11.一瞬を終わらせないために
それは、花火大会での旅館への帰り道でのことだった。公園で手持ち花火をする二人の少女を見かけた。
浴衣であるのをみるに彼女たちもきっと花火大会の帰りなのだろう。
「小説とかではさ、花火大会の後によく手持ち花火するよね。あれって、どうしてなのだろう。」
林檎は少女たちを二度見した後に考えている。
「どうしてだろうね。浴衣とかで、長い時間いるのってどちらかと言えば苦しいけれど。」
「ならさ。やってみよう。」
林檎がさしているのは、コンビニの中に売られている、手持ち花火である。
私たちはもう一泊をしていく予定ではあるので、問題はない。
「そうだね。」
二人で三千円分の花火を購入した。多すぎるかとも思われたが、短いと、後悔するよりは良いだろう。
コンビニで花火を買い終わる頃には先ほどの少女たちの姿は見えなくなっていた。
バケツ代わりに冷凍ミカンの空き缶二つを使う。
ゴミ箱が見当たらなくて良かったと、感じたのはきっと人生で初めてだ。
私たちは様々な色に光る花火をひたすら消費した。
半分ほど消費し、二人で地面に置いたまま使う花火を眺める。
「これといった理由見つかった?」
「うーん。火が好き?とか?」
「いやいや。焼死は試さないでよ?」
「んふ。」
笑うのを我慢したせいで変な笑いが出る。
「ちょっと何その笑い方。なんの影響でそんな風になるの。」
林檎は声に出して笑っている。
「えー。焼死はできなかったんだよ。やけどは、皮膚の表面ダメージになるから案外すぐ直るらしいからね。あ。死んでないから怒らないでね。」
「想像したらずっと痛いんだよね。それに「んふ」は、流石に・・・」
林檎は一度変な目で私を見るとまた笑いだす。
何をそんなに。あ・・・
「そういう趣味じゃないから!」
「次のクラスの自己紹介では私の躰が頑丈です。みたいな感じで、自分のことを痛めつけるが趣味です。って言えそうだね。」
あははと、空に向けて笑う林檎が楽しそうならばいいか。
みんな大好き。最後の線香花火。
「どっちの火玉の方が耐えられる時間が長いか勝負しよう。」
私は彼女に一つ提案をする。
「笑いすぎて、手が震えてすぐ落ちちゃう。」
いつまで笑うきなんだ。
「よーい。スタート!」
無理やりスタートしてやる。
「くう。まだ笑い終わっていないのにぃ。」
顔を赤らめてまで笑うので、まるで林檎だ。
今日は長い一日だ。これから旅館に戻ってからもあるのだ。
「あ。」
私は気がつく。
「どうした?」
「ううん。落ちかけただけ。」
林檎には教えない。だって知られたら恥ずかしいから。
結局なぜか私が負けた。
帰りの増えたゴミ持ち役になったがコンビニ袋の持ち手の片方を林檎にとられたままである。
手持ち花火をする理由。それは、きっと少しでも長く一緒に居たいからだろう。
今の私は、少しでもこの時間が続けばいいと思ったから少しは違うが大きくは間違っていないだろう。
旅館が見えてくる。
「結局、理由は分からなかったね。」
「そんな簡単に分かったら、小説家も表現に苦労しないんじゃない?」
「まあ。そうだね。楽しかったし、ちょっと袋を開けた時には多いかと思ったのに、最後はまだ足りないと思ったぐらい。無駄ではなかったね。」
私は1人、にやつく、今回は変な笑いが出なくて良かった。答えは思ったよりも近くにあるものだ。それに気がつかず答えを云う姿が可愛く見えるものだから。
今日は、同じ場所に帰るものだから、林檎は気が付けなかっただけだろう。




