タイトル未定2025/12/21 05:28
静かな郊外のアパート街に、野村夫婦は暮らしていた。
野村は、中学教師。野村の妻、由美子は主婦。
野村と由美子の出会いは、由美子が短大生の時だった。
当時野村は、非常勤講師。お互い少しずつ惹かれあい、由美子が短大を卒業を機に、結婚をした。
歳が離れた夫婦だが、野村は静かな性格で、ふたりは穏やかに暮らしていた。
その夜、野村はいつものように布団の中で本を読み、由美子は壁に掛かったカレンダーを見ていた。
カレンダーを見ている由美子に、いつものような落ちつきはなかった。
(どうしよう……もう明日なのに、夫になにも話していない。話さなくちゃ……でも、きっと相手になんかされないわ。でも……)
「どうしたんだ?」
挙動不審な態度の由美子を心配した野村は、読んでいた本を手放し由美子に声をかけた。
(言わなきゃ……言わなくっちゃ!)
由美子は笑われる覚悟で、胸の内の秘めた思いを打ち明けた。
全てを打ち明けた由美子は、思い切り両目をつぶっていた。
(言ってしまった……きっと、笑い飛ばされる!)
しかし、野村の口から出た言葉は、意外なものだった。
「行っておいで」
「……いいの?本当にいいの?」
由美子は、しつこく念をおした。野村は、笑顔で言った。
「何を、ためらっているんだ?」
「だって……子供みたいじゃない?」
「子供みたいなんて、俺は思わないし。そう言うの好きだよ」
「でも行ったところで、何もないのかもしれないのよ」
「そしたら、ますみ叔母さんの家でのんびりすれば良いじゃないか。ますみ叔母さん、喜ぶよ」
「留守にするけど、大丈夫?」
「おいおい、子供じゃないんだぞ。でも、無理はするな」
昔から、体の弱い由美子を気遣っての言葉に、由美子はやっと笑顔になった。
「ありがとう!明日、行ってきます」
由美子は、旅立ちの準備を始めた。




