タイトル未定2025/12/21 05:41
由美子は、駅ビルの中でおみやげを買い新幹線に乗った。車内には、そこそこの乗客がいた。
これから何本かの電車を乗り継いで、由美子の母親が生まれ育った田舎に行く。
それはまるで、由美子自身の過去の扉を開けるような感じだ。
由美子は、期待に胸をふくらませていた。
「う~ん!」
由美子は、駅を出て大きく伸びをした。
何本もの電車を乗り継いだから、さすがにくたびれた。
駅前を見渡し、思わず笑ってしまう。
あの日と同じで何も変わっていないからだ。
人通りもそんなになく、タクシーの運転手も暇そうだった。
駅前にあった駄菓子屋が、コンビニに変わっていた。
(時代の流れかしらね)
そんなことを思いながら、バス停まで歩いて行く。バスの時刻表を見ると、あと三十分くらいでバスが来る。
(一時間に一本。あの時もそうだったわ)
由美子は、コンビニに行きおにぎりとお茶を買った。
先程のバス亭に戻り、バス亭のベンチでおにぎりを頬張りながらバスを待つ。
おにぎりを食べ終え、お茶を飲んでる頃バスが来てバスに乗り込む。
三十分程バスに揺られバスを降りると、そこは山々に囲まれた村だった。
セミの鳴き声が聞こえ、どこからか川の流れる音がする。
ここから先は長い坂道。
由美子の住んでいる都会とは大違いだが、何も変わっていない風景が嬉しかった。
長い坂道を登り、山道を歩く。
少し下の方では、川が流れている。
山道を抜けると、広大な畑が見えてくる。 畑には、ビニールハウスがいくつも並び、その畑は由美子が行こうとしている叔母夫婦のものだ。
畑を越えた場所に、叔母夫婦の家がある。
叔母のますみは、畑作業をしていた。
由美子に気が付くと、作業をしていた手を止め、顔を上げて由美子を歓迎した。
「由美ちゃん?よく来てくれたわね。会えるの楽しみにしてたのよ!」
「ますみ叔母さん!」
由美子は地面に荷物を置くと、ますみの所へ走りますみと抱きあった。
「久しぶり!結婚式以来かしら?姉さんも野村さんも、みんな元気?」
「ええ。元気よ!ますみ叔母さんも元気そう」
「私は、それだけがとり得だもの。ごめんなさい、今畑仕事の途中で」
「いいわよ。荷物を置きに行ったら、ちょっと散歩してくる!」
「懐かしいでしょ。ほとんど、あの頃のままよ。ああ、鍵あいてるわよ」
「ありがとう!」
由美子は荷物を持つと、ますみの家へ走っていった。
ますみの家は、由美子の住んでいるアパートとは違い、田舎の家らしく広く大きな家だった。
リビングを見回した由美子は、思わず笑ってしまった。
あの頃と変わっていない。
荷物をリビングの隅に置いた由美子は、外に出た。
畑作業をしているますみに、由美子は走りながら大きな声で言った。
「ますみ叔母さ~ん。行ってきま~す!」
「いってらっしゃい!」
遠ざかる由美子の姿を見て、ますみは笑顔になった。
(あの頃に比べると、ほんと元気になったわ)
山道を歩いていると、心地のよい風が吹いてきた。セミの声が、相変わらず響き渡っている。
少し道を外れ、川が流れているところに行った。
川の水は、太陽の光を浴びてキラキラ光っていた。
由美子は、左右を見回し人がいないのを確認すると、パンプスと、ストッキングを脱ぎ川の中に入った。
「つめた~い!」
しばらく川の中をじゃぶじゃぶ、歩いた。
やがて、川から出て。大きな石の上に腰掛けた。
セミの鳴き声と、川の流れる音しか聞こえない。
由美子は、両足をぶらぶらさせ青空を見上げ、目を閉じたのだった。




