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第87話 不殺の剣編⑨ それぞれの剣の道

「わ″、わ″だじがわ″るぅございました・・・。

 どうがも″う″ゆるじでぐだざい。」


「「「「・・・・・・。」」」」





勇者はヒーツとの再戦に見事、勝利したわ。

けれど、いくら不殺の剣で斬られても、肉体は一切傷付かないからと、ヒーツは諦めなかったの。


しかも何故か、勇者を殺した後、私達を犯す〜なんて言い出してさぁ。

ど〜して急にそんな事を言い出したのか、意味がわからなかったんだけど、それが勇者の怒りを買ったようでね。


「本当に反省した?」


「はい。

 もう二度と悪いことはしません!!

 ・・・辻斬りも強姦もやりません。」


不殺の剣でヒーツを滅多打ちにしたの。

私やお爺さんはおろか、基本的には勇者を怖がらない、聖女やクロが引くほどにね・・・。


ヒーツは不殺の剣を甘く見ていたようだけど。

もし木刀で殴られまくったら、痛みだけで心が折れちゃうだろうって、想像出来なかったのかしら?


「だからもう・・・許してください〜〜〜〜!!!!」


そして勇者に恐れを成したヒーツは泣きながら逃げて行ったわ。


「あ〜、すっきりした♪」


「テンイって、本気で怒ると怖いのね〜。」


「ご、ご主人様。

 すご〜い・・・。」


事情を知らない人が見れば、一目ぼれしそうな程、今の勇者は良い笑顔をしてるわ。

・・・一部始終を見ていた私達からすれば、ただただ引くだけだけど。


「・・・けど考えようによっては、容赦ない性格ってのも悪くないのかしら?

 私を狙う悪人が近づいてきても、躊躇う事なく心をへし折ってくれそうだからねぇ。

 ウフフ。」


「あっ、そっか〜。

 容赦ない方が、山賊のような悪者をいっぱい殴れるもんね〜。

 やったぁ♪」


「こらこら。聖女、クロ。

 あんまりドス黒い事ばかり考えちゃダメよ!!

 もう。」


聖女は過去、悪い権力者達に散々嫌な思いをさせられたみたいなの。

クロも山賊のせいで、家族を失い、奴隷として売られている。

だから悪人を痛い目に合わせたい、って考えたくなるのはわかるけど。


「やれやれ。

 まだまだ未熟よの、テンイよ。

 剣士たるもの、常に冷静でなければ、いつか痛い目を見るぞ。」


聖女やクロが黒い面を覗かせながら勇者を称賛する一方、お爺さんは彼の未熟さを諭す。


「・・・うっ!?

 けど、俺、仲間を犯す〜なんて言われたもので。

 ついカっとなってしまったんです。」


「悪に怒りを覚えるのは良いが、だからと言って心を乱してはならぬ。

 テンイよ。

 お主はもっと心を鍛えるのじゃ。」


「!!」


勇者?


「・・・ハハっ、そうですね。

 元の世界でもよく言われましたよ。」


「そう気落ちせずとも良い。

 テンイよ、お主の剣の腕は素晴らしい。

 もっと心を鍛えれば、何者にも負けぬ素晴らしい剣士になるじゃろう。」


「・・・・・・。」


それは同感ね。


「うん?

 この剣の破片は・・・。」


「あっ、忘れてた。

 王女。

 今まで使ってた鉄の剣、壊れちゃったし、代わりの剣、ちょうだい。」


「わかりました。

 今から予備の剣をお渡ししますね。」


モンスターと戦うための剣も必要だもの。

予備に用意していた鉄の剣をアイテムボックスから取り出して・・・。


「・・・これ、娘よ。

 そんな粗末な剣では、テンイの持つ力に耐えられぬじゃろて。

 もっと良い剣は持っておらぬのか?」


え〜っと。


「持ってないです。」


痛い所を突かれちゃったわ。

あんな安物の剣に勇者の命を預け続けるのは良くない。

けど無いものは無いからね〜・・・。


「確かにもうちょっと良い剣持たせた方が安全かもね〜。

 新しい町に着いたら、探しましょっか。」


「そうね。

 勇者様。

 と、言う訳なのでそれまではこの剣で辛抱・・・。」


「まあ、待て。

 この剣をやろう。

 ワイバーンへの切り札として持って来た家宝じゃが、結局使わんかったしの。」


そう言ってお爺さんは、自分の持っている剣を勇者に渡したの。

渡された剣の鞘を勇者が少し抜くと、眩いばかりの輝きが放たれたわ。


「これは?

