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第76話 ドジっ子編② 憧れのドジっ子さん

Side 〜クロ〜


「あった、あった。

 あれが依頼にあった薬草よ。」


「もう見つかったんだ。

 薬草採取のクエストって、思った以上に簡単なんだね。」


「油断しちゃいけませんよ、勇者様。

 モンスターがウロウロするような場所にしか生えてないからこそ、こういうクエストがあるのですから。」





あたし、クロ。

ご主人様・・・転移勇者様のハーレム要員なの〜。


今はね。

薬草採取のクエスト中なんだ〜。

薄暗い森の中にいるの〜。


聖女様が言うには薬草採取のクエストって、あんまり儲からないんだって。

けど王女様がこ〜いうクエストも経験しておいた方が良いって言ったから受注したの~。

それにご主人様も一回やってみたかったみたい。


「これくらいで良いかな?」


薬草を集めている金髪の格好良い顔のお兄ちゃんはテンイって言うんだ~。

あたしのご主人様なんだよ。


普段はおっちょこちょいで泣き虫だけど、ピンチになったらすっごく強くなって、どんなに恐ろしい相手にも勝っちゃうの~。

『チート能力』って言うんだって。


あたしがこ〜して楽しく過ごせるのも、ご主人様のおかげなんだ~。

だからあたし、ご主人様の事がだ〜いすき〜♪


「そうね。

 それくらいあれば十分じゃない?」


「クロ。

 念のため、モンスターが寄って来てないか、調べてくれる?」


「は~い。

 ん〜っとね~。」


あたしには『索敵』って特性があるんだって。

『索敵』があれば、人やモンスターの居場所がわかるんだ~。

王女様に教えてもらうまでは、そんな特性を持ってるなんて知らなかったけどね。


何もしなくても、近くにいるモンスターの気配ならすぐにわかるよ。

しんけ~を集中すれば、少しくらい離れた所にいても気配を・・・・・・あれ?


「あっちの方で誰かがゴブリンに囲まれてる~?」


誰か他にも薬草採取のクエスト、受けてたのかなぁ?

ギルドの人達はあたし達以外、誰も受注してないって言ってたけど。


「って、マズいじゃん!!

 それ。」


「あっ、勇者様!?」


ご主人様、あたしが指を向けた方に走り出しちゃった!?

早く追いかけないと。



********



「ふえぇ。

 誰か、助けて〜〜〜〜!!」


「「「グギャギャーーーー!!!!」」」


「バリア!!」


「「「グギャ!??」」」


・・・あ、危なかった〜。


あたしが指を向けた方に行ったら、たくさんのゴブリンが女の子に襲い掛かろうとしていたの。

聖女様が防御魔法を使わなかったらあの子、酷い目に合ってたかも・・・。


「サンダー!!」


「はぁああああああああ!!!!」


「「「グギャーーーー!??」」」


突然の『バリア』にびっくりしているゴブリンを、王女様とご主人様があっさりとやっつける。

・・・皆、凄いなぁ。

あたしも大きくなったら、あんな風に強くなれるかなぁ?


「君、大丈夫かい?」


「ふえぇ。」


!!??

『ふえぇ』って泣いた!?


「あ、ありが・・・きゃん!?」


それにコケた!?


「だ、大丈夫かい?」


「ふえぇ・・・。」


・・・間違いない!!


「ドジっ子さんだ~!!」



********



「こらっ!!

 クロ、失礼だよ!!」


「いいんです。

 私、昔からドジな奴だって、バカにされてたから・・・。

 ・・・なのにどうしてこの子はそんなにキラキラした目で見つめてくるの?」


だって、だって!!


「あたし、知ってるもん。

 ドジっ子さんって、とっても凄い女の子なんでしょ?

 頭が良くて、男の人から大人気で、それでね、それでね・・・。」


「ふえっ!?

 誰の事を言ってるんです~?

 私、そんな凄い子じゃないですぅ。」


あっ!?

これって『の〜あるタカは爪を隠す』ってやつだ~。

王女様に教えてもらった~。


ドジっ子さんって、やっぱり頭良いな~♪


「もう・・・。

 王女ったら。

 ま〜たクロにおかしな事を吹き込んで!!」


「えっ!?

