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第63話 婚約破棄編⑦ ダンスパーティ

「パーティはパーティでも、ダンスパーティだったのね。」


「ダンスパーティなんて、随分久しぶりだわ。

 上手くやれるかしら?」





謎の少女、ミロを助けたお礼として、彼女の家で開催されるダンスパーティに招待された転移勇者一行。

でも元王女ながら、身分がかなり低い私は姉上達と違い、そういうパーティに参加した事がほとんど無いの。


正直、いくら命の恩人とは言え、旅人が貴族が開催するダンスパーティに参加出来るとは到底思えない。

・・・そんな私の考えとは裏腹に彼女のご両親はダンスパーティへの参加を二つ返事で了承したわ。

どうやら娘に友達が出来た事が相当嬉しかったようね。


貴族の娘が素性の知れない旅人と友達になるのって、喜ばしいのかしら?

と、疑問だったんだけどね。

どうもある時を境にミロから人がどんどん離れてってるようで・・・。


・・・もしかしたら魔族であるサーラを従者にしたのが原因かも。

って思ったんだけど、それも違うみたい。

サーラではなく、ミロ自身がかなり周りから怖がられてるようなの。


一体、彼女は何者なんだろう?


「皆、あたし達の方、見てるね~。」


そんな事を考えていると、クロが周りをキョロキョロと見回しながら、私に向かって呟いた。


「そうね。

 素性の知れない人間が貴族のパーティに参加しているのだもの。

 気になるのでしょう。」


一応、私は元王女だし、勇者や聖女に至っては並の貴族以上に凄い人物よ。

とは言え、客観的に見れば単なる旅人にしか見えないもの。


「あんたやテンイが美形だから、気になってんじゃない?」


「確かに勇者は美形だけど、私は違うでしょ。

 むしろ聖女、あなたが美しすぎるせいじゃない?」


「・・・普段は嘘臭いヨイショばっかしてるのにさ。

 なんでさりげなく褒めるのは上手いの?」


謎に顔を赤らめている勇者はともかく、私は美形でも何でもないはず。

昔から姉上達に『身分の低い醜女』って言われてたしね。


ちなみに姉上達は聖女には敵わないものの、素顔そのものは結構美しいわ。

でも化粧が濃すぎる上、無暗に装飾品を付けすぎているせいで、微妙なルックスなのよ。

もったいない。


「謙遜なんてせずに良いのよ。

 デルマもエミリーも凄く美しいのですから♪

 ・・・だからこそ、性質が悪いんだけど。」


「ん″?」


「い・・・いえいえ。

 なんでもありません。

 おほほほ・・・。」


・・・なんか私も聖女も、ミロから妙に警戒されてるよ~な。


「あれ~?

 サーラさん、なんで天井に隠れてるの~??」


「おい、黙ってろ・・・!!」


天井・・・?

って、あ。

ほんとだ。


「サーラはあまり人前には出たがらないの。

 魔族である自分が人間から受け入れられるはずがない!!

 って思ってるようで。


 差別するような輩に遠慮しても仕方ないのにね。」


少し寂しそうな様子でミロは語る。

けれど現実問題、差別を無くすのは困難だし、仕方ないのかもしれない。

あるいは自分が傍にいたら、ミロの評判が落ちる・・・な~んて考えてるのかも。


「まあ、その辺は私達が口出すような事じゃないでしょ。

 さて、テンイ。

 さっそく私と一緒に踊りましょ♪」


「いきなり!?

 俺、ちゃんと踊れるかなぁ・・・。」


「しまった!!

 エミリーに先越される!?」


私もちゃんと踊れるかしら?

それ以前に私達のような胡散臭い旅人と誰が踊ってくれるのか怪しいけど。





「「姉御!!」」





誰・・・?

あの精悍な顔付きをした男達は!?


「あら、ま~!!

 シザーとラティじゃない。

 久しぶりねぇ。」


「「お久しぶりです!!」」


「・・・けどその姉御ってのは止めてくれる?

 聖女の私に似合わないもの。」


なんだか随分親し気に話してるじゃない。

もしかして・・・。


「エミリー。

 この人達と知り合いかい?」


「ええ、そうよ。

 とある戦争に無理矢理駆り出された時、同じ部隊だったの。」


・・・世間話のノリでそんなハードな過去、暴露しなくても。


「はいっ!!

