タイトル未定2025/12/21 05:57
博人と別れてから、一週間が過ぎた。
午前中は勉強と掃除をやり、午後はのんびり過ごしていた。
ある日の午後。
由美子は、ますみと畑仕事をしていた。
由美子と同じくらいの年の男の子が、ますみを尋ねてきたのは、そんな時だった。
「おばさ~ん!」
「あら、たけぼう!」
たけぼうと言われた子は、由美子や博人より背が高く体も大きかった。
「ば~さんに頼まれて、これ届けに来た」
そう言って、包みをますみに手渡した。
「わざわざ、悪いわね。ありがとう」
「それ、なんなの?ば~さんに聞いても、教えてくれないんだ」
「ひ・み・つ。今にわかるわよ」
ますみは、いたずらっぽい顔をして答えた。
「あ、夏休みの間預かっているって子って、その子なの?」
由美子を見ながら、男の子は言った。
「そうよ。私の姉さんの娘で、青葉由美子。たけぼう、よろしくね」
ますみは、由美子を紹介した。
「俺、今井武士!よろしく!」
武士は、元気に言った。それとは対照的に、由美子は小さな声で一言、言った 。
「よろしく」
「由美、もういいわ。たけぼうと、遊んできな」
由美子はとまどいながら軍手をはずし、ますみに渡した。
「サンキューおばさん。じゃ、行こうぜ」
武士が言うと。由美子は、慌てて言った。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい」
武士は由美子の手を引っ張って、走り出した。
由美子と武士は山道を歩き、下で流れている川の方に行った。
武士は川の中に、入って行った。由美子は、木陰で涼んでいた。
「……今井武士君」
由美子は、小さくつぶやいた。
「えっ、なんか言った?」
武士は振り返り、川から出てきて、由美子の隣に座った。
「どっかで、聞いた名前だと思ったら、博人君が言っていた名前だ」
「なに?もう、博人に会ったの?」
「病院で、会ったわ。あなたのこと話していた」
「武士で、良いよ。俺も、これから由美子って言うから。いいだろ?」
「いいけど。武士君は、小さい頃からずっと、この村に住んでいるの?」
「うん。父ちゃん、母ちゃん、姉ちゃん。それに、ばあちゃんの五人暮らしだよ」
「大家族で、暮らしているのね」
「大げさな!これくらい、普通だよ。由美子んとこは、何人家族?」
「両親と、三人家族」
「じゃ、博人んとこと、同じだな」
「そう」
「今度、俺んちに来いよ」
「えっ?」
「いろんな場所に、連れてってやるよ」
由美子は、うつむいたまま聞いていた。
武士と別れた由美子は夕飯の時、武士の家に行くのを誘われたことをますみに話した。
「たけぼうの家に?」
「うん」
「いいじゃないの。行っておいで!」
ますみは、嬉しそうに言った。
「でも、ますみ叔母さんの手伝いが」
「そんなこと、気にしなくてもいいんだよ。せっかく、友達が出来たんだから。夏休みなんだし、思いっきり遊びなさい」
ますみは由美子にやさしく言ったが、由美子はうつむいたままだった。
村の生活が今一つ馴染めなかった。都会の暮らしが、恋しかった。




