6.学生らしいテスト打ち上げ
四日間続いたテスト期間は無事に終わり、テスト最終日の最後に割り当てられた、ロングホームルームでは夏休み明けの文化祭に向けた本格的な計画が練られようとしていた。
[文化祭のだし物]と黒板に書いた私は林檎の司会の元、板書してゆく。
とりあえず私たちのクラスでは売店をするような空気ではないようだった。
適当な展示物を作り手っ取り早く終わらせたい。という空気を感じる。
しかし、林檎は諦め悪く、せめて劇をしようというのである。
進学クラスかつ理系のため女子学生が多いわけではない。さらに、文化祭などに熱意を現したことがあるものは少ない。そのため、大道具は男子がやるが、それ以外は女子生徒に全て丸投げなのである。しかし、女子生徒たちの反応は悪くなく、担任がミュージカル鑑賞が趣味であることを含めて劇をやる方向で物事が進み始める。
一度、次のロングホームルームに話は持ち越しになる。
本来は売店をやりたかったであろうが「やったね。」とうれしそうなので、良しとしよう。
帰りの支度も終わる頃。
「テスト終わった記念に打ち上げに行こう!」とはしゃぎだすのは林檎だった。
「悪くない。なら、駅の横にあるショッピングモールにあるスイーツでも食べようよ。」と私はテスト週間中に開店したスイーツ店を推す。
「んー。いいね!」と、スイーツ店に決定した。
学校から総合病院を挟んでショッピングモールがあり、駅と並ぶ。十分も歩くとお店に辿り着いた。
私は、イチゴタルトを、林檎はチョコケーキを注文した。
紅茶が好きなのもあり、スイーツはとっても好きなのだ。林檎はドリンクについて詳しくないようだったので、悩むようなら同じ紅茶を薦めた。
私たちは二つのスイーツと、紅茶を挟んで座った。
「テスト無事終了~!」と、元気いっぱいの林檎。
「長かったね。今年から十五科目だもんね。」
「無敵でも流石に体に応えますぞ。」
特殊体質ジョークに私は笑ってしまう。目線を落とした先のチョコケーキと目が合うおいしそうだな。
「一口プレゼントしてやろう。」そういうと林檎は一口分フォークにとると差し出してくる。
「このまま?」と訊くと頷く。
俗にいうあーんの状態である。
「お礼に。」と、私のイチゴタルトを同じようにしてあげる。
「いいの?」と、自分の時は謙虚になりよって。
「うん。交換だよ。」
「それでは。」
大きく口を開け頬張った。彼女は文字通り、ピタリと、一時停止した。
「大丈夫?」と私は心配になる。
「ううん。おいしすぎて。」
何とも感受性の豊かな事である。
「ならよかった。」
私は再びイチゴタルトに戻る。それに続いて彼女もチョコケーキに戻る。
「少し喉に詰まった。」と、林檎は紅茶に手を伸ばすがそれは私のだ。
まあいいか。
おいしくスイーツを頂き終わったところで、話題はテストのあそこが理不尽だったなどの愚痴から始まり、文化祭と、夏休みへと移り変わる。
「何とか劇にできた!」
「かなり頑張っていたね。ほぼ林檎の演説で板書することなかったよ。どんな劇をやりたいとか考えはあったりするの?」
「ふふん。どんな劇がやりたいか~。考えてなかったな。でも。ハッピーエンドがいい。」
「ハッピーエンドな物語書いたらいいんじゃない?」
「確かに。言い出しっぺだし頑張らないと。」
「まあ。みんなの意見を訊いてからになるとは思うけど。」
「そうだね。夏休み前に決まるといいな」
「準備に時間かかるもんね。」
準備を個々に頼むとなると夏休み中でないと私たちのコースでは反感を買いかねない。
「夏休みさ。花火見ようよ。」
どこか遠くを見ていて目が合っていない気がする。
「突然だね。」
そう言いながら彼女の目線の先、私の後ろに何かあるのかと振り返る。
………そういうことか。ポスターが貼ってあるのだ。この市は夏祭りと花火大会が同日に行われるようだ。
「一石二鳥でしょ。」ごもっともである。
「これはまた後々計画を立てよう。」と、彼女の強力なマイペースに、私と、紅茶は飲みこまれるのだ。
割り勘で店を後にする。
「明日から、文化祭のための計画を小出していくからアシスト任せた!」
楽しそうに手を振る彼女を見送り、私は浴衣の方がいいのかなと、まだ悩むべきことではないであろうことを考えながらエスカレーターを乗るのだ。
眠気に襲われながら頑張りました。