第88話 チンピラ編① 冒険者ギルドの仕組み
私は元ジャクショウ国の第四王女、デルマ。
今日も勇者のハーレム要員として、旅を続けているの。
「あっ!!
冒険者ギルドだ。
ねえねえ、久しぶりになんかクエスト受けようよ。」
「そうね~。
たまにはクエストを受けるのも悪くないかしら。
お金はいくらあっても困らないしね。」
確かにかなり久しぶりね。
まあそもそも、偽ギルドの件を含めても、クエストこなしたのって、たったの3回だけど。
お金の事だけを考えるなら、既にクエストを受ける必要がないくらい、貯まってるわ。
聖女がドラゴンなんかの超高級素材をかき集めては、いろんな町で売りさばいているから。
もう数年、遊んで暮らせる程度には稼げている。
でもまあ。
「よ~し、頑張るぞ~!!
いろんなクエスト受けて、いろんな経験積んで、もっと強くなるんだ。」
勇者が経験を積むって意味では悪くないでしょう。
あまりに危険すぎるクエストは避けるにしてもね。
こうして私達は冒険者ギルドへ入り、何か良いクエストが無いか探す。
「いろんなクエストがあるね~。」
「ん~・・・。
あっ!?
これなんかい~んじゃない?」
聖女が良いクエストを見つけたようだけど・・・あれ?
「クリンの実の採集、1個につき銅貨1枚?
・・・あなたにしちゃ、やけに報酬の安いクエストを選んだわね。
ど~いうつもりなの?」
クリンの実はイガルンと言うモンスターから取れる実でね。
甘さは控えめだけど、上品で素朴な味わいが人気の食材なの。
モンスターながら、イガルンは基本的に無害な生物よ。
だからクリンの実欲しさにイガルンのなる木を栽培している人も多いわ。
相場は基本的に1個につき鉄貨1枚って所かしら。
それを考えると、相場の約10倍のお値段なんて、とっても割高よ。
けどゴブリン討伐ですら、1体につき銀貨3~5枚は貰えるからねぇ。
クエスト全体で見れば、報酬はかなり安い方ね。
「報酬なんておまけよ、お・ま・け♪
天然のクリンの実って、すっごく美味しいのよ。
私達が食べる用にもいっぱい集めておきたいなって。」
「あ~、そ~いう・・・。
食い意地張ってるわねぇ。」
そう言えば、おんなじクリンの実でも天然物の方が高価で味も良いのよね。
「わ~~~~。
楽しみ~♪」
「なるほど。
じゃあ今回はクリンの実の採集クエストを受けよっか。」
「わかりました。」
まあ、いっか。
ヒドラなんかと戦うのに比べたら、大して危険じゃないもの。
私としても特に問題ないわ。
全員が賛成したのを確認し、聖女は受付に話し掛ける。
「そ~いう事だから、このクリンの実の採取クエストを受けるわ。」
「かしこまりました。
今、この町ではクリンの実が少々不足しているので助かります。
けど最近、イガルンの生息地に危険なモンスターが潜んでいるとの噂です。
気を付けて下さいね。」
「ええっ!?
危険なモンスターって、まさかドラゴンやワイバーン・・・。」
「・・・それはないですって。
もしそんなモンスターがウロウロしていたら、町中が大騒ぎですよ。」
勇者ったら、危険な目に合いすぎて、感覚がマヒしてるのかしら?
・・・同じ体験をしている私も注意しないとね。
「じゃあ、これ。
ギルドカードね。」
「かしこまりました。
・・・・・・・・・・・・。
・・・・・・ええええええええ!!!!????」
???
ど~したのかしら?
受付ったら、そんなに大声を出して。
「ゴールドカード??
あなた、まさかSランク冒険者ですか!?」
Sランク冒険者と聞き、周りの人達もざわめき始める。
・・・って!!
「聖女!!
あなた、いつからSランク冒険者になったの!?
・・・初耳なんだけど。」
「聖女って・・・。」
「あー・・・。
そ~いや最近、Sランク冒険者に昇格したんだっけ?
あなた達と旅する前はもうちょっとランクが低かったんだけどさぁ。
山賊王サマの1件がやたらと評価されちゃってね~。」
あ。
そういうことね。
「あれっ?
