【番外編】婚約破棄は多数決で決めましょう
『婚約破棄は多数決で決めましょう』の番外編です。
ソゼ男爵令息とミルク男爵令嬢のその後になります。
『婚約破棄は多数決で決めましょう』を先に読まないとわかりにくです。
※後書きで、ソゼ男爵令息とミルク男爵令嬢の婚約は解消となってましたが・・・。無かったことにしてください。すいません。
「すいません。もう一度、今、なんて言いました?」
「あなたの婚約者、ミルク・ビネガー男爵令嬢は、我が国の第一王子シュガー・ジャコビー殿下の恋人です。次の舞踏会で、婚約破棄、新たな婚約宣言をする予定です」
ペッパー侯爵家から来たという、ロマンスグレーの落ち着いた雰囲気の男性が言った。
ガタガタガタ、バタン。
「ビネガー男爵!誰か、水を持ってきてくれ」
俺は、ソゼ・カイザー男爵令息。カイザー男爵家の3男だ。
3年前、カイザー男爵家に、ビネガー男爵家から婚約の申し入れがあった。
相手は俺より3つ年下。ミルク・ビネガー男爵令嬢。来年王都の学園に入学予定。
ふわふわのピンクの髪に、茶色い目、幼さの残る笑顔に似合わす、胸が大きい女の子だった。
ビネガー家で行われた顔合わせで、可愛い笑顔と大きい胸に、心撃ち抜かれた俺は、二つ返事で婚約を了承。今までの努力が報われた気がした。
どこの家もそうだが、男爵家3男以下は、文官になるか、騎士になるか、平民になるかの3択しかない。
俺は、顔も剣の腕も平凡。ただ、計算だけは誰にも負けなかった。
学園在職中、勉強に励み、学年順位20位以内をキープ。辺境伯の文官試験を受け見事合格。来年の春から、働く予定だったが変更し、卒業前から、ビネガー男爵領へ赴いた。
ビネガー男爵より領の管理を教わりながら、ミルク男爵令嬢と、入学前の3か月ほど交流を持った。
ミルク男爵令嬢を一言で言えば、最近の子。
ファッションと、流行りの喫茶店に目がなく、ほとんど外出している。
貰っているお小遣い以上のお金を使うが、1人娘に甘いビネガー男爵は、軽く叱るのみ。
結婚後は、俺がしっかり財布の紐を握る予定だ。
このまま、ミルク男爵令嬢と結婚すれは、男爵になれる。しかも、嫁が可愛いので、俺の人生は順風満帆だと思っていた。
「すいません。もう一度、今、なんて言いました?」
「あなたには、舞踏会へ出席してきただき、ミルク・ビネガー男爵令嬢の婚約者として、多数決で婚約破棄を決定するよう意義を申し立てて下さい」
カタカタカタカタ
「ビネガー男爵!汗と震えが尋常じゃい。誰か!ビネガー男爵を寝室へおつれして」
「信じられません。シュガー王子の婚約者はペッパー侯爵家の娘ですよね、この国で一番大きい派閥の長ですよね。何故、舞踏会で婚約破棄、新しく婚約宣言がされるとお考えですか。」
「今のままでは、シュガー王子は王の器ではない。だから、シュガー王子が婚約破棄、新たな婚約宣言するよう、こちらで誘導しています」
ロマンスグレーの男性は、背筋を伸ばして話す。
「ソゼ・カイザー男爵令息。あなたには2つの選択肢があります。
1つは、このまま、ミルク・ビネガー男爵令嬢と結婚し、男爵となる事。
もう1つは、婚約破棄し、王城で文官として働く事。
あなたの選択を尊重して我々は動きます。
今、返事を頂けますか?」
◇◇◇
どうしても信じられない。直接会う機会は少なかったが、手紙のやりとりは頻回に行っていた。
最近は手紙の回数も減っていたが・・・。色仕掛けで、恋愛するタイプには思えない。
ミルク男爵令嬢に直接会って話をすべきだ。
俺はペッパー侯爵家に協力を願って、ミルク男爵令嬢が訪れるカフェへ先回りした。
「やあ、久しぶりだね、ミルク男爵令嬢。ここの席いいかな」
「誰?ん。あ~。私の婚約者だった人。何、なんの用。これから友達と遊びに行くんだけど、大した用じゃなければ、帰ってくれない」
「大した用だよ。ねえ、君、舞踏会で婚約破棄しようとしてる?止めといたほうがいいよ」
「何で知ってるの。あなたには関係ないでしょ。私の事はほおっておいて・・・・。
あなたは、新しい道を進んだ方がいいわ」
泣きそうな顔のミルク男爵令嬢は、席を立ち、店を出て行った。
◇◇◇
舞踏会当日。
シュガー王子による婚約破棄、新たな婚約宣言がなされた。
俺は、約束通り、重複婚約だと意義申し立てをして、多数決での判決を希望した。
転移石を使用し、多数決会場となる場所へ移動。
そこでは、村民の言葉を受け、ソルート侯爵令嬢は、シュガー王子にパンツ一丁で謝罪を要求。
今、シュガー王子は1人、村長宅前の広場で反省している。
村長宅裏庭、お茶会会場。
楽団が奏でる、おだやかな音楽を聴きながら、甘いクッキーと、ほろ苦い紅茶で舌鼓。
「うまく、いったな」
「ああ、一時はどうなるかと思ったがな。お前、”かーちゃんに内緒でガールズバーに行った”のセリフ。間違えて、母-ちゃんて言っただろ、マジ冷や汗出た」
「俺も焦った。勢いで押し切ったが、突っ込まれたらヤバかったぜ」
「私達はうまくやったわ、謝っていない事も、浮気している事も突き詰められたもの。そのおかげで、王子はパンツ一丁で反省中よ」
「あなたも、よくやったわ。名女優になれるわよ」
村人の姿をした女性が、ミルク男爵令嬢の肩に手を置いた。
「・・・・はい」
ミルク男爵令嬢は、うつむき加減で、浮かない顔だ。
「え!どういう事?演技だったの、どこから演技?」
◇◇◇
審議会議長
「多数決の結果。ソゼ・カイザー男爵令息とミルク・ビネガー男爵令嬢の婚約破棄は・・・・・
『破棄は無効』となりました婚約は継続となります」
「泣いてるの?」
俺の横で、肩をふるわせ、うつむいているミルク男爵令嬢
「グスン、泣いてなんかないわよ」
俺は、肩をよせ、小さい声で尋ねた。
「ねえ、聞かせて、どこからがソルート侯爵令嬢の計画だったの?」
俺の目を真っ直ぐ見て、涙を流しながら笑顔で答えた、
「全部よ」
ミルク男爵令嬢は、王都の学園に入学後、煌びやかな都会の生徒に憧れて、化粧やドレスや、装飾品、エステなど、湯水のようにお金を使い、多額の借金をしてしまいました。
借金はすべてソルート侯爵令嬢が肩代わりする代わりに、今回の計画の実行犯に。
シュガー王子の婚約破棄騒動後は、ビネガー男爵領も彼女自身もお咎めなし。
社交界での風当たりは強いし、今後良い縁談は望めないが、ビネガー男爵令嬢として暮らせる事を約束してくれていました。
もしかしたら、ミルク男爵令嬢が借金する所から、全部なのかもしれません。




