第64話 婚約破棄編⑧ ミロの陰謀
貴族の少女、ミロが開催するダンスパーティに参加した転移勇者一行。
けれどなんやかんやあって、聖女は昔の男達と踊りに行ってしまったの。
「うふふ・・・。
まずはこれで一人。
あとは、と。」
ミ、ミロ!?
あなた、なんだか怖いんですけど。
まあ、聖女も踊りに行っただけだし、危険はない・・・はずよ。
「ご主人様~。
あたしと一緒に踊ろ~♪」
「・・・あっ、クロ?
う~ん。踊るのはい~けど、身長差があるからなぁ。
どう踊ればい~かな?」
勇者ったら、聖女を連れ去られた(?)ショックで呆然としてたけど、クロの誘いで自分を取り戻したようね。
身長差があるからどう踊ろうか、悩んでるみたいだけど、一緒に踊る事自体は乗り気みたい。
「さすがにクロ相手に嫉妬するのは大人気ないわねぇ。
けれど、邪魔なのには変わりないし・・・。
さて、どうしましょう?」
あの~・・・。
ミロは一体、何を企んでるのかしら?
彼女はしばし、周りを見回した後、身なりの良い服を来たお子様軍団に目を付けた。
「クロ。
あなたとテンイ様じゃ背丈が違いすぎるじゃない?
踊りたいなら、あの子達の方が良いわよ。」
そしてクロにお子様同士で踊るよう、促す。
「?~。
あの子達~?」
クロがお子様軍団の方を見ると、男の子は恥ずかしそうに目を逸らし、女の子は興味深そうに見つめ返す。
「・・・でも、ミロ。
その、クロは貴族じゃないのよ。
下手したら、いじめられるかも・・・。」
「クロって、いじめられるようなか弱い子かしら?
悪いけど、全然そんな風に見えないわよ。」
言われてみると、そ~かも。
奴隷生活にさえ耐えられるような子が、お子様のいじめ程度に屈するとは思えない。
「それにそんな心配は不要よ。
あの子達は身分や種族の差で他人をいじめるような愚か者じゃないから。
ほら、紹介してあげるから付いて来なさい。」
「は~い。」
私達はミロに案内されるがまま、お子様軍団の前まで歩いて行く。
「あっ、ミロ様。」
「ミロ様だ~。」
すると、ミロの前に子供達が集まって来た。
「お願いがあるの。
彼女があなた達と一緒に踊りたいみたいでね。
仲間に入れてあげて。」
「「「わかった~!!」」」
「ミ、ミロ様の頼みならしょ~がね~なぁ。」
子供達の反応は概ね、好意的みたい。
少し心配だったけど、これなら大丈夫そうね。
「そだね。
同い年くらいの子との交流も大事だよね。
ほら、クロ。行っておいで。」
「は~い。」
「・・・どうやら、テンイ様はロリコンではなさそうね。
良かった♪」
ミロは一体、何を心配しているのかしら?
それを問い質す前に一人の女の子がもじもじしながらミロに問い掛ける。
「ミロ様。
あの、その・・・サーラは一緒じゃないの?」
えっ?
あの子達って、サーラの知り合い??
「・・・ちょっと待ってね。
ほら、サーラったら。
隠れてないで、出てらっしゃい。」
「お嬢様・・・。」
ミロの呼びかけにサーラが音もなく姿を現した。
天井に隠れていたのを知ってた私でさえ、びっくりしたわ。
「わ~♪
サーラだ~。」
「サーラ~♪」
「おいっ・・・お前達。
止めろ!!
翼を引っ張るな。」
やたらと子供に人気じゃない。
サーラったら。
「サーラ。
しばらくの間、この子達の遊び相手になってちょうだい。」
「お言葉ですが、サーラ様。
私は子供は不得手なのですが・・・。」
「あら?
