17.sideエドウィン
「「え!?!?」」
リリーと俺は同時に驚いた。
「私の護衛はこの人にするわ。」
シルリアはアメジストの様な綺麗な瞳でじっとこっちを見て再びいう。
いや///かわいっ!………っじゃなくて!!
「いやいやいやいや!!むりむり!!俺って忙しいもん。あの筋肉ゴリラの相手でいっぱいいっぱいだよ!」
そうなのだ。総隊長:バーナード・ハドソンこと筋肉ゴリラは書類作業が壊滅的にできない。奴は戦闘においては右に出るものがいないが、それ以外は壊滅的なのだ。これで仮に俺が護衛を引き受けようもんなら、総隊長の補佐を降りなければならない。折角築き上げた体なのだから、こんな事で諦めたくない……
「護衛なら、実力がしっかりしている人がいいわ。」
「それはそうだと思うけど!だから、総隊長からメモ貰ったろ?その中から選ぼうぜ」
「貴方はこの字が読めます?」
「…………」
総隊長め……今度文字を書く練習をさせてやろうか……
俺は天をあおぐ。
そもそも、俺はシルリアに弱いのだ。
俺には前世の記憶がある。
前世で妹がいた俺は妹のススメであるゲームをやった。ゲームのタイトルは忘れたし、内容もそこまで面白いと感じなかったので、あまり覚えてないし、思い出そうとも思わない。ただ、アルド王子殿下の婚約者シルリア・ヴィズナ伯爵令嬢が可愛くて可愛くて、二次元なのに惚れた。ゲームでシルリアが出てくるシーンは逃したくなくて、何回か繰り返した記憶がある。
前世で惚れた女が目の前で生きて動いている。
いや、ぶっちゃけシルリア目当てでこのヴィズナ家の隊員になった。一目でも見れたら福眼なんて思っていた。それがどうだ。今日総隊長から
「シルリア様の護衛を選ぶサポートをしろ」
とのご命令があった。俺はそれだけでも浮き足だっていたというのに……
(この俺が護衛だなんて……幸せすぎて明日死んでも後悔はない…天にも昇る思いだぜ。)
でも現実問題、自分の願望だけではどうにもならない。
(仮に俺が引き受けちまうと、色んな業務に支障がでてちまう)
身軽じゃない自分に嫌気がさす。こんな事なら総隊長の補佐なんて引き受けなければよかった。総隊長の補佐なんで完全なババでしかない。
「貴方以外の護衛は嫌だわ。総隊長には私から話を通しておくわ。このミミズみたいなメモをみてどうやって護衛を探せばいいの?って」
「ぶっ……」
思わず笑ってしまう。
「何か言われても貴方が字が汚いのが悪いと言ってやるわ!私エドウィンが欲しいんですもの」
「ははっ!!!」
ゲームでは見た事のない、ちゃめっけ溢れるシルリアに癒される。
(でもなんでこんな頑ななんだ?)
自分は何か訓練していたわけでもない。
(実力なんてわからないだろうし……今日が初対面なのに。なぜ俺にこだわるんだ?)
俺が不思議そうにしていると、シルリアが俺の耳元で囁いた。
「私もゲームの記憶があるの」
「………っ!!!」
思わずばっと離れる。
「私貴方ともっと仲良くなりたいわ。」
彼女は、人をし魅了する優美な笑顔で微笑んだ。