2.違和感を抱かれちゃダメぞ
受けっとった記念品を先生に一度返却するなど代表としての一仕事を終えた。そのため林檎と私は少し教室に戻るのが遅れた。
私たちが入るべき教室はやけに賑わっていた。
「みんな、もともと顔見知りだったりするのかな?」
「どうなんだろうね。」
扉を開けると実際に教室では知り合ってから間もないような様子ではなく、グループのようなものが出来上がっている。
「ふむ。」
林檎は教室を文字通りぐるりと見回す。
「すごいね。星和さんと、木森さんだったよね。新入生代表が二人だなんて過去にないことらしいよ。」
へえ。そうなのか。突然声を掛けてくれる女子生徒に私は
「ありがとう。今年は、コミュ力の高いメンバーが多いのかな。とっても教室が賑わっている。」
「そうかな?SNSとかでメッセのやり取りをしているから普通だと思うけど。」
いつの間にか私の横に戻ってきていた林檎に突かれ、ささやかれる。
「ねえ。常識はあんまり変わらないとか言っていたけれど、すでにあっちからも私の知っているSNSではないものの、名前が挙がっているんですが。」
私も小声で返す。
「それについては確認不足だったよ。でも、たった一か月で私たちに使いこなせると思いますか・・・」
「それも……そうか……でも、私、校舎が新しくなっていることすら教えられてなかったからな~」
ジト目で、見つめられる。面目ないな……
「二人は仲がいいんだね。中学校が一緒だったとか?」
女子生徒はクスクスと笑いながらごく普通の質問をしている。しかし、これは危険な質問である。何がとは言わないが花であろう。なぜなら、対策済みであるからだ。
「「私が帰国子女で……」」
言葉を打ち切る。言葉も、内容も重なっている。これはピンチである。素早く林檎を見る。林檎もこちらを見ている。
私は同時に聞かれることを完全に視野から外していた。先ほどの余裕が風に飛ばされていくのを感じ、目が泳ぐ。
「えっと、もともと、幼馴染だったんだけれど、お父さんの単身赴任で二人ともバラバラになっちゃって。」
「あーー!親がエリートな感じなんだ。それは二人でワンツーフィニッシュでも驚かないや。」
「そうそう。それで、メールのやり取りとかはしていたんだけれど、なかなか会える機会もなくて。高校は二人とも日本に帰れるって分かって。」
「式中にとっても、仲が良さそうだったから、すごく気になって。あっ。また後で、話聞かせて!」
女子生徒は友達に呼ばれているのでその場を去っていく。
「みかんよ。これは一度考え直さなくてはならない設定がいくつもあるのではなかろうか。」
「とっても同意。とりあえず、中学の話題はこれでいいとして、この後あるであろう、自己紹介とかいろいろ危ない気がしてきた。」
「だね。」
私たちはどこに向かうわけでもないのだが、廊下に出る。
「どこから練り直そうか。」
「うーん。」
私たちは、普通の女子高生の生活を手に入れるべく、設定を練り直す。
春の暖かな風は私たちの不安を溶かす。また、穴のある設定になるかもしれない。それでも、廊下の窓から見る新しい景色から私たちは目を離せないでいるのだ。




