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1.リスタンバイ

 


 人生で二度目の『高校入学式』は、一度目の入学式では新任で体育教師をしていたはずの教頭による開式の辞のよって始まった。

 二回目の高校入学式。そんなものはタイムリープしてしまう小説や映像の中の話でよくあるが、こんな形で二回目をすることになるとは誰が想定しただろうか。

「あの先生も偉くなったものだね。」

「私語していると、注意されるよ。」

 私は林檎を突く。目の前では、記憶が正しければ、生徒指導。いや、教務主任だったか?まあ、元からある程度出世していた校長が、SDGsについて話している。

 五分ほど経過し、話に終わりが見えていた頃に。

「おお、次だから緊張してきた。」

「いや……まあそうか、林檎はまだ、学生気分だもんね。いけるよ。喋るのはほとんど私だし、林檎は記念品を受け取るだけだから。」

「そういうことではなくてね。私たちの年齢ってバレたりしないよね。」

「それは、無いと思うけれど…」

「校長が久しぶりとか声かけてきたらどうしよう!ってさ考えちゃうわけよ!」

 私は、ポケットの中で万が一の為に忍ばせてある、原稿を握りしめる。

「新入生代表挨拶、星和みかん。記念品授与。受取は、木森林檎。二人は壇上に向かってください。」

「「はい!」」

 よし、返事はズレなかった。恰好だけはつくだろう。

 二人でステージ上まで歩く。

 来賓や、教員にお辞儀をするが、何か違和感があるような気がする。

 マイクの前に立つ。林檎は私の右手に。校長は左に置かれた椅子で、待機している。リハーサル通りである。

 違和感は気のせいか。

 一度、深く息を吸って、細く長く吐く。

「暖かな春の日差しが降り注ぐ―――」

 自分で考えておきながら思う。前置きが長い。

「―――新入生一同は、一度しかない高校生活を、悔いの残らぬものにできるよう、素晴らしい仲間と共に文武両道の精神を胸に学園生活を送ることを誓います。」

 あっ。違和感の正体はこれだ。一度しかない高校生活のところだ。現に二周目である。

「続きまして、記念品授与。」

 淡々とした司会を合図に、林檎と共に、校長の前に並んで立つ。

「ご入学おめでとう。」

 校長の言葉に

「「ありがとうございます。」」

 先ほどと同じようにズレのない返事。

 拍手が起こる。

 仕事は終わりである。

 ため息ではない、一つ息を吐く。

 



 私たちは同じ高校に入学することを決めたのは良かったが、中学の範囲が出題される入試で、特に何も考えることなく、すべてを真剣に解いたのだ。

 二人で、「思ったよりも簡単でラッキーだったね。」なんて言っていたが、当然だ。

 林檎が目覚めたのが春先であり、入試ぎりぎりだったので、急いで、テスト対策を行ったのだ。それがミスであったのだ。

 合格発表の翌日に、合格証書と共に送付された紙面にて、知ることとなった。

「テストが初めから十五科目な訳ないよね…」

「今さら後悔しても遅いか……」 

 という嘆きの言葉はどこに届くこともなかった。

 そう。入試では、中学範囲の五教科なのだ。


 満点で通過した私たちは無事に入学できたものの、成績優秀者が二人ということで、このような状況になったのだ。

「おー。最初はどうなることかと思ったけど、楽しかった。一度やってみたかったんだよね!」

 緊張がほぐれたのか、ステージ裏で元気が良い林檎。

「それなら、結果オーライだね。」

「一年生は成績順でクラスが決まるから、同じクラスなのも喜べる点なんだよ!」

「そうだね。二年の文理選択も、同じにするなら三年間、一緒になるね。」

「今回の入学式は少しワクワクする。」

 私たちは、ステージ裏から出るべく、二人で青春の並ぶカーペットに続く扉を押す。

 大きな出来事で教育方針も変化してしまった。

 きっとあの頃と同じ時間はもう取り戻せない、それでも今を生きる私たちは学園生活のスタートを切るのだ。

遅れましたごめんなさい!

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