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夕暮れの坂道  作者: kagari
3/15

タイトル未定2025/12/21 05:41

 由美子は、駅ビルの中でおみやげを買い新幹線に乗った。車内には、そこそこの乗客がいた。

 これから何本かの電車を乗り継いで、由美子の母親が生まれ育った田舎に行く。

 それはまるで、由美子自身の過去の扉を開けるような感じだ。

 由美子は、期待に胸をふくらませていた。


「う~ん!」

由美子は、駅を出て大きく伸びをした。

 何本もの電車を乗り継いだから、さすがにくたびれた。

 駅前を見渡し、思わず笑ってしまう。

 あの日と同じで何も変わっていないからだ。

 人通りもそんなになく、タクシーの運転手も暇そうだった。

 駅前にあった駄菓子屋が、コンビニに変わっていた。

(時代の流れかしらね)

 そんなことを思いながら、バス停まで歩いて行く。バスの時刻表を見ると、あと三十分くらいでバスが来る。

(一時間に一本。あの時もそうだったわ)

 由美子は、コンビニに行きおにぎりとお茶を買った。

 先程のバス亭に戻り、バス亭のベンチでおにぎりを頬張りながらバスを待つ。

 おにぎりを食べ終え、お茶を飲んでる頃バスが来てバスに乗り込む。

 三十分程バスに揺られバスを降りると、そこは山々に囲まれた村だった。

 セミの鳴き声が聞こえ、どこからか川の流れる音がする。

 ここから先は長い坂道。

 由美子の住んでいる都会とは大違いだが、何も変わっていない風景が嬉しかった。

 長い坂道を登り、山道を歩く。

 少し下の方では、川が流れている。

 山道を抜けると、広大な畑が見えてくる。 畑には、ビニールハウスがいくつも並び、その畑は由美子が行こうとしている叔母夫婦のものだ。

 畑を越えた場所に、叔母夫婦の家がある。

 叔母のますみは、畑作業をしていた。

 由美子に気が付くと、作業をしていた手を止め、顔を上げて由美子を歓迎した。

「由美ちゃん?よく来てくれたわね。会えるの楽しみにしてたのよ!」

「ますみ叔母さん!」

 由美子は地面に荷物を置くと、ますみの所へ走りますみと抱きあった。

「久しぶり!結婚式以来かしら?姉さんも野村さんも、みんな元気?」

「ええ。元気よ!ますみ叔母さんも元気そう」

「私は、それだけがとり得だもの。ごめんなさい、今畑仕事の途中で」

「いいわよ。荷物を置きに行ったら、ちょっと散歩してくる!」

「懐かしいでしょ。ほとんど、あの頃のままよ。ああ、鍵あいてるわよ」

「ありがとう!」

 由美子は荷物を持つと、ますみの家へ走っていった。


 ますみの家は、由美子の住んでいるアパートとは違い、田舎の家らしく広く大きな家だった。

 リビングを見回した由美子は、思わず笑ってしまった。

 あの頃と変わっていない。

 荷物をリビングの隅に置いた由美子は、外に出た。

 畑作業をしているますみに、由美子は走りながら大きな声で言った。

「ますみ叔母さ~ん。行ってきま~す!」

「いってらっしゃい!」

 遠ざかる由美子の姿を見て、ますみは笑顔になった。

(あの頃に比べると、ほんと元気になったわ)


 山道を歩いていると、心地のよい風が吹いてきた。セミの声が、相変わらず響き渡っている。

 少し道を外れ、川が流れているところに行った。

 川の水は、太陽の光を浴びてキラキラ光っていた。

 由美子は、左右を見回し人がいないのを確認すると、パンプスと、ストッキングを脱ぎ川の中に入った。

「つめた~い!」

 しばらく川の中をじゃぶじゃぶ、歩いた。

 やがて、川から出て。大きな石の上に腰掛けた。

 セミの鳴き声と、川の流れる音しか聞こえない。

 由美子は、両足をぶらぶらさせ青空を見上げ、目を閉じたのだった。


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