変景
掲載日:2026/06/05
穏やかな夕刻の城を
内なる世界にひとつの城を
大いなる城を
小さきわたしの中にはなかったものを
勇気の矢は心の内にて白熱して
荒波には向かいうつなと
海は呑み込んだ
穏やかな時は波にとけてゆくほどに
守りたかったあの夕刻の城を
砂の城と知ってしまった時から
私の貧しい言葉を
水に浸し咲かせるように足元に置いていった
生活の息づかいに
いくつも水泡が生まれては消えてゆくのが見える
食卓には丸いフラスコ瓶を花瓶とする
水晶に差した白い紫陽花が波のように揺れるとき
あなたの大切な想い出のひととの輪郭は
ともしびに似た憧憬となって小高い丘の上に見える
霊園からの優しき眼差しに包まれたあなたがみえた
頬を撫ぜる風のささやきと手を繋いでしあわせそうに微笑んでいた
穏やかな夕刻の城
あの大いなる城は花園に変わっていた




