タイトル未定2025/12/21 06:17
土曜日当日。
由美子は、朝から車に荷物を運んでいた。
「これで、全部か?」
一緒に荷物を運んでいた、叔父の守雄が聞いた。
「はい」
「じゃ、行こうか」
由美子と守雄は車に乗り込み、武士の家へ向かった。
この日も、良く晴れていた。
武士の家に着くと、博人も美鈴の彼氏拓也も、来ていた。
武士の母親が出てきて、守雄に挨拶をしている。
一通りの挨拶を終え、それぞれ持ち寄った荷物を車の中に入れた。
車に全員は乗れないので、先に美鈴と拓也が乗ることになった。
「じゃ、先に行くわね!」
美鈴が言い、由美子と武士と博人の三人は見送った。
美鈴と拓也を先に川に送った守雄が戻ってきた。
由美子たち三人は車に乗り、車は動き出した。
川に着くと、既にテーブルセットが用意されてあり美鈴は、カレー作りのしたくをしていて、拓也はかまどを作っていた。
由美子達は、車にのせていた残りの荷物をおろした。
「じゃ、おじさんは、いったん帰るよ。一時頃迎えに行くからね」
「ありがとうございます!」
みんなは、口々に言った。
守雄が車で行ってしまうと、由美子は美鈴とカレー作り。
武士と博人は拓也とかまど作りを始めた。
「へ~うまいじゃん!」
野菜を切る由美子に、美鈴は言った。
「お母さんと一緒に料理をするから」
「お母さん、喜ぶわね」
「拓也さん初めて見たけど、やさしそうな人ですね」
「まあね。それだけが、取り柄」
「つきあい、長いんですか?」
「私が、中学一年の頃からのつきあいだよ」
「すご~い!」
「ずっと、学校が同じだったから。ねぇ、由美ちゃんは好きな人とか、付き合ってる人とかいないの?」
「私まだ、小学生ですよ。そんな人いません」
「そうお?由美ちゃん可愛いし、好きな人の一人や、二人いると思った!」
その頃かまどが出来上がり、火おこしをしていた。
火おこしをしながら武士は、拓也に聞いた。
「いつも思っていたんだけど、姉ちゃんのどこが良くて付き合ってるの?」
「一緒にいて、楽しいから。美鈴のこと嫌い?」
「そうじゃないけど、口悪いしすぐ暴力を振るうし」
「きょうだいだからだよ。でも、確かに口悪いよね」
それまで黙って聞いていた博人が、ふきだした。
火起こしが終わり、米を炊き出し、由美子と美鈴は交代で野菜を炒め、カレー作りをした。
火おこしを終えた武士と博人は、服を脱いで川の中に入って行った。
カレー作りを終え、美鈴は由美子を日陰に誘った。
「由美ちゃん!こっちに座ろう」
由美子は、美鈴の隣に座った。時折吹いてくる山の風が、心地よい。
「こんなこと、初めて」
「そっか、由美ちゃんが住む都会じゃ、こんな体験できないもんね」
「美鈴さんは、まだ都会に憧れてる?」
「ずっと、この村で生まれ育ったからね。そりゃ、憧れるわよ」
二人はしばらく、川の流れの音を聞いていた。
美鈴が、突然つぶやくように言った。
「拓也、来年卒業なんだ」
「そっか。今、高校三年生だもんね。卒業したら、どうするの?」
「前はさ、拓也も都会に憧れてて。この村出て、大学行くって言ってたんだ。だから、私も拓也の後追うつもりだったのに」
「どうなったの?」
「拓也、最近何も言わなくなった」
「この村に、残るの?」
「かもしれない」
「美鈴さんは、どうするの?」
「わかんない」
それきり、美鈴はなにもしゃべらなかった。
やっとご飯が炊けて、皆は、イスに座ってカレーを食べだした。
外で食べるカレーは格別で、あっというまにカレーはなくなった。
「ふ~食いすぎた!」
早くも武士はイスから降り、石の上に寝転んだ。
「大盛りによそったカレー、三杯も食べるからだよ!」
美鈴が、あきれて言った。
武士はそのまま寝転び、美鈴は拓也と日陰の方に行き並んで座り込んだ。
由美子と博人は、イスに座ったままでいた。
「さっき、美鈴さんと何話していたの?」
博人が、由美子に聞いてきた。
「美鈴さんと、拓也さんの将来のこと」
「ふ~ん。由美ちゃんは、夢とかあるの?」
「さぁ。考えたことないな。博人くんは?」
「わかんない。と言うか、まだ迷ってる」
そう言ったきり、博人は黙ってしまった。
それから、みんなで後片付けをした。
片付けが終わった頃、守雄が車で向かえにきた。
帰りは、由美子・武士・博人の三人が先に車に乗った。
由美子は、窓からそっと美鈴と拓也を見た。
川に残された、美鈴と拓也が気がかりだった。