 姉御の防御魔法や回復魔法のおかげで、どうにか生き残れました。」


「聖女という身分でありながら、勇ましい態度で仲間を守ろうとするお姿・・・。

 姉御の凛々しい振る舞いには、今でも胸が震えます!!」


聖女。

あなた、やっぱり・・・。


「私達と出会う前からそういう感じだったのね。

 実にあなたらしいわ。」


「しょ~がないわよ。

 戦争で女の子らしく振舞う余裕なんて、無いんだもの。」


もし彼女が勇者だったら、どれほど素晴らしい英雄になってた事やら。


「ところであの、そちらの男性の方は?」


「ああ。

 彼は異世界からやってきた勇者テンイ。

 私の伴侶となるお方よ。」


「「「伴侶!??」」」


シザー・ラティ・(と密かに)ミロが、聖女の爆弾発言に悲鳴を上げる。


「ちょちょちょ、エミリー!?

 俺達、まだ夫婦でもなんでもないでしょ!!

 それどころか恋人ですらないのに・・・。」


「ど~せ、時間の問題なんだからさぁ。

 今から伴侶宣言したって、許されるってば。

 ね、テ・ン・イ♪」


聖女に抱き着かれ、顔を赤らめながらも突き放す事も出来ず、勇者はオロオロするばかり。

・・・本当に時間の問題かもしれないわ。


「ちょっと、デルマ。

 早く止めないとテンイ様がエミリーのものになっちゃうわよ!!

 本当に良いの!?」


「えっ・・・と。

 別に構わないけど。

 多分、聖女なら勇者様と上手くやっていけるでしょうし。」


「あなた、本当にテンイ様の女なの!?」


私と勇者がどういう関係なのかは、自分でもよくわからないのよね。


ちなみに聖女は純粋に勇者を慕っている訳ではなく、彼女なりの打算があって伴侶になろうとしてるだけよ。

まあそれでも、今までの様子を見る限り、勇者とは上手くやっていけそうだけど。


「あ、姉御・・・。」


「・・・お、俺は、その。」


「・・・・・・・・・・・・。

 悪いわね。

 テンイくらい、凄い力を秘めた男の子じゃないと、私の隣には・・・さ。」


少し申し訳なさそうな表情で、聖女はシザー達の言葉を打ち切った。


聖女が勇者に拘るのは、欲望のみが動機とも言い切れない。

詳しくは聞いてないのだけど、どうも聖女は特別な人間故に相当辛い立場に立たされているようでね。

普通の男性では、彼女の過酷な運命に耐えられないみたいなの。


「そ・・・そうですよね。

 俺達なんかが姉御の傍にいても足手纏い、ですよね。」


「・・・・・・。」


「でも、でもせめて・・・。

 俺達と一回だけ。

 一回だけで良いので、踊ってくれませんか!?」


「「えええええええ!!!!????」」


あ、あらら・・・。

シザー達ったら、なんて大胆なのかしら。


「ちょっと、君達!?」


「テンイさん、でしたよね。

 あなた、まだ姉御と彼女ですらないんですよね?

 だったら一回くらい、一緒に踊っても構わないですよね!?」


「・・・あの、その。」


「頼む!!

 一回でも、一回でも良いから、姉御と踊れれば・・・。

 俺達、気持ちの整理を付けられるから!!」


勇者としては、聖女が他の男と踊る事に抵抗があるようね。

けどシザー達の必死さに押されて、Noと断言も出来ないみたい。





「あら、良いじゃない。

 テンイ様。

 エミリー・・・せっかくの懐かしい再開なんだし、一緒に踊ってくれば?」





ミロ?

なんだか笑顔が妙に黒いわよ!?


「何もシザー達が嫌で触れられたくもない。

 ・・・って、訳じゃないんでしょ?」


「ま、まあ、別にそ~いう訳じゃないけど。」


「なら、構わないじゃない。」


さすがの図太い聖女も反論出来ず、戸惑うばかり・・・。


「決まりですね!!

 姉御。」


「早速、俺達と一緒に踊りましょう!!」


「あっ!?

 ちょっとあんた達・・・。」


聖女が勇者の方を見つめながら、シザーとラディに引っ張られていく。

勇者も止めたいけれど、止めてい~ものなのか決断出来ないようで、左手を伸ばしながらぼ~ぜんと立ち尽くしていた。





「うふふ・・・。

 まずはこれで一人。

 あとは、と。」


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