6.これが不死身と無敵の不便なところ
さて、体育にて、体力テストなどのをこなしていると私と林檎には困ったことが起きる。
筋力などが重視される、一般的なところでは何も問題は起きない。
この前の林檎とのキャッチボールのおかげか、前回よりも記録が伸びていた。筋力的な成長はないのだろうが、練習で得た経験によっては成長するものなんだと嬉しいこともあった。
ところが、シャトルランや、持久走といった部門では体力の底は見えない私たちは、疲れているフリをしなくてはならない。
これは思っているよりも遥かに難しいことだったと言えたら良かった。
私はある程度は疲れる。というか酸欠で酸素が頭に回らないところまでは疲れる。
「みかん、ゾンビみたいな状態になっても、速度落とさずにどこまでいくのかってみんなに言われていたよ。」
見ている人が見たら、速度が落ちないゾンビ。嫌な響きである。
そうこの問題を抱えているのは林檎である。
文字通り底のない体力はさておき、ゆっくり走ることなど力の調整が難しいようなのだ。持久走では歩いたり、加速したりを繰り返す。
なんと、一番驚きなのは始めから特別、力を出さなくてもよいシャトルランでもずっと全力疾走なのである。
「無駄に体力使うと良くないぞ」と、体育教諭に言われていたが、全力疾走で、満点である目標まで走りぬいて、息切れをしているフリをしながらリタイアする。
「すごいな。やり方さえ正しければ男子にも負けないくらいのスコア出せたんじゃないか?」
「そうですかね。」
教員に褒められることで、「えへへ、最強だからね。」と、調子に乗っているのはいいが、疲れた果てた演技を忘れている。
「アドレナリンが体に回り過ぎておかしくなっているんじゃないか?」
「そんな薬物中毒者みたいないいかたしないでよ。たしかに、ゆっくり走る練習はしておこうかな。」
ふむ。そんなことよりも、一歩二歩と少しずつ近づく、そして耳元で云う。
「疲れた演技、始めだけだったよ?」
「あっ」
手間のかかる子だ。
「ラブコメとかだったらさ、今みたいに近づいてきたら「汗匂うかも」とかいっちゃうのかなぁ」
「返答になっていない上に、突拍子もないことをいうね。確かに汗が出ていないけど・・・私は出てるか。」
私は自分で匂いを嗅ぐ。臭くはないはず。
「いや、私たちが男女だったらって話だったんだけど、可愛いこと言ってくれるじゃない。」
恥ずかしくなってきた。無意識だった。
「喉が渇いたから。」
私はその場を離れる。
「いってらっしゃい。」
ため息をつく。私においては珍しく必死で走ったせいだろうか。身体が熱い。私は襟をつかみ、ハタハタと体を冷やすのだ。
水は冷たく、顔を洗うのにも丁度良い。
体力テストが終わった時に、きっと球技大会のメンバー分けが行われるのだろう。
クラスで二つに分けられるので、二分の一か、体育館の窓を開ける。
快晴。初めての球技大会が楽しみに思える。




