第89話 チンピラ編② 勇者最大の強敵登場!?
「ちょっと待てよ、そこのクソガキ!!」
ギルドカードを登録し、クエストへ行こうとする勇者に向かって怒声が響く。
この声は・・・。
「お、お前達はまさか!?」
「こんな綺麗な女を二人も侍らせて、良いご身分だな。
おい!!」
人相だけはやたらと悪い三人のチンピラが、突然勇者に絡み出す。
「チンピラ共!!」
「誰がチンピラだ?
ゴルァ!!」
誰がどう見てもチンピラじゃない・・・。
ちなみに今まで出会ったチンピラ共とは別人で、初対面よ。
「?〜。
二人って、あたしもいるよ〜。」
「・・・。
てめ〜はあと八年経ったら、綺麗な女扱いしてやる。」
「そこは真面目に答えなくてい〜から。
で、テンイに何の用なの?」
呆れ果てた様子でチンピラの目的を尋ねる聖女。
ジャクショウ国の時みたいに、あんまり強そうに見えない勇者に喧嘩を売りに来たのかしら・・・。
彼も剣を持って真剣な表情をしたら、雰囲気が出て強そうに見えるけど。
「・・・な〜に。
最近、噂の転移勇者様の顔を拝みに来ただけさ。
だがこ〜んなナンパ師みたいな奴だとは思わなかったぜ。
ギャハハ!!」
「ナンパ師って・・・。
父さんじゃないんだから。」
見た目だけの評価なら、的を得てると思うけど。
「野良ドラゴンやヒドラ、ワイバーンをぶっ倒したとか、エンシェントドラゴンを配下にしたとかな。
そんなくせぇ噂ばっか流れてるけど、ぜって〜デマだろ?
最近じゃ、あの悪名高い卑劣剣士ヒーツを懲らしめたんだっけ〜??」
「しかも極めつけは最強の山賊王ジークに勝った、だぜ?
自演にしたって誰も信じねえだろ、そんな大それたデマ。
ジークにバレてぶっ殺されなきゃい〜がな〜、ヒャハハ。」
「もうジークは死んでるって。」
・・・ぜ〜んぶ事実なのにデマ扱いされる勇者も可哀想ね。
そりゃまあ、事情を知らない他人がデマだと思う気持ちはわかるけど。
「ねえねえ、王女。
ど〜して竜を倒したり、アビスを召喚した事よりも、ジークに勝った事の方が凄い!!
みたいな扱いなの?
確かにあいつ、ヤバい奴だったけど、ただの山賊でしょ??」
けど勇者にとって功績をデマ扱いされた事よりも、ジークの大袈裟すぎる扱いの方が気になったようね。
まあジークが山賊だったってのは事実だけどさぁ。
「ジークは『ただの』山賊とは言えませんよ。
パワーだけなら、この世界の神々とも渡り合えるくらいですからね。
むしろ山賊なんかやっていたのがおかしいくらいです。」
「・・・ランク5の魔法の使い手とは言え、大袈裟すぎない?
あのジークがこの世界の神々と渡り合えるなんてさぁ。
山賊やってたのが不思議なくらい、強かったってのには納得だけど。」
今の所、勇者が純粋な力比べで負けそうになったのってジークくらいだもの。
しかしよくよく考えなくても、神様レベルに強い山賊がいるこの世界って、既に末期なのかしら?
「いくら事実っぽい感じに話したって、騙されね〜ぞ?」
「そ〜んな強いんだったらさぁ。
その実力を俺達に見せてくれよ〜。
転移勇者様♪」
「んでもって、もし俺達が勝ったらなぁ。
お前の女は全員、俺達のものな。」
「勝手に決めないでよ。
傍迷惑なチンピラねぇ。」
聖女の言う通りよ。
にしても勇者もよく絡まれるわね〜・・・。
って、呑気に考えてる場合じゃないわ。
チンピラ共に脅された勇者が恐怖のあまり、また力を暴走させたら・・・。
・・・と、心配だったんだけど。
「よ〜やくリベンジの機会が回って来たか。
俺は嬉しいよ。」
え″?
