第78話 ドジっ子編④ 尊敬する理由
Side 〜クロ〜
「・・・こ、来ないでぇ。」
「!!!!!!!!」
ドジっ子さんがトレントに襲われちゃった!?
ご主人様も王女様も聖女様もすぐにはフォロー出来ない。
このままだとドジっ子さん、殺されちゃう。
ダメ・・・。
「そんなの、ダメーーーーーーーー!!!!」
あたし、ドジっ子さん、助ける!!
「「「クロ!??」」」
「クロ・・・ちゃん?」
「!!!!????」
勢いでトレントに向かって飛び付いたけど、あたしの力じゃモンスターは倒せない。
でもいきなり飛び付かれてトレント、びっくりしてる。
今がチャンス!!
「逃げよう。
ドジっ子さん!!」
びっくりしてるトレントから飛び降りて、あたしは座り込んでいるドジっ子さんを持ち上げたの。
「・・・クロちゃん!?
そんなに小さな体で軽々と私を・・・。
なんてパワーなの?」
ドジっ子さんなんて、奴隷の頃に運び続けた岩よりもずっと軽いもん。
全然、平気だよ。
「!!!!!!!!」
けどトレント、怒ってあたし達の方に近づいて来る!!
急いで逃げないと、あたしもドジっ子さんも殺されちゃう・・・。
「アイス!!」
「!!!!????」
この氷魔法は・・・。
王女様だ~!!
「クロ、早くこっちへいらっしゃい!!」
「トレントめ。
クロ達を傷付けたら許さないぞ!!」
ご主人様も剣を構えて、あたし達をトレントから庇ってくれたの。
最後の狼さんを倒して、駆けつけてくれたんだね!!
「私とした事がなんてドジを・・・。」
「反省は後よ、聖女。
勇者に氷のパワーで援護を。」
「・・・そうね。
テンイ、今からあなたの剣に氷のパワーを授けるわ。
アイス・エンチャント!!」
!??
聖女様の魔法でご主人様の剣から寒気が・・・。
「うおっ!?
俺の剣がめっちゃ冷たくなった!??」
「植物系の魔物は大概、炎や氷に弱いからね。
その剣でトレントを突き刺せば、きっと倒せるはずよ。」
「うん、わかった。
食らえ、トレント!!」
聖女様の力を借りたご主人様は、氷のパワーを秘めた剣でトレントを突き刺したの。
するとトレントの体がどんどん凍っていったんだ。
「!!!!????」
そして氷漬けになったトレントから、魔物の気配が消えたの。
無事にトレント、倒せたんだね。
「ふぅ・・・。
大丈夫かい?」
「あたしはだいじょ~ぶだよ。
ありがとう、ご主人様~。」
「は、はい・・・。
私も平気ですぅ。
クロちゃんが助けてくれましたから。」
良かった~。
もうモンスターの気配は消えたし、これで大丈夫だよね。
「勇者様、皆。
またモンスターが襲ってくる前に早くこの森から抜け出しましょう。」
********
あれからモンスターに出会う事なく、森から出れたの。
もちろん全員、無事だよ。
けど、安全な場所まで帰って来た途端・・・。
「クロ!!
モンスターの前で危ない事しちゃダメだって、いつも言ってるでしょうが!!」
「ひゃい!?
・・・ごめんなさ~い。」
王女様が怒り出したの~。
しかも上手にハーレム要員、演じれなかった時の何倍も怒ってるの~・・・。
「でもあたし、ドジっ子さんが殺されるかもって不安になって。
気が付いたら、トレントに飛び付いてたの。」
「うっ!?
確かにクロが動いてなかったらあの子、トレントに殺されてたかもしれないわ。
・・・人助けを褒めるべきか、危険な真似した事を叱るべきか。」
王女様、悩んでる~。
出来れば叱らないで欲しいなぁ。
「・・・実際、かなり危なかったからねぇ。
私も焦ってドジっちゃったせいで、フォローが間に合いそうになかったし。
だから今回ばかりはクロの事、責められないわ。
彼女にミスをフォローしてもらったようなものだもの。」
「う、う~ん・・・。」
聖女様は少し反省してるみたい。
ど~してなんだろう?
