6.シドウェルの告白
アレクゼスと、シドウェルは、イザリアから夕食の招待を受け、準備が整うまでの間、小広間で待たされた。カリヴァは秘書が預かってくれた。
アレクゼスは、椅子には座らず、何か考えている様子だった。シドウェルは、当然、自分も座らず、国王を見守っている。訓練の段取りを考えなければならない。と、シドウェルは思う。
「君と女王陛下は、随分気が合ってるんだね」
ふいに、国王の声がして、シドウェルは思考を中断した。
「はい?」とっさに、何の配慮もない返事をしてしまう。
アレクゼスは、苦笑を浮かべる。
「なんだか、羨ましかった。でも、二人の付き合いがあるからこそ、同盟も早く出来たのだから、こんな贅沢な事は言ってはいけないね。申し訳ない」
シドウェルは、胸が締め付けられるようだった。やはり、早く言わねば。
「あの、先程の話なのですが」
「うん。後で、と言っていた?」
「はい」
シドウェルは、そう答えた割に、次の言葉が出なくなった。
暫くの沈黙の後、流石にアレクゼスが不思議に思い、
「どうした?」
と、訊いて来た。
それを知りたいのは、シドウェルの方だった。まるで籠城を決め込む城門の様に、自分の口が固く閉じて開かない。
同盟が成れば、お話ししたいと思っていたのに。
この話をするのに、シドウェルは、女王の許しも得ていた。
しかし、目の前の、国王を見ていると、この方をむやみに傷付けはしないか、不安になった。自分が信用を失わないか、不安になった。今まで、務めを果たす為なら、何でも言えたし、何でも出来たのに。これは自分の個人的な感情で、務めではないからか。
国王は、辛抱強く待っていた。シドウェルは、有難くも、自分が情けなく、気ばかりが焦った。やっと口を開きかけた時、
「お待たせ致しました」と、侍従から声が掛かった。シドウェルの口は、静かに閉じた。
二人は導かれるまま、食堂へ移動した。そして、女王と夕食を共にした。
シドウェルの話は、先延ばしになった。