何、その反応は。
「チンピラ共が、掛かってこいよ・・・。
今日こそお前達に格の違いを見せつけてやる!!」
「「「んだと、ゴルァ!!」」」
そして勇者は不殺の剣を構えながら、嬉々としてチンピラを挑発し始めたの。
え、ええええええええ!!!!????
「テンイったら、嬉しそ〜ね。」
「・・・あの〜。
勇者様?」
「大丈夫だよ、王女。
不殺の剣なら、やりすぎの心配もいらないしさ。」
ま〜、そ〜だけど。
「?〜。
ど〜してご主人様、チンピラさんと喧嘩、したいの〜?」
「ふっふっふっ。
それはね、クロ。
俺がこれまでチンピラ共に何度も苦汁をなめさせられたからなんだ。」
苦汁て。
「ジャクショウ国ではチンピラ共の迫力に押され、追い詰められた俺は・・・。
どういう訳か国中から怯えられてしまい、大泣きしまった。
全部、チンピラ共のせいだ!!」
「そ〜なんだ〜。」
『どういう訳か』って、ビビった勇者が魔力を暴発させたからでしょ。
しかも運悪く(良く?)、通りすがりの野良ドラゴンに命中させちゃうしさぁ。
「ある町では女の子に迷惑掛けるチンピラ共を、少し脅して懲らしめようとしただけなのに、さ。
・・・ど〜してか町をも揺るがす大騒動になって、居たたまれなくなった俺は町から逃げ出すしかなかった。
これも全部、チンピラ共のせいだ!!」
「あっ!?
それ、覚えてる〜♪」
確かスキル『巨大化』を使ったせいね。
普通の人が使っても、手に持つ武器を2〜3倍の大きさにする程度の効果よ。
けど勇者が使うと町すら壊しかねない程、武器のサイズが大きくなっちゃうの・・・。
幸い、物的被害も人的被害も0だったけど、あの時はとんでもない騒ぎになっちゃったわね〜。
「こんな風に俺はいつもいつでも、チンピラ共から酷い目に合わされ続けた。
だけどそんな日々とももうおさらばだ・・・。
今日こそチンピラ共に打ち勝ち、俺の強さを証明して見せる!!」
「「「「「・・・・・・。」」」」」
「?〜。」
・・・本人としては、滅茶苦茶カッコ良く決めてるつもりだろ〜けどさぁ。
すっごく情けない決意よね〜・・・。
「・・・なあ。
何をど〜したらチンピラとの喧嘩で、町をも揺るがす大騒動になるんだ?」
「ちっとも話が理解出来ね〜んだけど。」
「ってかさぁ。
話に出てきたチンピラ共、ただのとばっちりじゃね?」
意外と冷静に分析するわね。
確かに普通ならチンピラと喧嘩した所で、町をも揺るがす大騒動になんか発展しないわ。
側で見てきた私ですら、ど〜してあ〜いう事態になったのか、未だに理解出来ていない。
「それにチート能力を使わず、不殺の剣だけでチンピラ共に勝ったらさぁ。
異世界チートなんか貰わなくても、元から俺は強いって証明になるじゃん?
それってすっげ〜カッコ良くない??」
つまりチート能力無しでも、自分はチンピラよりも強いんだ!!
って、証明したいのかしら?
まあ不殺の剣って、壊れにくい所を除けば木刀以下の武器だし、勇者の言い分も間違ってはないわね。
でもチンピラよりも強い事を証明出来た所で、そこまでカッコ良いものかしら?
そもそもあなた、既にチンピラよりも強いヒーツに不殺の剣だけで勝ってるじゃない。
もう忘れたの?
「三人同時でもい〜ぞ〜?
さあ来い、チンピラ共。
今日こそ俺はお前達に勝つ!!」




