2.プロローグ
「失礼いたしました……少し緊張しておりますの。」
今できる精一杯の返事をする。
一刻も早く帰って頭の整理と今後の方針を考えたいところだが、今はそれどころじゃない。
とにかくこのお茶会を可もなく不可もなくすごし、自然と婚約者候補から外れる。
(選ばれたら最悪。選ばれなくても、私が未来の婚約者に少しでも嫌われたら……死あるのみ!?)
変な汗がタラタラと落ちてくる。
「そうなのかな……気のせいならいいんだけど」
(気にかけないで!?今私はパニック状態よ!?
お願い!どっかいって)
周りにはたくさんの綺麗な令嬢方がいらっしゃる。
王子が私に気をかけていらっしゃるから、心なしか目線が痛い……
「アルド様〜♪アンナもおしゃべりしたい〜」
「バンズバルク男爵令嬢。控えなさい。その、間延びした話し方は殿下に失礼よ。」
全貴族の適齢の令嬢が集まっているから牽制しあって王子殿下の周りでバチバチするばかり。
「シルリア嬢はどんな紅茶が好きなのかな?新しいものを用意させよう。」
アルド王子はまた私に話しかける。お茶が口に合わなかったと思ったのだろう。ぶっちゃけ、そんな事はどうでもいい。王子と会話してしまっている現実がまずい。王子に幻滅される方法……淑女としてはあり得ないが……
ガタン!!
思いっきり立ち上がった。
「お、お花をつみに行ってまいります!!!」
大声で叫んで
(今のうちに)
ドレスの裾を掴み、走ってお茶会からダッシュした。
「え?……ちょっ…」
後ろで王子殿下が慌てている声が聞こえたが、どうでもいい。
私は家にかえる!
ヤンデレ王子の婚約者なんてごめんだ!!