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第97話 ハーレムの基本編⑤ 転移勇者VSゴブリンキング

「勇・者・様♪

 ウフフ。」





私はハーレム要員としての責務を全うするため、勇者を慕い、愛する努力を続けていた。

その一環として、今は彼と手を握って歩いてるの。

もちろん、飛び切りの笑顔を見せながらね。



・・・けれど、何故でしょう。

どこか窮屈に感じるわ。



別に勇者とスキンシップを取るのが、嫌で嫌で仕方ない訳じゃない。

でも私は最初から、他人とベタベタくっ付くようなタイプじゃないもの。

男女問わず、人とは一歩距離を置いた所から接する方が落ち着くのよね。


とは言え、今の私は勇者のハーレム要員の一人。

いつまでもそんな事じゃいけない。

誰かを慕い、愛するなんて簡単な事くらい、出来るようにならなくっちゃ。



「・・・。」



ただまあ勇者も勇者で私に対して、いつも以上にぎこちない気がするわ。

顔を赤らめつつも、申し訳なさそうにしていると言うか。

けれどその理由はわからない。


「そう言えば、王女。

 腕を組むのは止めたんだね。」


「はい。

 その方が歩きやすいですもの♪

 もうコケて、迷惑を掛けたりしませんから。」


腕を組むよりも、手を繋ぐだけの方が歩きやすい。

これは私にとって、新発見よ!!


「そんな理由でかぁ・・・。

 でもそ~いう台詞を聞くと、王女らしくてホっとするなぁ。」


よく分からない所で安心した表情を見せる勇者。

・・・昨日から彼が何を思ってるのか、サッパリ分からないわ。

男心って難しい。



「・・・。」


「・・・。」



な、なんとも言えない空気ね。


「やれやれ。

 思春期共はめんどくさいわねぇ。」


聖女の茶々が妙にありがたく感じる。

・・・あなたも年齢的には十分、思春期だろうってのはともかく。

そんな感じながらも、ようやく次の町が見えて・・・。



「あっ!?」



一歩離れた場所から、私達を不思議そうに見ていたクロが急に大声を上げた。

・・・彼女がこういう反応を示す時は大抵。


「クロ!!

 もしかして近くにモンスターがいるの!?」


私は勇者から手を放し、周りを警戒する。

手を繋いだままじゃお互い、戦闘の邪魔になって危険だもの。


「うんっ。

 誰かがモンスターに追われているみた~い。」


「なんだって!?」


「た、助けてくれーーーーーーーー!!!!」


クロが話していた通り、一人の男が悲鳴を上げながら走って来るのが見える。

そんな男の後ろから3体のゴブリンが唸り声を上げながら迫っていた。


でもあれはただのゴブリンじゃないわ。


「ホブゴブリンが2体にゴブリンキングが1体・・・。

 あらあら、災難ねぇ。」


「呑気にしてないで、なんとかしてくれ~~~~。」


ホブゴブリンはゴブリンの上位種、ゴブリンキングは更にその上位種よ。

その実力は通常のゴブリンよりもはるかに高く、数が集まれば中級冒険者でさえ、全滅させてしまうの。


「王女!!

 あいつらを倒すために何か魔法やスキルを使った方が良いかい!?」


「いえ・・・。

 町が近い以上、あなたの魔法やスキルを使うのは危険です。

 しかし剣だけで3体同時に相手取るのも不安ですね。」


勇者の魔法やスキルはドラゴンをも一撃で倒す反面、破壊力がありすぎて、誰かを巻き添えにしかねない状況では迂闊に頼れない。

だけどホブゴブリンやゴブリンキングの群れを剣だけで倒すなんて、達人級の腕前が必要よ。


・・・あれ?

ミスリルソードを持った勇者なら、意外となんとかなるのかしら??

けどだからって、わざわざ危険を冒さなくても良いわ。


なら・・・。


「ここは相手の動きを止めながら、1体ずつ倒していきましょう。

 聖女!!

 防御魔法であいつらを1~2体、閉じ込めてくれない?」


「わかったわ。

 サード・バリア!!」


「グギャ!?」


聖女がランク3の防御魔法を使い、ゴブリンキングをバリアの中に閉じ込める。

防御魔法は本来、自分や仲間の身を守るために使うもの。

けれど、敵に向かって破れないバリアを放つ事で、相手の動きを止める用途にも使えるわ。


「グギャ、グギャ!!

