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お茶会から逃げるように帰ってきた私。
「お嬢様どうされたのですか!?」
慌ててメイド達も追いかけてくる。
「ちょっと!ひとりにして!!!」
私は自室に着替えもせずとじこもった。
(落ち着け。落ち着くのよ)
まず、日記帳に整理して書くことにした。
ここの舞台は乙女ゲーム「初恋:逆ハーですけどなにか?」の舞台だ。ヒロインを囲んでさまざまな男達と同時進行で恋愛し、最後は多夫一婦というなんとも欲望にまみれたゲームだ。前世の夫しか知らない私は結婚する前もっと遊んでおけばよかったという後悔からせめて擬似でもいいから沢山の男の人から愛を囁かれたいと思ってのめり込んでしまった。
攻略対象は7人。そのうちの1人がアルド王子だ。
甘い顔と声優が推しの低音ボイスで最初は王道ルートだと思って攻略を始めたが、これが鬼畜の難易度だった。ヤンデレという設定があるが故にちょっと選択を間違うとあっという間にバッドエンドにいってしまうのだ。しかも、婚約者が自分より好感度が高いと敵認定されてバッドエンド。婚約者から嫌われるとバッドエンド。婚約者に好かれつつ、王子にも好かれないといけないという、もはや何を攻略しているのかわからず、何回やり直したか覚えてない。
(やり直しすぎて、印象深いシーン以外は忘れちゃったよ。。。)
どこに地雷があるかわからない王子殿下。そんな恐ろしい人と婚約者になんてまっぴらごめんだ。
ゲームの舞台は学園だったはずだ。
(今は12歳…ゲームの舞台は学園で16歳だったはずだから、ヒロイン登場まであと4年……ヒロインが登場さえすればヤンデレ王子はヒロインに夢中になるだろうから……それまで何とかにげのびなきゃ…)
ヒロイン目線で鬼畜だったのだ。婚約者目線でも鬼畜なはずだ。どうにかして婚約者から逃れないと幸せはない。婚約者がどうやって婚約に至ったのか、王子の地雷などを書き出そうとした。
「…………」
ゲームの中で婚約者と仲良くなった記憶があるのだが、婚約者から王子の話が全く出てきたことがない事に気づいた。
(そっか……そりゃ自分の婚約者を取ろうとしてる奴に婚約者の話はしないか…)
冷静に考えれば至極真っ当であるが、私にとって致命的である。
(えっと、つまり私と王子殿下が何故婚約に至ったのかとか、何して過ごしたとか……え?情報皆無??)
まるでゲームの内容が役に立たない。
唯一の知り得る王子の地雷は
『愛している人と王子との仲を邪魔すること』
これしかわからないのだった