「まあまあ、皆。
全員、無事だったんだから良いじゃない。」
「・・・それはそうですが。
けどクロが平気で危険な事をするようになっても困りますし・・・。」
「ご、ごべんなざい!!」
???
ドジっ子さん?
「クロちゃんや聖女様が悪いんじゃないです!!
私が、私がドジばかり踏んで迷惑を掛けるからいけないんですぅ。
えっぐ、ひっぐ・・・。」
「ま、まあ、戦闘の素人が魔物に襲われて取り乱すのはしょ~がないって。
・・・出来ればパニくらないで欲しかったけど。」
ドジっ子さん、本気で落ち込んでるの~?
「落ち込むなんて、らしくないよ~・・・。
元気出して~。
ドジっ子さん。」
「クロちゃん?」
「らしくないって、どういう意味だい?
クロ??」
え~っとね。
「王女様、言ってたの。
ドジっ子さんはいくら辛い事があっても、笑顔でいられる強い女の子だって。
あたし、ドジっ子さんのそういう所に憧れてるの~♪」
「・・・そう言えばそんな事、話してたかしら。
クロが妙にドジっ子に憧れてたのはそういう理由だったのね。」
「うんっ!!」
あたし、今でもさ。
たまにお父さんやお母さんが殺された事、奴隷にされて酷い目に合った事を思い出すの。
そして泣きそうになる事があるの・・・。
だからドジっ子さんみたいに、辛い目に合っても笑顔でいられる人達が羨ましいんだ♪
「違うの、違うの・・・クロちゃん。
私はそんな立派な女の子じゃないわ。
すぐに落ち込んで、泣いてばかりいる弱い子なの・・・。」
「そ~なの?」
このドジっ子さんは『天然』でプロじゃないからかなぁ?
でもさ。
「ドジっ子さんならなれるよ。
『天然』じゃなくて、プロのドジっ子さんになれるよ!!」
だってドジっ子さんにはてんせ~の才能があるんだもん。
「クロちゃんっ!!」
「いや、そこ感動する所なの?」
頑張ればいつか絶対、プロのドジっ子さんになれると思う。
あたし、信じてる。
「ありがとう、クロちゃん。
私、きっとプロのドジっ子になってみせる・・・。
人に迷惑掛けない、強くて賢い女の子になってみせるわ!!」
「ドジっ子さん!!」
やっぱりドジっ子さんは強くて一生懸命な、素敵な女の子なんだ~♪
「・・・それはもう、ドジっ子じゃなくて普通のしっかり者では?」
「こら、エミリー。
し~っ・・・。」
********
「皆様!!
魔物に襲われた所を助けて頂き、母の病気まで治療して頂いて・・・。
本当にありがとうございますぅ。」
「謝礼はもらってるから、別に構わないわよ。
それよりドジも良いけど、ほどほどにね。
もう絶対、危険な真似して迷惑掛けちゃダメよ。」
「はいっ!!
これからは皆に迷惑掛けないよう、頑張りますぅ。」
ドジっ子さんを家まで送って、お母さんの病気を治して・・・。
用が済んだあたし達はドジっ子さんの家から出発する所なの~。
「まあ、すぐに上手くはいかないだろうけどね。
それでも諦めずに頑張り続ければ、少しずつ強くなっていけるさ。」
「そうだよ、ドジっ子さん。
これからも元気でね。」
「うんっ。
クロちゃんや皆様も元気で。」
「さてと。
勇者様、皆。
冒険者ギルドが閉まっちゃう前に、早く薬草採取のクエスト完了を報告しに行きましょう。」
あたしもドジっ子さんに負けないよう、頑張らなくちゃ。
そして皆を助けられるような強い女の子になるんだ!!




