第四戦~初日、戦闘・後編~
颯雲VS織田さんと、寮での話です。
「さて、次は織田さんか…」
そう思いながら織田さんを見ると、織田さんは口許を吊り上げ笑っていた。
(このクラス、戦闘狂率高くない?半分くらい戦闘狂って…。まぁ、俺も人の事は言えんのだが…)
そう考えてると、教師の声が聞こえてきた。
「さぁ、次のヤツ。黒鉄、風魔、織田、武田、本多、服部。出てこい」
(全く…俺には、クラスメイトの実力を見極める事は許されないのか…)
そう心の中で考えつつ、俺は織田さんに向き返る。
「黒鉄。お前が戦った後であろうとも、私は手加減などはせんぞ?」
「上等!これで織田さんが手加減しようものなら、俺は君に失望するところだ。…全力で来い!」
そう言った瞬間、織田さんが何処から出したのか刀を取り出す。
その刀も美鈴同様、見た事がある刀で、実休光忠だった。
(おいおい、マジかよ…。織田信長が所有してた刀とは……)
「なら、行くぞ!」
そう言った瞬間、武器強化を用いて強化した実休光忠を俺目掛けて振るってくる。
「しかし、甘いぞぉぉぉ!!」
そう言って肉体強化を使い、実休光忠を素手で受け止める。
「やはり受け止めるのか!しかし、甘いのはそちらだ!」
その瞬間、織田さんが外的付与を発動し、力が更に強くなる。
(チッ!?コレは…)
俺は咄嗟に織田さんの手元にサマーソルトを放ち、距離を取る。
「織田さん。やるね」
「ありがとう。じゃあ、こんなのは…どうかしら!」
そう言って、黒い気の弾を投げ付けてくる。
俺は流見を使い気の弾を避け、一気に距離を詰める。
「なっ!?けど!」
織田さんは気の弾を投げた事で、数秒の事後硬直があったが、直ぐに動き始めて切りつけてくる。
俺はそれを片手で往なし蹴りを放つが、織田さんは後ろに飛び退き回避した。
「まだまだまだぁぁぁ!!」
そのまま織田さんに縮地の要領で一気に距離を詰め、三段蹴りをし、更に追撃で本気で回転して踵落としを放つ。
織田さんは咄嗟に転がりなんとか避ける。
それと同時に、盛大な破砕音が鳴り響き、織田さんが先程までいた場所に、クレーターを作った。
「避けたか…」
「殺す気かぁ!?」
いや、仕合なのだから本気で行くのは当たり前だろ?
「だが、避けただろう?…それに、全力で戦らないと織田さんに失礼だろ?」
「確かにな…」
納得してくれた織田さんは、すぐさま攻撃を繰り出してきた。
織田さんの一撃は、真っ直ぐ横一文字に切り裂くようだったので、後ろにバク転をし、途中でバク転の動きを止め、腕を軸に回転し蹴りを放つ。
織田さんはそれを咄嗟に避け、言ってきた。
「奇っ怪な技を!」
そんなにおかしいかな?
前に一度、テレビで見た時に真似して覚えたんだけど。
あと、鉄○でもなんかドレッドっぽい人がしてたぞ?