 違う・・・違うの、クロ。

 その子はプロのドジっ子じゃなくて、天然よ!!」


「そういう問題じゃないでしょ!!

 大体、何だい?

 『プロのドジっ子』って!?」


天然〜?


「どういう意味なの〜?」


「その子は計算尽くでドジをアピールしている訳じゃないの。

 純粋にドジなだけなの・・・。

 演技が上手な『プロのドジっ子』とは別物よ!!」


「失礼すぎるでしょ!?

 いろんな意味で・・・。」


そうなの~?

けどなんで・・・。


「ど~してプロのドジっ子さんじゃないって、わかったの~?」


「そうね・・・。

 あなたはなんでこんな危険な森に一人でいるの?」


「ふぇっ!?

 あの、その、お母さんが酷い病気になっちゃって・・・。

 この森に良い薬草が生えてるって聞いたから。」


ドジっ子さんはお母さんの病気を治すためにこの森へ来たんだね。


「良い話だと思うけどなぁ。」


「・・・いやいや。

 ( ;∀;)イイハナシダナー。

 で、済ましちゃダメでしょ!?」


なんで~?


「いくらお母さんを助けたいからって、ゴブリンに勝てないような娘が魔物だらけの森に入っちゃダメよ!!

 ・・・けどまあドジっ子を装った腹黒女なら、こんなポカはしなさそ~ね。」


「ええ、その通りよ。

 プロのドジっ子は男の人に好かれるためだけにドジをアピールするの。

 人助けのためのドジなんて、踏むはずないわ!!」


そ~なんだ~。


「ってか、ドジもほどほどにしないとあの子、いずれ死ぬわよ。

 今回だってクロが気付かなかったら、ゴブリンに殺されてたでしょうし。」


「そうね。

 もっとよく考えるべきよ。


 本当にこの森の薬草でお母さんの病気を治せるか、とか。

 そもそも一人で魔物だらけの森を探索出来るのか、とか。

 勝手な真似をして周りの人達に迷惑を掛けないか、とか。」


「ふぇええええええええ!!!!

 ごめんなさい、ごめんなさ~い!!!!」


王女様も聖女様も手厳しい!?

・・・でも誰かを助けたいからって、無茶するのは良くないのかなぁ?

難しいなぁ。


「王女、エミリー!!

 ・・・確かに君達の言う通りだけどさ。

 もうちょっと気を遣ってあげようよ・・・。」


「「あっ!?」」


これがご主人様も苦手な『言葉のナイフ』ってやつか~。


「あ~、はいはい。

 泣かない、泣かない。


 とにかくこのままこの子を放っておくのもあれよね。

 一旦、村まで連れて帰りましょうか。」


「それもそうだね。

 この子の家族も心配してるだろうし・・・。」


「ふぇっ!?

 だけどお母さんの病気が・・・。」


あっ!?

そうだった。

ドジっ子さんのお母さん、病気なんだ。


けど病気なら・・・。


「ど~せこの森の薬草が役に立つかなんて、わからないでしょ?

 心配しなくても、私が回復魔法でお母さんの病気を治してあげるわ。

 ・・・もちろん有料だけど。」


「本当ですかぁ!?」


聖女様の回復魔法で治せるよね。

聖女様はどんな怪我や病気も治しちゃう、凄い人だもの。


「こらこら、聖女・・・。

 いくら病気を治しても、高い治療費で今後の生活を困らせちゃダメでしょ?」


「そんなに踏んだくらないから平気よ。

 私、金持ちへの治療費は高くして、貧乏人への治療費は安くするつもりだから。

 世の中、お金が無ければ救われないものだけど、少しくらいは慈悲があっても、ね。」


「貧乏だったら安くて、金持ちだったら高くなる治療費かぁ。

 なんだか税金みたいだね。」


よくわかんないけど、良かったね~。

ドジっ子さん♪


「あ、ありがとうございますぅ。」


「さ・・・いつまでもこんな森にいるのは危険だ。

 早く村へ戻ろう。」


こ~してあたし達はドジっ子さんと一緒に村へ戻る事になったの。


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