全然、そんな風に見えないんだけど。」
まあ、持て余してる感じはするわね。
・・・そもそもの話、魔族に全く怯まないお子様軍団が大物すぎるのだけど。
「ま、とにかくよろしくね。
サーラ。」
「ちょっと、お嬢様!?
・・・わっ、こら!!
大人しくしろ・・・。」
微笑ましいのだか、同情すべきなんだか・・・。
********
「よしよし・・・。
これで残るは一人。」
「あのさ、ミロ。
さっきから一体、何を企んでるのかしら?」
「た、企んでるなんてごごご誤解よ!!
別になんでもないって。」
クロとサーラをお子様軍団へ預けた後。
私はなんだか心細そうにしている勇者を尻目に、ミロの不審な態度を問い詰めていた。
「・・・そうだ。
デルマ、せっかくのダンスパーティなのよ。
あなたも踊ってくればどうなの?」
「いやいや。
私と踊ってくれる人なんていないって。」
聖女やクロと違って、別に私は美少女でも何でもないもの。
知り合いだって見当たらない。
元王女と言っても、全然顔は広くないからね。
「あら?
そんな事はないわよ。
周りをよ~く御覧なさい。」
「周りって・・・。
えっ?」
「「「・・・・・・。」」」
言われるがまま周りを見渡すと、どうしてか男の人達がそわそわとした様子で私を見つめている。
ど・・・どうして?
「ちょっと、あなた達。」
「ひゃっ!?
ミロ様・・・。」
「・・・ええっと。
あの、その・・・。」
ん?
変によそよそしいわね。
子供達が案外ミロに友好的だったのと対照的だわ。
恐れてると言うか、警戒してると言うか・・・。
「・・・・・・。
この子はデルマって言うんだけど、かなり引っ込み思案でね。
もし良ければ、踊ってあげてくれない?」
いやいや。
そんな頼み方をした所で、相手になんか・・・。
「そういう事でしたら、僕と一緒に踊りませんか?」
「いやいや、私が。」
「「「俺が、俺が!!」」」
「ええええっ!??」
想像以上に積極的だったわ!!
そんなに彼ら、ダンスが大好きなのかしら・・・。
「・・・お、王女?」
「あの、お誘いは嬉しいのですが、連れを一人にするのが心配で・・・。」
相手が知らない男の人とは言え、一緒に踊る程度なら別に構わないわ。
けど勇者を一人、置いてけぼりにするのは不安だし、可哀想よ。
「あらぁ、テンイ様が心配?
だいじょ~ぶよ♪」
「えっ?」
なんで?
「あ、あの・・・テンイさんとおっしゃるのですか?
その。」
「私と一緒に踊・・・。」
「わ・た・しがテンイ様と一緒に踊りますもの!!
一人になんてさせませんわ♪」
周りの女の子の発言を遮るかのように、ミロが勇者のダンス相手として名乗り出た。
「あらぁ。
あなた達、何か言った~?」
「・・・い、いえ。
なんでもありません・・・。」
「い、行きましょう。」
ミロの迫力に押されてか、勇者目当ての女の子達が蜘蛛の子を散らすように去って行く。
「デルマも構わないわよね?」
「ま、まあ、勇者様が構わないのであれば・・・。」
「なら、決まりね♪」
「あ、あの・・・ねえ?
待って、待ってよ、ミロ!!」
混乱しながらも、ミロの誘いを断り切れず、勇者は連れて行かれてしまう。
ほ、本当に止めなくて良かったのかしら?
「デルマさん、でしたよね?
まるで本物の王女様のようにお美しい・・・。
ささっ、連れの男性はミロ様にお任せし、踊りを楽しみましょう。」
・・・一応、本物の王女様なんだけど。
それにしても私を美しいだなんて、随分紳士的な人ねぇ。
「つ、次は僕が!!」
「いやいや、俺だ。」
「お・・・お手柔らかにお願いします・・・。」
けど彼ら、悪意は無さそうな代わりに熱意がとんでもないわ。
大丈夫かしら・・・・・・・・・・・・私。




