12.文化祭準備!
旅行からの帰宅後、特にやることもないので私は劇の練習に勤しんでいた。
たまに、林檎とビデオ通話をしたり、なんとなくだが形になって行っていることなど報告を貰っていた。
失敗はできないな。そんな風に感じるようにもなっていた。
問題は衣装合わせだ。夏休み中に私の服を作る予定なのだが採寸などいつするのだろうか。
林檎に、メッセージにて、その旨を伝えると、
「確認するね!」と、通話を切られた。
その三十分後だっただろうかいきなり今日採寸することとなった。
最高潮に熱い電車に乗せるなと思いながら、私は今電車に揺られ、集合場所である駅横のショッピングモールに着いた。
すでに、林檎と、武藤さんだったかな。採寸と、衣装づくりをしてくれるちょっと裕福な家庭に暮らしている女の子が待っていた。
「待たせました。」
「まあここまで来るのに三十分以上かかるし仕方がないさ。」
林檎は続ける。
「待っている間は布選びしていたから大丈夫なんだよねー」
「はい。待つ時間の間に専門店を二つほど回れたので十分です。」
二人で仲よくデートですか。
「じゃあ、武藤さんの家だっけ。」
武藤さんを先頭に私たちは外に出る。武藤さんだけが日傘をさしている。
「私たち女子力ないんじゃ。」と、林檎に仲間扱いされてしまった。
五分しか歩かなかったし、別にいいじゃないか。
武藤さんの家は大きかった。思わず林檎と二人で「わお」と、言ってしまうくらいには。
採寸がはじまり、
「星和さん。肌とっても綺麗だね。」
武藤さんが感激している。
むすっとした顔をしている林檎がいるので、
「林檎もきれいなんだよ。」と、フォローするが、
「そうじゃない。」と言われる始末だ。
しかし、二人でそんなにまじまじと見られると恥ずかしい。
「見過ぎだぞ。」
流石に注意する。
「ダメと言われると余計に。」
林檎に近くにあるクッションを押し付けてやった。
無事採寸も終わり、私と、林檎は二人でオレンジ色の堤防沿いを歩いていた。
「さて、姫様。今の気分はどうですか?」
「ん~ドレスなのか、おとぎ話に出てくるようなノスタルジックな服なのか気になってる。」
「それは。お楽しみで!」
「下手な露出がないならいいよ。」
「姫様でそんな服はない。」
ケラケラと笑いながら駅に着く。
「じゃあ。またね。」
文化祭まであと一か月。どこまで私はいばら姫という役に、のめり込むことができるのだろか。
そんなこんなで四十一日の夏休みが終わり、まだ残暑が厳しい中、授業は始まる。
しかし、どの生徒も文化祭で頭がいっぱいであるのか、放課後の文化祭活動ばかりに力を注いでいる。
私たちのクラスも、一週間前ともなると熱が入ってくる。
毎日のようにいばら姫に私は変身するのだが、なんとなくだが、私の気分でキャラが違ってくる。
林檎は監督のつもりなのか、パイプ椅子に座りながら指示を出している。
君も、私が眠りにつく前にも、目覚めた後も役があるというのに何をしているのやら。
今日は、衣装が完成する予定だったので、クラスのみんなが揃っている。
私は更衣室で着替え、教室に向かう。
「おー」「すごっ」「似合いすぎ」と、大絶賛。これは照れる。
「服がいいんだよ。」思わず口にしてしまう。
「ツンデレが出てるぞ~」と、私の着替えを手伝い、後ろからついてきていいた林檎におちょくられる。
さて、私もくるくると回り自分の姿を確認する。赤がメインカラーで白のフリルのついた可愛いスカートに、朱色と、黄色のバランスの取れたトップス。
素晴らしい出来栄えだと思う。しかし、こんなきれいな布、あの日に買っていただろうか。
「この布・・・」
突然、林檎に口を押えられ、武藤さんが話す。
「私が昔、着ていて着られなくなった服の布をいくつか使ってあるけれど、また、金持ちアピールって言われると嫌だから。」
「分かった。」
私の知らないところで色々あるのだろう。
ウサギの扮装をした林檎は、
「姫様こちらです。」
案内をしてくれるようだった。どこかと思えば、隣のクラスだ。
「なぜここに?」と、訊かなくても大丈夫であった。
大道具が揃っている。
「ポスターのための写真さつえーーーーーい!」
どこまでもテンションの高いことで。
「なら最初は後ろ向いていて、ちょっとだけ振り返って。」
言われた通りにする。
「ちょっと右。そうそう。」
「明かりが足らない。男子!」
「右の木、若干正面向いていない。」
「現代の風景の方がいいんじゃないか?」
意見が錯綜している。
「よし。全部撮ろう。」
まじか。と、いう顔が隠せない。周りの道具がころころと変わる。
撮影は最終下校時刻まで続いた。
「すっかり遅くなっちゃったね。」
「私のこと撮り過ぎなんだよ。結局、最初の一枚って。カメラマン失格じゃあないですか?」
「ええ。そんなこと言わないでよ。思い出、思い出。文化祭はもっととらないとね。」
「きれいに撮ってね」
「夜は涼しくなってきたね。」
「うん。これぐらいの気温の時に初めて林檎と会ったんだって懐かしく感じているよ。」
「え。そうだっけ。同じ時期じゃないと同じ環境は楽しめないと思ってた。」
「気分的にだから正しくはないから」
深堀されると恥ずかしくなってくる。話を逸らす。
「文化祭まで残り三日だね。ちゃんとできるかな。」
「できるよ。失敗したならその時はフォローしてやんよ。」
「失敗する前にしてくれるのがいちばんありがたいのだけれど。」
「失敗も思い出になるからさ。」
確かにそうなのかもしれない。今、林檎と制服を着て、文化祭の話をしながら帰宅するこの光景にいつか思い出し、涙する日が来るのかと思うと、寂しくなる。
一番星を指さす林檎の横顔を眺めながら、私は遠い未来の心配をするのだった。
忙しかったんです……




