15.修学旅行のおやつは三百円までは過去の話?
前期の期末テストも終わり、いよいよ一週間に修学旅行の準備である。
ある程度の班決め。バスや、新幹線での席順。部屋割りなどなど。
私は、班も、部屋も林檎と同じである。バスや、新幹線でも、隣である。
「窓際がいい?」
私は訊く。確か、林檎は夏休みの旅行でも窓際で、風景をとても楽しんでいたと思う。
「いいの!なら、行と帰りで、変わろうよ。」
「私、寝るかもだから、別に気にしなくても大丈夫。」
なんなら、私は楽しんでいる林檎の顔を眺める方が楽しいかもしれない。
「それなら・・・ありがとう。」
「こちらこそ」
私の返事に首を傾げているが、答えはあげない。
「すごく楽しみになってきた。」
ウキウキと、跳ねる林檎は修学旅行で『無敵』でなかったら熱を出すタイプだな。彼女に至ってその心配はいらない。
「それならよかったよ。景色を目に焼き付けるためにちゃんと休んでから来てね。」
「分かってるって。」
私たちは修学旅行のしおりを作るべく、順番に並べられた用紙を一枚一枚取っては、山折りにする。
「私、この修学旅行を絶対。大切な思い出になるようにするんだ。」
「何を急に?」
いつも言っていることと、変わらないが、何か言い聞かせるように云うので不思議と訊き返してしまう。
「それはね。まあ内緒!」
一番気になるやつじゃないか。いつもと同じ理由だよと返してくれるのならよかったのに。
「まあ。修学旅行の夜にでも教えてもらおうかな。好きでしょ?そういうの。」
「そうだね。その時には教えなきゃだね。」
ん~?私にでも告白するつもりなのか林檎は。
目ぐらい合わせてくれてもいいじゃないか。
「そういえば台風来るよな。」
「予想できないって言ってるし来ないかもよ?」
教室の中央の男子の集まりの中から聞こえる。
「だってさ。どうなんだろうね。」
私と同じように盗み聞きをしていた林檎は心配げな顔をしている。
「てるてる坊主でも作ろうか。」
「そういえば、みかん、首つりすると、てるてる坊主になるんだもんね。それならやめてくれたまえ。」
すごく昔に試した自殺方法を話したことがあるが、よくもそんなこと覚えているな。
「可愛いテルテル坊主ではないよ。顔色とか特に。」
「そんな情報いらないよ」
ふっふと、笑うので、ポケットティッシュを取り出し、てるてる坊主を作るべく一枚目を丸める。
「あ。待って。その中身違うのがいい。」
「ん?好きなので構わないけどなに?」
「願いを込めた紙を丸めて入れようかと。」
「お守りみたいでいいかも。」
「でしょ。」
林檎は何かを書き始める。
「見たら願い叶わなくなるかもしれないから、見ちゃダメ。」
「ほう。なら、その間に輪ゴムの代わりにヘアゴムでも取ってくるよ。」
ロッカーにある鞄の中から、ヘアゴムを取り出し戻る頃には丸められて机の上に紙は置かれていた。
「見ずに入れればいいんだよね。」
「そうそう。」
てるてる坊主を、私は十年ぶりぐらいに作る。少し、頭が大きくなってしまったが、いいだろう。
どこに掛けようか。私は見回すが、厳しい教科の先生に回収されかねない。
「机の下とか?」
林檎が言うので見てみると、ちょうど隠れそうだ。ここでいいだろう。
「ずっと坊主に覗かれているぞ。」
「いらないこと言うと捨てちゃうかも。」
小学生のような神頼みで、台風が来ないのならばどれほどの人が救われただろうか。
あくまで気休めなんだろうな。
でも悪くないなと私は、思うのだった。
放課後、修学旅行で、使えるようなキャリーバッグが欲しいと、言う林檎に付き添ってショッピングモールを回っていた。
「どんなのがいいの?」
林檎はどこか遠くを見つめていて返事がない。
「林檎?」
「んー?」
「何を見ているの?」
「あの店でみかんと買い物したなって。」
「みかんがあまりにもハンカチを持ってこないから買いに行ったんだよね。一緒に買いに行ったハンカチなら使うっていうから。」
いいにおいがするって、匂いをしつこくかがせてきたのが懐かしい。
「紅茶も買ったね。まあ要は、ここにあるお店のほとんど回っているんだなって。」
「そんなに回ったショッピングモールですが、どこのお店がいいとか、候補はあるの?」
「正直、あの、中古屋に置いてあったアンティークな鞄が結構気に入ってる。」
「多分。あの鞄そんなに入らないよ?」
「確かに、思い出を詰め込みには小さすぎるね。じゃあ。あそこの黄色いの。」
林檎が指さすのはマネキンのファッションで置かれているだけのようなキャリーバッグだ。
「黄色だと目立つから探しやすくていいかもね。」
「でしょ。みかん色だしね。」
「みかんはそんなにパステルカラーじゃないよ。そんな色のみかんがあったら多分、お腹壊す。」
「まず、あれ売り物かな。」
私たちは二人でくるくるとキャリーバッグを回し、値札を探す。
お。あった。
「林檎。値札あるから、売ってると思う。」
「よしっ。いくらになってる?」
「えっと。一万五千八百円。」
「くう。しかし、妥協できない。これでいく!」
会計に進む。林檎は財布から二万四千円を出す。結局端数が出る。出しすぎだろって突っ込みそうになった。
何はともあれ買えてよかった。ハンカチのように持っていない可能性があった。
「これで修学旅行に行けそうだ。ふー。」
私も、帰ったら荷物を揃え始めなければならないな。
先延ばしにしていると忘れ物をしそうである。
「ねえ。みかん。さっきのお店で貰った。」
林檎は二つのストラップを握っている。
「二つも?」
「お友達の分もって。どっちがいい?」
うーむ。亀とフクロウ。
「フクロウかな。」
「好きだねぇ。いっつも、もふもふチャンネルで、見てるもんね。キャリーバッグにでもつけたまえ。」
そういわれると恥ずかしい。まあフクロウが可愛いのは事実だが。
「ありがとう。レッサーパンダも可愛いから忘れないでやってね。」
「そんなストラップは動物園じゃないと、ありません。」
「いつか動物園も行こう。」
返事がないので横を見ると、林檎は、立ち止まって目の前にある唐揚げ屋を見つめているのか?
まだ、夜ご飯には早いぞ。それと、人にフクロウの人形をあげた後に唐揚げとは何事だ。
さては。水族館いった後に寿司を食べるタイプの人間だな。
二人で一袋買ってから、百均にて、修学旅行で使い捨てされる道具を買いに行くことを提案するのだった。




