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夕暮れの坂道  作者: kagari
13/15

タイトル未定2025/12/21 06:41

 夏祭り当日。

 由美子はさそっく、ますみにゆかたを着付けてもらった。

 鏡の前に立った由美子は、思い立っていつも下ろしている長い髪の毛を、両手で持ち上げポニーテールにした。

 赤い帯をしているので、同じ色の赤いゴムで髪の毛をしばった。

「あら、いいじゃない!」

 ますみの言葉に、由美子は照れた。

「じゃ、行きましょうか」

 由美子はますみが運転する車に乗って、武士の家に出かけた。

 武士の家に着くと、すでに博人も来ていた。

「いらっしゃい」

 武士の母親が、出迎えてくれた。

「こんばんは」

 由美子は、武志の母親に挨拶をする。

「まぁ、ゆかた姿可愛いわね」

 そこへ、武士の祖母もやってきた。

「ますみさん。上手に出来たじゃない」

 武士の祖母は、ますみが作ったゆかたをほめた。

「おばあちゃん、生地をありがとう。由美ちゃんに、ゆかたを着せることが出来たわ」

「うん、うん。かわいいのう。たけぼうの、お嫁さんになるかい?」

 武士は怒鳴り声を上げた。

「何言ってやがる!」

「あれ、あれ照れてるよ!」

 笑い声が、どっと上がった。

 笑い声が収まると、武士は面白くないと言った感じで言った。

「祭りに行くよ!」

 そう言うと武士は、立ち上がって靴を履いた。

「行ってきます」

 由美子と、博人は立ち上がって言った。

「たけぼうの家まで、迎えに行くからね!」

 ますみの声に由美子は、大きく手を振った。


 神社は、武士の家の裏山にあった。

 村から、人々がやってきた。

「まずは、射的だよな!」

 武士が言うと、武士と博人は射的の店に行き、射的を始めた。

 景品を狙う二人に、由美子は声を上げた。

「いけぇ~おしい!」

 射的が終わり、歩いているとお面を売っている店があった。

「ひょっとこのお面におかめのお面だ!」

 由美子がお面を見つけ、面白い顔をしたお面に三人は大笑いをした。

「ね、これ買おう!」

 博人が言い出し、由美子と武士は顔を見合わせたが、すぐ博人の提案に乗った。

 武士と博人は、ひょっとこのお面。

 由美子はおかめのお面を、それぞれ買った。

 三人はさっそく、お面を顔につけた。

 お互いの顔を見て、笑いあった。

 それから、それぞれが好きな物を食べ、食べ終わると武士が言った。

「こっち、来いよ」

 武士の後を、由美子と博人は付いて行った。

「静かにな」

 武士は、そっと言った。

 目の前には、たくさんの蛍が飛んでいた。暗闇の中を緑色に光り、それはまるで幻想の世界にいるようだった。

「きれい」

 由美子はそっと、言った。

 しばらくすると、打ち上げ花火の上がる音がした。三人は名残惜しそうにその場を離れ、神社の境内に戻った。

 夜空には、何本もの花火が咲いた。三人は、黙ったまま夜空を見上げた。

「私、二十日に帰るんだ」

 突然由美子が、つぶやくように言った。

 あまりにも突然の由美子の言葉に、武士も博人も声が出ない。

「今まで、ありがとう。武士君と博人君のおかげで、楽しい夏休みをこの村で過ごせた」

「僕、将来医者を目指すよ」

不意に、博人が言った。

「だから、私立中学を合格したら、僕もこの村を出る」

「そんなこと、言うなよ。今年の春来たばかりなのに」

 武士が、不満の声をもらした。

「この村に来る前から、医者になるかどうかずっと、迷っていたんだ。でも、由美ちゃんの喘息を見て、やっと決心がついたんだ」

「ちぇっ、みんな俺を置いて、どこへでも行きやがれ!」

 毒ずく武士の肩を、博人はそっと抱いた。

 あんなにはしゃいでいたのに帰り道、誰も何もしゃべらなかった。


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