶋邨はブレザーのポケットからチラシを取り出してみせた
海「ココっ!この子見て!」
部員と思われる女の子が写っている。猫耳メイドとは・・・・
叶「嶋邨・・・やめとけ。お前はそんなキャラじゃないだろう?
いや、似合うとは思うけどな?客も自分も引くと思うぞ?」
海「アホかアンタは!ちっがうよ!着たいわけじゃないよ!」
叶「じゃ何なんだよ・・・?」
もう一度見てみるが、おかしな点は見受けられない
海「・・・可愛くない?ってか、ぶっちゃけ好みだわぁ~」
叶「‥‥‥‥‥‥‥」
あぁ・・・また悪い癖が出てやがるorz
ハァっ・・・ハァッ・・・
足が痛む・・・もうどれくらい走っているのだろうか・・・
身体が酸素と休息を欲しているが、休んでる暇はない
止まればすぐ追いつかれてしまう
「クソッタレ!」
闇雲に走りすぎたようだ。行き止まりに出てしまった
戻るしかないか・・・!!
「何処に」「逃げると」「言うのかね?」
後ろを振り返ると奴らがいた
「続」「橋」「彰」
彰「チィッ」 ガッ
彰「うおっ!?」何かに躓いて仰向けに倒れてしまった
「恐るな」「痛めつけてやろう」「美味そうだ」
後ろに下がろうとするが、奴らはすぐそこまで来ていた
手に何か当たった、小さなオルゴールだ
彰「ハッ!今日はついてねぇと思ってたが違うようだな!」
オルゴールの鍵穴にAFを挿し左に回す
彰「力を貸せ!モスマン!」
小さなオルゴールの中から白い煙が噴き出し、
それはやがて彰と同じくらいの蝶の羽が生えたヒトになった
「呼び出すのがオセェヨ」舌打ちをした
どうやら相性は最悪のようだ・・・
目が覚めると私は家に居た
「はぁ・・・良かった~。アレは夢だったんだ」
トッキーの首が切り落とされるのも、その首が這いよってきたのも
全部夢だったんだ・・・!
「寝汗が酷いなー、シャワー浴びよっと」
それにしてもひどい夢だった、あんな気持ち悪いモノは二度とゴメンだ
とりあえず顔洗おう
洗面台に向かう、視界の端に何かが入った
「えっ」
もう一度見に行く 何もない
一瞬血まみれの女の子が立っているように見えた
「あんな夢のせいだ!」
さっさと顔を洗ってしまおう。
「えっ・・・きゃあああああああああああああああああああああああああああああ」
洗面台の鏡を見て悲鳴をあげてしまった
血まみれの女の子は「私」の事だった
海「次はアタシが活躍しまっす☆」
叶「ウィンクはやめてくれ」