「さて、今から少し違った戦い方をしようじゃないか……」
そう言い、俺は織田さんに突っ込み、変幻自在に流れるように連撃を放つ。
止まることが無い延々と続く攻撃に織田さんは防戦一方となる。
「ほらほらほらぁぁ!!攻撃が来てねぇぞ!」
「クッ!?攻撃が出来ん!」
しかし、コレはかなり身体に負担を与える戦い方だな……。
戦い方を戻すか。
俺は織田さんに肉体強化、外的付与、遠当ての気を外側に纏わせ、鋭い蹴りを放つ。
「なっ!?」
織田さんはなんとか、両手に外的付与を集中させ、ガード仕切ろうとするが、ガードしきれず、飛ばされた。
俺は、それと同時に縮地で距離を詰め、織田さんの体を掴み手刀を首筋に添える。
「俺の勝ちだ。織田さん」
「………負けたわ…」
織田さんは負けを認め、俯く。
「……けど、次こそは負けないわよ!」
どうやら、織田さんは負けず嫌いみたいだ。
「分かった。いつでも掛かってきな、織田さん?」
「勿論よ!それと、私の事は紗理奈と呼べば良いわ。貴方の事をほんの少しだけ認めたから」
ほんの少しだけ…ね。
まぁ、良いけど。
「分かった、紗理奈。俺は、颯雲とでも呼んでくれ」
と、挨拶を交わし周りを見ると、慶治が防戦一方となっていた。
「ほらほら、攻撃しないと勝てないよ!」
「チッ!」
本多さんも中々に強いみたいだ。
慶治の方は、防戦一方で手も足も出ない…と言う感じに見える。
……が、何処かしら女性相手だからという遠慮みたいなモノが感じられなくもなかった。
しかしこの後……、慶治の防戦一方の戦いが、本多さんのある言葉で崩される事となる。
「ほらほら、攻撃してみろよ天パ!」
プチンッ………。
そんな音が聞こえたかと思うと慶治が笑い出した。
「フハハハハハハ!………言いたいことはそれだけか?……ならば……死ね!「怒髪点」発動」
そう言った瞬間、慶治の姿が目の前から消え去り、その一瞬後に本多さんが地に伏せ、その更に一瞬後に本多さんの首筋に刀を添える慶治の姿が現れる。
「ブッ殺してやろうと思ったが、流石に女は殺らん。だから……今回だけは許してやろう」
慶治はそう言い、本多さんの手を取り立たせる。
(アレ…龍二だったら今頃殺されてそうだな…)
そう思っていると、教師が話し始めた。
「終わったみたいだなー」
ちなみに結果でいうと…
俺VS紗理奈=俺の勝ち
零那VS武田さん=武田さんの勝ち
慶治VS本多さん=慶治の勝ち
(零那負けたのか?武田さん一体どんだけ強いんだよ……)
「終わったし、今日はこれ迄だー。もう帰っても良いぜ?」
「はい?マジかよ…」
そんな感じで学校が終わり、俺は自らの寮へと足を進めた。
そして、寮へと着き……
「此処かー」
そう言って部屋を見てると、龍二が来た。
「ソウもこの部屋なのか?」
「あぁ、そうだ。お前もか?」
一応龍二に聞いておく。
正直違う方が面倒くさくなくて良いのだが……。
「勿論!ソウと同じ部屋かー!」
そう言って、バカみたいにはしゃいでるアホを視界に入れないようにしてると、向こう側から響夜と慶治が歩いてきた。
「なんだ?お前等も同室なのか?」
「そやでー。俺等も301号室やでー!」
「俺もだ…。さっさと風呂入りてぇ…」
慶治は汗をさっさと洗い流したいらしく、風呂に入りたいと、延々と呟いていた。
「まぁ、良い。じゃあさっさと風呂沸かすぞ…」
「ありがてぇ!颯雲、感謝するぜ!」
この後、俺は風呂の準備を行い、その後風呂に入った。
「あー、さっぱりしたぜ。ってか、お前らん中で料理出来るヤツいんのかよ?俺作れねぇぜ?」
「あー……。ワシも作れへんわー。颯に龍二はどうなんや?」
どうやら、二人とも作れんらしい。
「俺は勿論作れねぇぜ!」
そう言って威張るバカな龍二。
「マジかー…。颯はどうなんやー?」
「俺か?作れっけど?」
何だかんだで料理は得意だったりする。
実力は……直ぐに分かるだろう。
「マジで!?」
「あぁ、マジだよ。とりあえず、料理作るからちと待ってろや」
「「「おぅ!」」」
そうして、俺は料理を作り始めた。
そして、ちょうど夕飯の時間になった頃に料理を作り終え、料理を出す。
今回は、俺の気分と独断で和風な料理が並んでいる。
見た目からいうと、一体何処の懐石料理出す旅館だよ!?っていうくらいの素晴らしい見映えだ。
「「「おぉーー!!」」」
三人ともコレを見て、感嘆の声を上げていた。
「まぁ、良い。さっさと飯食うぞ。……いただきます」
「「「いただきます!」」」
そう言って、まず一口食べる三人。
「「「うまぁぁぁい!!」」」
「ッ!?うるさ……」
俺はあまりの大音量に耳を押さえた。
何故か、ダルそうにしていた慶治ですら目を見開き、叫んでいた。
「何や!?プロか!?プロやないんか!?」
「るせー…。得意なだけだよ…」
響夜の大音量に耳が痛くなりつつ答える。
「得意なだけでこんな上手いの作れるかぁぁぁぁ!!」
何故か慶治が叫んだ。
「どうしたんだよ慶治…。うるせーよ…」
「しかしコレを毎日食べられるんだから、役得すぎるな!」
「「ソレ同感!!」」
龍二が言った言葉の後に、二人が同意を示す。
「……けど、あわよくばこの料理を作ってくれるのが、女の子が良かった…」
「「ソレも同感……」」
そう言った瞬間二人は落ち込んだ。
まぁ、ずっと武道一辺倒だったんだし、其処らはしゃあねーだろうが。
「さっさと食え。そうせんと冷める…」
そう言ってると、扉が開く気配がした。
(飯時にどうしたんだ?…ソレに、チャイム鳴らさないのか?)