この世界の冒険者ギルドに、ギルドカードなんてあったんだ。」
「ありますよ。
普通はギルドカードで登録を行ってから、クエストを受けるのが一般的です。
・・・いろいろありすぎて、すっかり登録を忘れてましたが。」
今までは勇者が冒険者ギルドと関わった矢先、やたらと大事件が起きちゃってたからねぇ。
ギルドカードどころじゃなかったのよ。
「別にギルドカードなくても、クエストは受けられるわ。
もちろん、ある方がお得だけどね。」
「?~。
よくわかんな~い。」
「俺もよくわかんないや。
この世界の冒険者ギルドってど~いう仕組みなの?」
「話に聞いた限りはですね・・・。」
この世界には多くの地域で冒険者ギルドと言う名の仕事斡旋所があるの。
勇者の国で例えるなら『ハローワーク』と似てるわ。
そんな冒険者ギルドには本部もあってね。
『ギルドカード』はその本部で作られ、各支部に支給されているわ。
『ギルドカード』は魔法具の一種で、どのエリアの冒険者ギルドでも使えるようになっているの。
で、クエストをクリアした際、ギルド職員だけが持つ特殊なアイテムを使って、カードにポイントを加算しているわ。
そのポイントが一定以上になったら、ランクが上がってカードの色が変わるんだって。
最初のGランクなら、白色。
Fランクなら、青色。
Eランクなら、黄色。
Dランクなら、緑色。
Cランクなら、茶色。
Bランクなら、黒色。
Aランクなら、銀色。
Sランクなら、金色ね。
聖女の言う通り、ギルドカードがなくてもクエストを受ける事は可能よ。
けれどギルドカードを持ってる方が様々な場面でお得なの。
もし高ランク冒険者になれば、非公開のクエストを受けられたり、仮に違約金・賠償金が発生してもギルドが何割か負担してくれるわ。
高難易度クエストを受注した際、ギルドから支援を受けられる等のメリットもあるの。
低ランクの内でもギルドからの講習を少額で受けれたりするから、あって損はないでしょう。
「なるほどね~。
でもそんな便利なカードならさ。
落としたり、盗まれたりしたら、大変じゃない?」
「それも大丈夫です。
カードを購入する際、血を一滴垂らして本人登録も行いますから。
そうすると本人とギルド職員以外がカードを持った時、赤色に光り出すのです。」
「ふ~ん。
そ~やってカードの持ち主が本人かどうか、確認してるんだ。」
冒険者ギルドやギルドカードの説明はこんなものかしら。
「あなたのおっしゃる通りです。
ギルドカードは犯罪者でもない限り、誰でも銀貨1枚で購入出来ます。
是非、登録されては如何でしょう?」
「するする!!
俺、ギルドカード欲しい!!」
「勇者様ったら、興奮しすぎですよ。
けどせっかくだから、私も登録しようかしら。」
「かしこまりました。」
私達にとって、冒険者稼業はあくまでオマケだけど、登録した方が後々便利でしょうしね。
「あたしも~。
あたしもギルドカード、欲しい~♪」
「・・・あなたにはまだ早いかしら?
もっと大きくなってからにしましょうね。」
「え~~~~!?」
そりゃまあ、8歳のクロにギルドカードは早いかしら。
「残念だけど、今は諦めなさい。
大きくなってから、登録すればい~わよ。」
「ぶぅ~・・・。
いいなぁ。
ご主人様も王女様も。」
こうして勇者と私はギルドカードを登録したの。
まだGランク冒険者だけどね。
「やったぜ!!
俺の冒険者人生はここから始まるんだ。」
「テンイってば、テンション高いわね~。」
冒険者人生も良いけど、勇者ったら元の世界へ戻るって目的、きちんと覚えてるのかしら?
少し心配ね。
「・・・。
Sランク冒険者、聖女、山賊王、テンイ・・・。
まさか彼らは・・・。」
あらま。
受付の人ったら、何かぶつぶつと呟いてるわね。
周りの人達も私達を見ながら、ひそひそ話を続けてるし。
・・・まあ、あんまり気にしすぎてもしょうがないわ。
登録も終わった事だし、早くクリンの実の採取に向かいましょうか。
「ちょっと待てよ、そこのクソガキ!!」
!??
この声は・・・。
「お、お前達はまさか!?」




