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Master Key  作者: 三日月
第1章「闘証」
3/38

中編

聞こえますか? 聞いてくれてますか? 僕は此処に居るよ?


どうしてそっちに行くの? そっちに僕は居ないのに・・・


ねぇ? 君にはどう見える? 僕の周りは暗い?明るい?


見る人によって変わるんだ なんでも同じさ



=====「闘証(アーティファクト)」中編======


いい具合の昼下がり、スーパーから高校生が出てくる

竜巻の様な校章、稲妻の様なデザイン 疾風学院の生徒だ

男子生徒は両手に袋を下げている

人参が突き出ている・・・どんな入れ方をしたのだろうか

男子生徒の数歩先に、女子生徒が居る

二人は、何かの材料を買った帰りのようだ

重そうに荷物を運ぶ男子生徒が、「休ませろ」と言っている

女子生徒は「仕方ないなぁ~」と言いつつも、どこか楽しそうである

 「ん~・・・じゃ、あそこの公園ね」



樽「アーティ・・・アーティフェイト?」

潤「闘証(アーティファクト)

潤曖は、どうだ!と言わんばかりの顔をしている

樽「そう!それだ!」

樽はポケットからくすんだ黄金色の鍵を取り出した

(どう見てもコレ・・・チャリ鍵だよなぁー・・・

犬の形を模した薄緑色の鈴が付いている

樽はソレをちゃりちゃり鳴らしながら、(チャリで鬼ごっこでもすんのか?いや・・・アブねぇよな

潤「タル君のは・・・自転車の鍵? 変なのーwww」

笑い出した拍子に、潤曖は持っていたアーティファクトを落とした

樽「・・・ウルアのはどんなんだ?」

樽はソレを拾うと、首をかしげた

潤「それさー何の鍵か分かるー?」

樽「えーっと・・・車かな?」

家の車の鍵がこんな感じだった気がする

そう言うと、樽は鍵を潤曖に渡した

樽「ダメだ!疲れた!俺仮眠取るわー」

公園の芝生にゴロンと寝転がる

潤「え、えー!?ダメだよ!!ハヤテ待ってるんだよ!?」

寝転がった樽の横に立ちはだかる潤曖

樽「ハヤテなら大丈夫だろ~俺より年下なのに店長だし、学年一緒だし。あ、ウルアもか」

目を開けようとして止めた。この位置はマズイ

樽「ウルアー、立つならせめて足の方に行ってくんない?」

潤「??え?なんで?」

樽「何でって・・・見えそうだから」

気怠そうに右手で目を覆う

潤「見えそう?・・・!!!!」

潤曖はスカートを抑えてバッと飛び退いた

潤「タル君の変態!ロリコン!」

樽「もう何でもいいです・・・とにかく眠いんです。眠らせてくださ~い」

連日、雑談喫茶に入り浸っているだけだというのに樽は目の下にクマが出来ていた

潤「しょうがないなー!ちょっとだけだよ?すぐ起きてよ?」

疲れきった様子の樽に、渋々了承する

(15分位で起きるよね

樽「はいはい」

瞼が重い。体も重い。荷物のせいか?