 ・・・随分、綺麗な剣ですね。」


確かに綺麗ね・・・って!??


「嘘ぉ!??」


「ど、どうしたの〜?

 聖女様〜。」


「こ、これってミスリルソードじゃない!!」


「ええええっ!!!!????」


聖女の言う通り、ミスリルソードだわ。


「ミスリルソードって、な〜に?」


「貴重な金属で作られた、とっても強い剣の事よ!!

 こ、こんな高価な物を本当に良いのですか!?」


ミスリルソードとは、銀の輝きと鋼をしのぐ強さを持つミスリルで作られた剣の事よ。

その切れ味は鉄の剣とは比べ物にならないわ。


さすがに伝説の剣には遠く及ばないけど、市販品の中では攻撃力もお値段も最強クラスでしょうね。

・・・けどそんな貴重なものをどうして?


「なあに、テンイはこの村を救った恩人じゃ。

 これでも全然、報酬が足りぬくらいじゃ。

 それにの。」



「テンイのような才あるものが、わしの託した剣でどれほどの高みに登るか・・・。

 想像したら、ワクワクが止まらぬではないか。」


「男のロマンって奴かしらね?

 私にはよくわからないけど〜。」


「わしは今でも、剣士たるもの、人を斬る覚悟が必要じゃと思うとる。

 ・・・じゃがテンイのように、人を斬らないからこそ高みに登れる者もおるのじゃな。

 剣の道は一つではないと、この年になって学ばされたわい。」


思う所があるのか、勇者はお爺さんの話を真剣な表情で聞き続ける。


「テンイよ。

 お主のこれからの活躍、期待しとるぞ。」


「・・・・・・。

 はい、頑張ります。

 俺、もっと心を鍛えて、強い剣士になります!!」


「良かったね〜。

 ご主人様〜♪」


それにしても、ミスリルソードがもらえるなんて完全に予想外だわ。

これが災い転じて福をなすって事なのかしらね。


「ワイバーンが倒れたと知れば、村の者も戻ってこよう。

 ・・・ではさらばだ。

 若き剣士とその仲間達よ。」



********



「にしても不殺の剣だけじゃなくて、ミスリルソードまで手に入るなんて。

 ほ〜んと、超ラッキーだわ♪」


「そうだね。

 ・・・。」


傍迷惑な辻斬りも無事、追っ払えたし、色々あったけど、一見落着ね。


「・・・・・・。」


だけど勇者は何を悩んでいるのか、どこか上の空みたい。


「勇者様?

 どうしたのですか??」


「いや、ね。

 今回の一件は不殺の剣で無事、解決したけどさ。


 もし、不殺の剣じゃ太刀打ち出来ないような悪党が現れた時さ・・・。

 それでも俺は人を殺さない誓いを守り続けられるのかな、って。」


!!


「・・・それもそっか。

 不殺の剣一本で全て解決するほど、あなたの運命は甘くなさそうだしねぇ。」


勇者や聖女の指摘は正しいわ。

不殺の剣一つで、どんな悪党でも追い払えるとは限らない。

まだ勇者の抱える問題が全て、解決したわけじゃない。


・・・。


「勇者様。」


「なんだい、王女?」


山賊や盗賊、辻斬りのように罪のない人を平気で殺すような悪党がたくさんいる世界なら。

私のような甘い考え方は間違っているのかもしれない。

悪党くらい、容赦なく殺せるようになるのが正解かもしれない。


でもね。


彼がそれを望んでいないから。

私も・・・私達もそれを望んでないから。


だから。





「その時はまた一緒に考えましょう。

 人を殺さずとも運命を乗り越えるための方法を。

 あなたの心を守るため、私も全力で協力します。」





私は勇者が手を汚す事のないよう、最善を尽くそうと思うの。


「・・・。

 ああ!!

 頼りにしてるよ、王女!!」


「お任せ下さい!!」


それが私の・・・使命だから。


もし異世界転移(転生)してしまったら、悪人くらい平気で殺せるようになるべきなのでしょうか?

それともギリギリまで不殺さずを貫くべきなのでしょうか?


どんな世界に飛ばされたかにもよるでしょうが、筆者には難しすぎて正解がわからないですw

清く、賢い人なら万人が納得する答えを出せるのかな?

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読んで頂き、ありがとうございました。

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