 ・・・ギーーーー!!!!」


いくらゴブリンキングでも、ランク3の防御魔法を打ち破るなんて無理よ。

ドラゴンやヒドラでもなければ壊せないくらいの強度は誇るからね。


「「グギャギャーーーー!!!!」」


「あっちのホブゴブリンは私が足止めします。

 ウインド!!」


私は1体のホブゴブリンに向かって、攻撃魔法を放つ。


『ウインド』はランク1の風魔法で、強風を発生させるわ。

軽く、非力なモンスターなら、あっさりと吹き飛ばせるの。

風そのものに殺傷力はないけど、思いっきり吹き飛ばして壁にぶつけたりすれば、大きなダメージも与えられる。


「グギャ!?

 ギ・・・ギ・・・。」


とは言え、所詮はランク1の魔法。

ホブゴブリンを易々と吹き飛ばせる程の勢いはない。

でも足止めの役には立っているようね。


「勇者様。

 もう一体のホブゴブリンをお願いします!!」


「ああ、任せてくれ!!」


今の彼なら1VS1であれば、ホブゴブリンなんかに負けないはずよ。


「グギャギャーーーー!!!!」


ホブゴブリンが手に持った棍棒を勇者に向かって振り回す!!

彼は手に持ったミスリルソードで迎え撃つも・・・。


「グギャ!??」


「あれっ?」


剣と棍棒による鍔迫り合い・・・にすらならず、ホブゴブリンの棍棒はあっさりと斬り飛ばされる。

さすがはミスリルソードね~。

並の棍棒とは強度が違いすぎる。


「・・・。

 えいっ。」


「グギャア!!??」


戸惑うホブゴブリンに向かって、勇者は割と容赦なく剣を振るい、一刀両断した。

彼も段々逞しくなってるわね~。


「よしっ!!

 残るは後2体。」


「では今から風魔法を止めますので、その隙を狙って下さいね。」


「分かった!!

 ・・・って、隙?」


「ギー、ギー・・・。」


ホブゴブリンは未だ、私の風魔法に吹き飛ばされまいと、一生懸命踏ん張り続けている。

・・・そんな健気なホブゴブリンに向かって使っている『ウインド』を急に止めたら、どうなるか。


「ギウワァ!??」


強風に抗うため、前のめりになりすぎていたホブゴブリンは、突如止んだ風に対応出来ず、バランスを崩す。

挙句、地面に顔をぶつけてしまったの。


「今よ、勇者!!」


「・・・。

 なんかごめんね。」


うつ伏せになっているホブゴブリンに対し、申し訳なさそうにしながらも一突きする勇者。

残るは聖女に閉じ込められているゴブリンキング1体のみ。


「グ・・・ギ・・・。

 ギャウ、ギャウ!!」


バリアを壊せずに閉じ込められたままのゴブリンキングが、腹を立てながら足踏みを続けている。


「そっちは片付いたようね。

 じゃ、そろそろバリアを・・・。」


「待って、聖女。

 ・・・勇者様。

 バリアの前で剣を上段に構えたまま、待機して頂けますか?」


「えっ!?

 別に良いけど、こうかい?」


訝し気にしながらも、素直に私の言葉に従い、勇者は剣を構える。


「では聖女と上手くタイミングを合わせて下さいね♪」


「タイミングって・・・。

 まさか王女。」


「・・・あ~。」


勇者も聖女も私の意図に気付いたようね。


「ギ?

 ギギャ、ゲハハハハハッ!!」


気付かないのはゴブリンキングばかり。

多分、勇者が自分を攻撃したくても出来ず、マヌケに剣を構えているばかり、とでも考えたんでしょうね。


「じゃ、解くわね。」


「ハァ!!」


「グギャア!!??」


けどあなたをバリアで閉じ込めたのは、勇者の仲間である聖女だからね~。

勇者にとって都合の良いタイミングでバリアは解けるのよ。


急にバリアが解け、急に攻撃されたゴブリンキングは、油断しまくってたのも手伝って、あっさりと斬り伏せられたわ。

・・・少し不安だったけど、どうにか勇者に魔法やスキルを使わせる事なく、ゴブリンの上位種の群れを倒せたわね。

良かったぁ。


「なんだかなぁ。」


なのに勇者ってば、ちょっと呆れた感じでボヤいてるわ。

割と簡単にゴブリンキング達に勝っちゃったから、肩透かしを食らったのかしら?



って、そんな事を気にしている場合じゃないわね。

今こそ例の本に記されていた秘技を持って、勇者に愛を伝えるチャンスよ!!


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