いや、あれぐらいでこんなに疲れるはずないだろ・・・

樽の意識は、ゆっくりと闇に飲まれていった・・・。

===========================

~~~~~~【ディスカウントストア猫丸】~~~~~~~

===========================

遅い・・・10分前には店に居ろと言っておいたというのに

何故来ない!?

緑色の生地に、可愛らしい猫の刺繍の入ったエプロンを身につけた男が

お店の裏口で時計を気にしている

 「ネコさーん。まだ来ないんですか?新人君」

同様の姿をしている女性が事務所のドアから顔を出している

男の名前は、『月見里(やまなし) 寝狐(ねこ)

珍しい苗字と珍しい名前、よく言われる。

名づけ親は母方の祖父であり、「この子はよく寝る」「お狐様の様だ」

との事で両親の猛反対にもめげず、役所に出してしまった

初めて会う人には、「狐なの?猫なの?」「ご両親がヤンキーとか?」

などと、酷い言われようである

彼は小さい頃に妙な体験をしている。その頃から、自分の名前が気に入っているらしい

寝「こなーい!後10分で来ると思う?w(面接の時とえらい違いだなおい・・・」

バイトの面接は社員であるネコが行うことになっている

あれは、一週間前の事・・・



寝「ハイ。それでは面接を始めます。」

 「よろしくお願いします」

面接に来たのは高校生、短髪、背は高め、中肉

雨が降っていたからなのか、寝癖を隠すためなのか、ニット帽をかぶっていた

寝「うちの店、出退勤時間には厳しいんですが其の辺大丈夫ですか?」

 「はい。学校終わりでも大丈夫でしたら、問題無いと思います」

寝「高校生か。家からの距離を考えると9時半上がりになりますね」

 「自転車で急げば15分ですよ?」

寝「事故を起こされても困るので、安全運転でお願いします」

 「そうですよね、アハハ…」

寝「何か質問等ありますか?無ければ、面接は終了になりますが」

 「募集要項に、☆霊感無い人大歓迎☆ってあったんですけど…」

寝「ほぅ。☆の間を読めたのか…」

猫はエアコンの電源を切った

ピッ ウィー パタン

 「???」

高校生がエアコンの方を向く

ピピッ ウィーン

 「えっ」

高校生が猫の方を向くが、猫はリモコンに触れていなかった

 「…全自動、ですか?」

寝「(ヾノ・∀・`)ナイナイ」

しばし固まっていたが、二度深呼吸をすると 

 「…帰るときに勝手に点いたら、電気代ヤバそうですね」

和やかな雰囲気の中、面接は終わった

寝「では、三日以内に合否の連絡を致しますので」

 「ハイ。ありがとうございました」

高校生が椅子から立ち上がり、猫の顔をチラッと見た

 「あの…」

何かを言いかけて、「何でもないです」と言って事務所を出て行った

 「だいじょぶです!待ち合わせとか遅れたことないんで!」

彼が出て行った後、パートさんが入ってきた

 「大丈夫ですか?独り言いってましたよ?彼」

寝「彼は採用します。(読める・見える・聞こえる 三つ揃うのは珍しい

  新人君用のエプロン・マニュアル・ネームプレートの準備をお願いします」

 「ハイハイ。で、彼の名前は?」

履歴書をパートさんに渡して店内に出る

寝「夢橋(ユメハシ) 叶渡(カナト)




 「これで終わりだ。」

市街の路地裏 

昼間の賑やかさの影で、不気味な程に薄暗さが際立つ場所

右手を振りかざす者が居る

 「!!!!!!」

その者の目の前に居る「何か」は、既に死にかけだった

首だけが這いずり、逃げようとしている

 「逃すと思うか!!」

右手から青白い光が溢れ出す 光は、一瞬何かの紋章の様な形になると

直ぐに消え、代わりに動物の形になった

犬と猫のハイブリッド体の様な出で立ちをしている

身体からは眩い光が放たれている

 「ーーーーーーー!!」動物が一声鳴くと、首に向けて雷が落ちた

衝撃は凄まじく、男がかぶっていたニット帽は後ろに飛ばされ

雷の落ちた首は黒焦げになり、目視できる程に帯電していた

 「・・・手間の掛かる奴だったな。ご苦労さん、あと回収頼む」

ニット帽を拾い上げ、何かの回収を促すと 何処かの店の裏口の前に立つ

ガッ!

動物は黒焦げになった首を踏みつけた

グシャ

完全に焼けたソレには、水分が一滴も残っていないようだった

カシャン

何かが弾き出された・・・「鍵」だ

動物はソレを加えると、ニット帽の男の元へと駆けていった

 「これが堕ちた紋章(クレスト)か」

男の手にクレストが触れると、建物の上部からカラスが降りてくる

 「へぇ、もう手に入れちゃったんだ?ハハッはっやいねぇ~」

 「どうすんだコレ?」

羽繕いをするように、カラスは自分の羽をつつきながら答える

 「君のアーティファクトに重ねるのさ。

  あー、雷獣(らいじゅう)を還さないとできないからね?」

 「なるほどね。んじゃまたな、雷獣!」

男はドアに刺さっていた鍵を右に捻る

カチャ

 「次はもっと楽しめるヤツを相手にしてよ」

言うと同時に、雷獣は消えて無くなっていた

男は、鍵を引き抜くと先ほど手に入れたクレストを鍵に重ねてみた

鍵とクレストは青白く輝き始めた

光の中から文字盤のような物が現れた

 「よっ・・・と」カラスが男の肩にとまった

 「ダグが承認する!」

カラスがそう叫ぶと、クレストは鍵に溶けるようにして消えていった

 「これでOKだ。お疲れカナちゃん」

 「その呼び方はやめいw」

男は苦笑いでカラスを見つめた

 「今のは地霊(ちれい)だったから、効果も大したことないけどね~」

ピピピッピピピッピピピッ

男のはめていた腕時計から電子音が出ている

 「しまった!!」

男は路地裏を猛ダッシュで抜け出すと、スーパーの方へ走っていった



マズイ!すっごくマズイ!クビになるかもしれない!

「他人の首の始末してたから遅刻しました」

なんて言えるわけがない!

『待ち合わせとか遅れたことない』とか言わなきゃよかった

折角決まったバイトをこんな事でパァにしてたまるかっ!!


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