そう思いながら、玄関に行くと、本多さんがいた。
かなりげっそりして…。
「どうしたんですか、本多さん?」
「め、飯が食えないんだ…。上杉のヤツに殺される…」
(はい?良く意味が分からないんだが…)
「まぁ、良く意味が分からないんだが、部屋に案内してもらえないか?状況が把握できん」
「わ、分かった。着いてきてくれ…」
そう言う本田さんは僅かに震えていた。
部屋で一体何が…。
部屋に辿り着くと、其処には惨劇が広がっていた。
なんか良く分からない紫色の泡を立てている物体Xに、顔面蒼白で倒れている上杉さんに美鈴。
所々暴れたかのような傷跡がついた部屋……。
何が起きたんだ?
「本田さん、これは一体…」
「上杉の料理の腕前が殺人的だったんだ…。それで、食った上杉と伊達のヤツが……食った瞬間に、断末魔の叫び声をだして崩れ散ったんだ…」
なんて恐ろしい料理なんだ…。
怖すぎる…。
殺人兵器を料理という過程で生み出すとは…。
そう思ってると、美鈴がピクリと動いた。
「美鈴。生きているか?」
「な、なんとかな………」
伊達さんはまだ顔面蒼白だったが、なんとか喋る。
「はっ!?さっきまで花畑にいたのに!?」
上杉さんが起きると同時に、そう口にする。
(鍛えられた武人を死地へと誘うとは……恐るべし!上杉さんの料理!)
なんか三人とも、色々と可哀想だったので、助けることにした。
「どうだ?こっちで飯食うか?」
「「「良いのか!?」」」
そりゃ、こんな惨劇が広がってるのに助けないのは、人としてどうなのか?と思うワケなんだよ。
「勿論だ。ただし、少しだけ時間がかかるが良いか?」
「勿論良いに決まってる!」
そうして俺達は部屋に戻り、すぐさまに俺は料理を作りにかかる。
そうして少し経ち、料理を作り終えたので女性三人に振る舞う。
「口に合えば良いのだが…。召し上がれ」
「「「いただきます!!」」」
俺も飯を食い終わってないので、飯を食べることにした。
「う、うまぁぁい!!」
上杉さんが叫ぶ。
お前は、慶治と同じ反応をするのか?
まぁ、良いが……。
「せやろ!颯の料理かなり美味しいよな?」
「美味い!美味すぎる!」
美味すぎるってなんだよ…。
「武道も出来て、料理も出来るなんてどれだけ器用なんだ、颯雲」
「いや、美鈴も頑張れば出来る事だよ?どうだ?この際、料理でも覚えてみるのはどうだ?」
このままじゃ、毎日臨死体験する事になるしな?
「それも良いかもしれんな…」
そうこう言ってる間に飯を食い終わる。
「じゃあ、今度教えてやるよ。ってか、明日はどうするんだ?」
「明日……も、飯を食わしてくれないか?」
美鈴がそう聞いてくるが、正直答えは決まっている。
「勿論良いに決まってるさ。全然飯食いに来てくれて構わねぇぜ」
「ありがとう、颯雲!恩に切る!」
「気にするなよ。俺が勝手にしたいだけだからな」
そんな感じで、初日は終わったのだった…。