第69話 婚約破棄編⑬ 貴族Aのリベンジ
ミロは婚約破棄した人間を不幸にする『ハキ』の力の持ち主だった。
もしもそれが周りにバレてしまっては、彼女は誰からも拒絶されてしまう!!
そう危惧していた矢先・・・。
「お嬢様・・・。」
「サーラ・・・。」
なんとサーラが茂みに隠れていたのだ。
「サーラ!?
どうしてこんな所に・・・。
会場で人目も憚らず、青春の暴走に励んでたんじゃないの?」
「青春の暴走言うなぁ!!
・・・会場にいた人間共から言われたのだ。
ウジウジ悩んでないで、男なら真正面からぶつかって行け、とな。」
随分と男らしいアドバイスを受けたものねぇ。
「いつもならお子様以外、私を恐れ、近寄ろうとすらしないのだが・・・。
今日は誰一人とて、私を怖がろうとしないのだ。
どうしてだろうな。」
「いくら魔族でも、あんな醜態見せたら、怖がる気も失せるって。」
そんな事で魔族への偏見が解けるとは、ね。
怪我の功名かもしれないけど、なんとも情けない話だわ。
「って、そんな事はどうでも良いのよ!!
サーラ、あなた。
今の話、聞いてた・・・の?」
「いえいえ、聞いてないです!!
私は何も知りません!!
つい先ほど、ここへ来たばかりです!!」
「嘘よ!!
クロ。
あなたならいつからサーラがいたか、わかってるでしょ!?」
「・・・え~っと。
その、う~んっと。
あの~・・・。」
・・・サーラもクロも誤魔化すのが下手ねぇ。
最初から聞いてましたって、言ってるようなものじゃない。
「で、でも良かったじゃない。
バレたのがサーラで・・・。」
「そうよ、そうよ!!
サーラならバレた所で言いふらしたりなんかしないわよ♪」
「その通りです!!
お嬢様・・・。」
サーラったら、やっぱり全部聞いていたのね。
でもサーラが主人の秘密をバラすとは、とても思えないわ。
ならば・・・。
「全然良くないわよ!!
・・・最悪よ。」
ど、どうして!?
「なんでさ?
サーラが君の秘密をバラすとは思えないよ。」
「確かにサーラなら秘密をバラさないかもしれない。
・・・けれど、私は『ハキ』よ。
裏切り者を不幸にする魔女よ・・・。
いくらサーラでも怯え、忌み嫌うに決まってるわ。
もう今まで通りの関係には戻れない!!」
そ、それは・・・。
「でもそんなの、当たり前よね。
他人を不幸にする魔女になんて、誰だって関わりたくないもの。
サーラは私が信頼出来る、数少ない相手だったのに・・・!!
けど・・・もう彼は・・・。」
・・・ミロ。
「お嬢様!!
偶然とは言え、あなたの秘密を聞いてしまい、大変申し訳ありませんでした。
・・・しかしこれだけは言わせてください。
私はあなたの事を・・・。」
「きゃっ!?
・・・来る。
モンスターさん、来る!!」
!??
サーラがミロに向かって何か伝えようとした最中、クロが大声で警告を上げる。
「何っ!?
しかしこれまでこの屋敷にモンスターがやって来た事など・・・。」
「来るの。
よくわかんない場所からやって来るの!!」
なんだかんだでクロの索敵能力は決して軽視出来ないわ。
けれど『よくわかんない場所からやって来る』ってのは、どういう意味かしら?
「うわぁああああああああ!!!!????
なんだ、これはああああああああ!!!!????」
悲鳴!?
「クロ!!
モンスターがどこにいるか、教えて!!」
「う~んっと、ね。
あっち~。」
「!!!!」
クロが指差すと同時にミロが走り出す。
魔物がいるであろう方へ向かって。
「あっ!?
危険です!!
お嬢様・・・!!」
慌てて後を追いかけるサーラ。
「俺達も行こう!!」
********
「な、なんなの・・・。
この化物は。」
「大丈夫ですか!?
お嬢様!!」
クロが示した方へ向かうと、なんと石の体を持つ大きな人形が地面を唸らせていた。
「あれはストーンゴーレム。
石で出来た動く人形よ!!」
ストーンゴーレムは人の何倍もの大きさを誇るわ。
鈍重ではあるものの、その巨体から繰り出されるパワーは並の人間などあっさりと打ち砕く。
・・・だけど。
「でもストーンゴーレムは人工的に作られたモンスターなの。
奴を作った何者かが近くにいるはずよ!!」
「な、なんだって~!?
卑劣な悪党め・・・。
隠れてないで出て来い!!」
そんな風に言った所で、姿を現すとは・・・。
「な~にが悪党だ?
バカなガキめ・・・。
真の巨悪が誰か、わからないのか!?」
・・・現した!?
それにこの声は!!
「カジリ!?」
「貴様ぁ!!」
ストーンゴーレムの後ろから逆恨み男、カジリが現れた。
つまりあのストーンゴーレムは彼が?
・・・いや。
カジリにそんな芸当が出来るとは思えない。
出来るなら前出会った時にやっていたでしょうから。
「ミロ・・・。
俺はお前の息の根を止めるため、有り金ぜ~んぶ使って、最強の魔術師を雇ったのだ。
・・・全てはいたずらに不幸をまき散らす魔女を殺すため。」
「そ・・・そんな!!
私のせいでカジリは財産を失・・・。」
「れ~せいになりなさい、ミロ。
カジリに関しては完全に彼の自業自得だから。
一切、気にする必要はないわ。」
まあねぇ。
金貨1000枚も貰っておきながら、仕返しに逆恨みし、無駄遣いしただけだもの・・・。
彼が財産を失ったのも、呪いが原因と言うより、ただの自滅でしょう。
「黙れぃ!!
ストーンゴーレムよ・・・。
早くミロに正義の鉄槌を下すのだ!!」
「ガアアアアアアアア!!!!!!!!」
仮初の命を持つ石人形がミロの方へと歩みを進めた。
が。
「舐めるなぁああああああああ!!!!!!!!」
サーラがストーンゴーレムに向かって全力で拳をぶつけ、粉々に打ち砕く!!
「う、嘘だろ・・・?
ストーンゴーレムをあれほどあっさりと・・・!!」
「あんな大きなゴーレムを魔法もスキルも無しで・・・。
サーラ、凄いや。」
珍妙な所ばかり見ていたせいで失念していたけど、さすが魔族ね。
並の人間とは比較にならない力を秘めているわ。
「カジリよ。
性懲りもせずに何度も何度もお嬢様を狙いやがって・・・。
もう許さん・・・覚悟しろ!!」
「ひ、ひぃいいいい・・・。」
魔族から本気で睨まれ、カジリは立ち上がる事も出来ない。
彼の命運もここまでかしら?
「その程度で良い気になるなよ?
魔族風情が!!」
「誰だ!?」
ストーンゴーレムがいた所から少し後ろの物陰より、陰気な若者が姿を現した。
あの男がカジリの雇った最強の魔術師?
「小手調べとは言え、ストーンゴーレムを倒した事は褒めてやるよ。
けどな。
いくら魔族とは言え、こいつを倒せるかなぁ?」
そう言いながら、魔術師が新たなモンスターを作り出す。
「いでよ、我が最強の下僕よ。
サード・ゴールドゴーレム・サモン!!」




