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第94話 ハーレムの基本編② お慕い申し上げていました?

本作の主要メンバーは正統派ヒーロー、ヒロインからは程遠いキャラクターばかりです。

なので、真っ当なストーリー展開はあまり期待しないで下さい。

・・・今更な話ですがw

「そ~言えば、いつになったらチュウオウ国に着くんだろう?」


「そんなに慌てなくて、い~じゃない。

 のんびり行きましょうよ♪」





今日も今日とて、いつも通りチュウオウ国を目指して、転移勇者一行は旅を続ける。

けど今日をいつも通りに振る舞う気はない。


ハーレム要員にとって最も大切な事は、転移勇者を慕い、愛する事・・・。

それくらい、私にも簡単に出来るって所を見せてあげる。


「勇・者・様♪」


「?

 ど~したんだい、王女。

 何か良い事でもあったの?」


さっそく、例の本で勉強した決め台詞を勇者に届けるわ!!





「初めて出会った時から、あなたの事をお慕い申し上げていました。

 私は誰よりも勇者様を愛しております。」





どう?

聖女、クロ・・・そして勇者。


誰かを愛するなんて、簡単でしょ?

だって『愛してる』って言えば良いだけだもの。

それにさっきの台詞は、例の本にも愛を伝える例文の一つとして使われている程の名台詞。


この言葉を聞けば誰もが、私は勇者を愛している、と思うはずよ。


「・・・。」


私の言葉を聞き、勇者は真顔のまま顔を近づけ・・・。

・・・って、え?





「・・・。

 熱はないみたいだけど・・・。」





自分と私の額を合わせながら、そう呟いたの。

・・・え?


「王女・・・。

 別に急ぎの旅じゃないんだ。

 頭の調子が悪いなら、我慢せずに話してくれないか?」


「いや、あの。」


「エミリー。

 今日の王女、理由はわからないけど、凄く調子が悪いみたいなんだ。

 お願い、回復魔法を掛けてあげてよ。」


勇者は心の底から心配そうな表情で、聖女に懇願する。


「ちょちょちょ・・・。

 ちょっと、勇者様!?」


なんで愛する気持ちを伝えただけで、調子が悪い~なんて話になるの!?

・・・ほら。

聖女なんて手に額を当てて、呆れ果てているじゃない!!


「調子なんて、全然悪くありませんよ!!

 よく見て下さい、勇者様。

 どう考えても、いつも通りの私じゃありませんか・・・。」


私は謎に調子の悪さを疑う勇者に向かって、一生懸命いつも通りですよとアピールする。

しかし・・・。





「・・・なんだと?

 貴様っ!!」





途端、勇者は険しい表情で私から距離を取り挙句、不殺の剣を突き付けた!!


「ゑ?

 嘘でしょ!?」


「ご主人様!?」


何故か呆れていた聖女も、不思議そうにしていたクロも、勇者の豹変っぷりに驚きを隠せない。


・・・そして、私は勇者に嫌われているはずだ。

そう思ってたにも関わらず、内心ショックを受けていたの。

やっぱり私なんかが、勇者を愛するだなんて間違って・・・。



「王女に化けて、何を企んでいるんだ!?

 この偽物め・・・。

 本物の王女を返せ、返すんだ!!」


「に、偽物ぉ!!??」


「なるほど。

 そうきたか~。」


「本物なのに、偽物!?

 ???

 よくわかんな~い。」



と、思っていたら、まさかの偽物扱い??

え?

え?

なんで、どうして!?



「いやいや、勇者様!??

 誘拐犯の娘である私に愛されるなんて、冗談じゃない!!

 ・・・と、言うのであればわかります。


 けど、偽物ってなんですか??

 偽物って・・・。

 どこをどう判断したら、私が偽物になるのですか!?」



斜め上の疑いを掛けられ、私は慌てて本物である事をアピールする。

ど~して勇者は予想外のリアクションばかり取るのかしら?


「・・・???

 あるぇ~??

