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お昼寝のつもりが爆睡してしまったらしい。
お腹が空いた……夕食を食べ損ねたので当然である
(しょうがないか。昨日は怒涛だったもんね。でも誰も起こしに来ないのかしら……)
昨日まであまり気にしてなかった事に気づく。私自身の記憶にも少しモヤがかかっているのだ。
(前世の影響……?)
ベルでメイドを呼ぶ。
「おはようございます。お嬢様。」
昨日とは違うメイドがきた。
(あれ?私伯爵令嬢よね……?高貴な令嬢って専属のメイドがいるもんじゃないのかしら……)
気のせいかもしれないが、ささいな違和感。
「お腹が空いたの。朝ごはんをいただきたいのだけど」
「かしこまりました。すぐお部屋にお持ちします」
私はさらに首を捻る。
(あれ…家族で食べたりはしないのかしら。)
(それに食べるなら食堂だと思ったのだけれども…)
考え込んでいるうちに、部屋に食事が届いた。
美味しそうなパンとスープとサラダだ。
(よかった。別に虐げられているわけではないのね。)
口に入れると、とても上品な味がした。
(よかった。毒が入ってるとかではないのね。)
メイドがお茶を注ぐ。
「あ、お茶いつもと違うものも飲んでみたいのだけど、種類を変えてもらえない?」
「………はい。かしこまりました。何かご希望がございますでしょうか?」
お茶を注ぐのをやめて少し間があいた。
希望と聞かれても紅茶の種類なんて全然わからない。
「……ごめんなさい。紅茶の種類なんて全然わからないのだけど、なんだか今日は今まで飲んだことのないものに挑戦したい気分なの。」
自分で言いながらどんな気分だよ。とツッコミたくなる。
メイドの顔をチラッと見ると目を見開いて固まっていた。
(あれ?どうしたのかしら……)
「………すぅ……かしこまりました。料理長と相談してお持ちします。新しい紅茶をお持ちするのにお時間がかかると思いますので、それまでこちらの紅茶でお食事をお楽しみくださいませ。」
少し深呼吸して一気に捲し立てて、メイドは出ていった。