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3.既視感をどう読んだらデジャブなの?



「よし、その作戦で行こう。」

「趣味は当たり障りのないものにしてね。」

 私たちはチャイムの音が鳴りやむ前に、教室に入る。

 結局のところ、前の人が何を話したとしても、危ない話題の場合は引き継がず、名前と趣味で終わらせることにしたのだ。

 今回も、出席番号順で前回と違うのは出席番号が一つずつ後ろであることだ。

 一番目の子は名前と得意科目。

 二番目の子は名前と、得意科目、苦手科目も。

 三番目の子が名前と、得意科目、苦手科目、趣味。

 これどんどん増えていくタイプの自己紹介か?みかんの番だが、

「私は、木森林檎です。得意科目は体育で、苦手な科目は英語!趣味は、体を動かすこと。好きな飲み物は柑橘系です!」

林檎だもんな。身体が丈夫で何しても大丈夫ですと、言わなかったことを褒めよう。しかし、好きな飲み物をチョイスするとは彼女らしい。

 私は何が好きだろうか。

 林檎以降新しい自己紹介の枠が増えることはなく、飲み物だったり、食べ物に変わったりしたぐらいだろうか。私の順番は想定よりも早く回ってくる。

「私は、星和みかんです。得意科目も、不得意科目もこれと言ってないです。趣味は、天体観測。好きな食べ物はアップルパイ、いちごタルトなどの、果物の比率が多いスイーツです。」

 十分すぎるぐらいだろう。得意科目を地学と言っても良かったのだが、すかしている奴だと思われかねない。

「天体観測好きだったんだ。」

 林檎は、そこに反応するのか。仕返しに例で挙げたアップルパイの方に突っ込むものだと思っていたが外れた。




 そこから、最後の三十五番の子まで進み、担任の自己紹介へと移る。

「担任を務めさせていただきます、横溝と言います。担当科目は古典としていますが、国語ならすべて教えられます。一年間よろしくお願いします。」

 挨拶と共に後ろで束ねられた髪を揺らしながら先生が頭を上げる。

「残った時間はクラス委員と、係決めをする?でも時間的にクラス委員しか決められそうにないか。」

 担任教諭はそう言いながらスマートウォッチを眺める。

 静寂。なんか前にもあったな。

「星和さんと、木森さんでいいんじゃない?最初はみんな、どんな子か分からなくて適材適所は難しい訳だし。」

 デジャブだ。世の中の人はきっとそう口を揃えていうだろう。

 立候補者はいませんか?と訊く声が遠い。

「みーかん?」

 顔を上げる。すでに教壇の林檎はやる気のようだ。

 私も、前に進む。あの日とは色も見た目も変わってしまった白板と向き合う。

やけにツルツルした表面を指で撫でる。

 誰も指摘はしない。もう向き合うことのない黒板に寂しさを抱くのだ。

 

 一年生は確か、クラス委員と、体育委員だけだったな。

 私は体育委員と、書く。

「話が早いね。五月には球技大会があるから、重要な委員になるからね。」

 突然、私の横で静かにしていた横溝先生がクラスに声を掛けるので驚いた。

 それよりも驚くべきことは、

 いつ現れたのだ、球技大会は・・・

 完全に無知の域だぞ。と、サインを送るべく林檎を見るが、目を輝かせている。

 杞憂だったようだ。彼女は青春を謳歌しているのだ。

 その顔を見ていると変化も悪いことだけではないのかもしれないなんて思う。

 私は、少し気に食わない字を生まれ変わらせるべく慣れないスポンジで消した。

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