 偽物とばかり思ったけど、実は本物?」


不殺の剣を突き付けながらも、勇者が戸惑い始める。

彼がど~いう基準で、私を本物 or 偽物だと判断しているのか、ちっともわからないわ。


「ご主人様~。

 あの王女様は偽物じゃないよ、本物だよ・・・。

 いつもと違って変だけど、本物だよ。」


『索敵』で気配を掴むのが上手なクロには、私が本物だとわかるようね。

・・・『いつもと違って変』なんて言い草には、引っ掛かるものがあるけど。


「クロがそう言うなら、やっぱり彼女は本物の王女・・・なのかな?

 ・・・まあ、王女が変なのはいつもの事だけどさぁ。

 今日はいつもに増して変だもの・・・。」


そんな当然のよ~に変な女扱いされ続けたら、別の意味でショックだわ。


「(´Д`)ハァ…

 このままじゃ埒が明かないわね~。

 あのね、テンイ。」


聖女も私が本物だと確信してるみたいね。

でも、勇者の意味不明な誤解を解く自信なんてあるのかしら?


「確かにこの世界には別人に成りすます方法も少なくないわ。

 その手の類の魔法やアイテムなんかがあるからね。

 その気になれば別人が王女そっくりに姿を変える事も不可能じゃない。」


彼女の言う通りよ。

誰でも簡単に出来る訳じゃないけど、この世界には別人に成りすます方法がいくつか存在するのも事実。


「けれど、いつも一緒にいる人に成りすますなんて、決して簡単な事じゃないわ。

 いくら姿形をそっくりに変えたとしても、ね。

 だから別人に成りすます時は、成りすます相手の人となりをよく観察した上で行うものよ。」


「そりゃ、そうだろうけどさぁ・・・。」


「・・・つまりね。

 偽物がこんな怪しさ剥き出しの態度なんて、取るはずないのよ!!

 普段の態度もロクに調べないまま、他人に成りすまそうなんて、バカでもやらないわ。」


私に向かって指をビシっと指しながら、力説する聖女。


「な・・・なるほど。

 オレオレ詐欺みたいに、安全な場所から他人を騙す訳じゃないもんね。

 偽物とバレたらどんな目に合うかわからない以上、偽物があんなに怪しい態度なんか、取るはずないよね!!」


怪しすぎるから偽物じゃない、本物だ!!

・・・って、ど~いう理屈よ!?

意味不明よ~~~~!!


「けどじゃあなんで、王女は急に脈絡のない嘘を付いたんだろう?

 今までも都合が悪くなったら、バレバレの嘘を付く事はあったけどさ。」


私の愛してる発言を完全に嘘認定しながら語る勇者。

一切の迷いなく嘘認定するなんて、あんまりじゃないかしら?


「王女なりにいつまでもあなたによそよそしいのは良くない、って考えたんでしょ?

 だけど距離の詰め方を全然理解してないから、急に妙な事を言い出したのよ。」


「そうなの?

 王女。」


「ええ、まあ・・・。

 『妙な事』って言い草には、納得しかねますが。」


いくら事情があるからって、ハーレム要員として最も大切な『愛する』事を疎かにしてはいけない。

そう思ったからこそ、頑張って愛を囁いたんだもの。


「・・・そっか。

 ごめんね、王女。

 偽物扱いした挙句、剣を向けたりしてさ。」


「いえ、それはもう良いんです。

 それ以外のところで色々とショックを受けましたから。」


ナチュラルに変な女扱いされたり、怪しすぎるから本物認定されたり・・・ね。

どうしてこんな結果になってしまったのか、私にもわからない。





「けど、私は諦めません!!

 あなたを慕い、愛するためにも精一杯、頑張ります!!」





愛『される』のは、非常に難易度が高いかもしれない。

けれど愛『する』なんて、誰であろうと自分自身の意志で簡単に出来る事だもの。


「・・・お、おう。

 愛する事を頑張るって、もう訳が分からないけど。」


「まっ、今日一日くらいは付き合ってあげたら?

 あなただって本当はもっと王女と仲良くしたかったんでしょ??」


「うん、まあ・・・。

 でもすっごく不安だなぁ。」


なんで不安がっているのか、全然理解出来ないけれど。

ハーレム要員としての責務を全うするため、私は全力で勇者を愛してみせるわ!!


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読んで頂き、ありがとうございました。

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